魔族の仲間
本日2回目の更新です。
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──魔族の仲間
「そういえば、話を聞いたんですけど久隆様の捜索班に私たちから魔法使いと騎士を連れて行くんですよね?」
「ああ。アガレスにそう頼んでいる。優秀な魔族を頼むと」
「それ、よかったらあたしを選んでくれませんか? お役に立ちますよ!」
「お前──君がか?」
「お前で結構ですよ。あたし、家柄はそれほどでもないですけれど、魔法には自信がありますよ。魔法使いを選ぶとすればあたしを選んでください」
「実戦経験は?」
「9回ほど。人間との戦いが3回、ダンジョンでの戦いが6回。合計9回。その他にも山賊なんかを相手にした軽い戦いを何度かやっていますけれど。実戦経験はある方ですよ」
「ふむ。悪くないな。選ぶのはアガレスだから俺はどうこう言える立場ではないから、断言はできないが。アガレスには伝えておこう。選んでくれるかもしれない」
「ありがとうございます! あたしもフルフルみたいに役に立ちたいですからね」
「ああ。フルフルは頼もしい仲間だ」
久隆がそう告げるのにフルフルは顔を真っ赤にして俯いていた。
「フルフルはやっぱり優秀だね。後は自信を持つだけだよ。あたしはフルフルならべリア様の跡を継げるって信じているから」
「そ、そ、そんなことはないですよ……。わ、私なんてへっぽこですし……。かたつむりの観光客に毛が生えたようなものですし……」
「だから、自信持ちなって。きっとフルフルならやってくれるって信じてるから」
「過度の期待はやめてくださいよ……」
フルフルはプイッとそっぽを向いた。
「この子、臆病だし、あまりに悲観的なところがありますけど、優秀な付呪師ですから。活用してあげてくださいね、久隆様」
「もちろんだ。今は猫の手でも借りたい」
「猫どころかトラですよ、トラ」
マルコシアはそう告げてふふんと笑った。
「それはそうと久隆様にお聞きしたいんですけど……」
「なんだ?」
「地上には清潔なお風呂があるって本当ですか……?」
「風呂? 風呂ならあるぞ。レヴィアも入ってるし、フルフルも入ってる」
「あ、あたしも地上に出る機会があったらお風呂入れます……?」
「別に構わないが……」
ああ。そうかと久隆は思う。
マルコシアは女性だ。清潔なことや体臭には特に気を使う。それに女性でなくとも日本人ならば入浴は欠かせない。避難所でも陸軍は仮設風呂を作るし、海軍は艦艇の風呂場を避難民に解放する。
「今からでも仲間に加わるか? 次に潜るときには1階層から9階層の魔物を掃討しながら下ることになる。戦力は多ければありがたい。地上には傭兵とかそういうのはいるにはいるが、雇えないからな」
「いいんですかっ!」
「アガレスが許可してくれれば。お前の人事権を握っているのはアガレスだ。俺は部外者に過ぎない。アガレスが君が上階に上がることを許可するならば、こちらとしても受け入れられる。少し聞いてみよう」
「お願いします! お風呂、お風呂……!」
久隆は興奮するマルコシアをおいて、アガレスの下に戻る。
「どうされた、久隆殿。流石にまだ人選はできていないぞ。候補者は上げているが」
「マルコシアという魔法使いの評価はどうだ?」
「うむ。それは候補者に入っている。極めて優秀。実戦経験もある。だが、家柄などがよくなく、中級魔法使いで昇進が止まっている。だが、今回のことで久隆殿には家柄だけが昇進の基準ではないと教えられた。彼女を育ててもらう意味でも候補者に入っている」
「よければ、彼女を早速加えてくれないか? フルフルの友人であるし、俺としても信頼のおける魔族だと思っている。候補者に上げるということは能力はそちらも認めているのだろう?」
「久隆殿がそう言うのならば私としては構わない。魔法使いというのは本来べリアの管轄なので私がどうこう言える立場でもないしな。彼女がフルフルの友人だというならば、丁度いいだろう。連携が見込める」
「ありがとう。では、そろそろ1階層から9階層の魔物が復活する。そこで彼女の実力を確かめ、そちらが望むのであり、俺ができる範囲であれば育てるつもりだ」
「助かる。では、残りの2名だが……」
「新米将校とベテランのふたりを頼む。新米はある意味では偏見がない分、育てれば俺の戦闘に適応してくれる。ベテランも俺が間違いそうになった時に正してくれるので役に立つ。よろしく頼む」
「任された。最良の人材を選ぼう」
後はアガレスに任せておこう。新米は2名しかいないし、ベテランはどの程度ベテランなのか分からない。だから、残りふたりの人選は慎重に行ってもらいたい。9回程度の実戦経験のあるマルコシアは確かに信頼できるが、彼女にはフルフルの援護を任せるつもりだった。フルフルの性格からしてそういう方がいいだろうと思ったのだ。
フルフルには悪いが久隆にとって彼女は社交的には見えない。友達も少ないという。下手な人間を割り当てて、戦闘に支障が生じるのは避けたい。そういう点ではマルコシアの申し出はありがたいところだった。
「承認された。一緒に来てくれ、マルコシア」
「わあい! ありがとうございます、久隆様!」
「その代わりフルフルを頼む。これから人数が増えるからな」
「あー。10名以上となるとフルフルにはきついですね」
「6名だ。それ以上は指揮に影響が出る」
「そういうものですか。まあ、フルフルのことはお任せを。友達ですから!」
「ああ。頼むぞ」
マルコシアはそう告げると、フルフルが待っている階段の方に走っていった。
「フルフル。これからは一緒に行動できるよ!」
「ほ、本当ですか!? よかったです……。捜索班の人数を増やすと聞いて、マッチョな騎士たちが来たらどうしようかと思っていました……」
ほっと一安心と息をつくフルフル。やはり久隆の予感は当たっていたらしい。
「それじゃあ、地上に!」
「ええ。地上に!」
フルフルとマルコシアがトトトと階段を上っていく。
「あのフルフルが随分とはしゃいでるなあ」
「仲良しなのはいいことなの。さ、レヴィアたちも地上に戻るの」
「そうしよう」
それから珍しくハイテンションになったフルフルを見ながら、レヴィアたちは地上に戻った。ダンジョンは全て階段で上り下りで、エレベーターなどないので時間はかかるが、夕食の時間帯には地上に戻ることとなった。
「さて、今日の晩飯は作るのが面倒だ。食いに行くか」
「ラーメン?」
「いつもラーメンは栄養が偏る。ファミレスで好きなものを選べ。この前のことで、人間にはかなりの正常性バイアスがかかると分かったから安心だ」
久隆は世界で最初に宇宙人が地球に来ても日本人は仕事に出かけるんだろうなと思いつつ、ダンジョンの出口で待っているフルフルとマルコシアの下に向かった。
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本日の更新はこれで終了です。
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