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パイモン砦

本日2回目の更新です。

……………………


 ──パイモン砦



「こちらです、陛下」


「うん。ついていくの」


 あれからパトロール部隊を伴って拠点に向かうことになった。


 パトロール部隊からは依然として猜疑の視線を向けられている久隆だが気にしないようにしていた。合同作戦で過去に何かあった国と一緒に作戦をする際には、こういう視線を向けられることは珍しくなかった。


 今はお互いに味方と認識し合っている。それで十分だ。


「フルフル。どういうことだよ」


「あ、あの、後でアガレス閣下も交えてご説明しますので……」


 フルフルもパトロール部隊の兵士たちに睨まれていた。


 魔族と人間の関係が良好ではないということは久隆も分かっている。それが異世界のありようだと。だから、本来ならば自分たちの世界の出口に出て、魔族の援軍を連れてくるはずが、人間を連れてきたとなれば裏切者扱いされてもおかしくない。


 ただ、レヴィアがフルフルを庇ったのでパトロール部隊の兵士たちは口で責めるにとどまっている。レヴィアが制止しなければ、あのままフルフルが拷問される可能性すらあったし、裏切者として斬り捨てられる可能性もあった。


「私は先に行ってアガレス閣下に状況を報告してきます!」


「任せるの」


 パトロール部隊の兵士のうち、女性兵士が駆けていった。他の隊員より軽装で、防御力よりも持続性と機動力を重視しているような装備だった。


「あれも近衛騎士団の兵士なのか?」


「貴様、何をレヴィア陛下に馴れ馴れしく──」


 パトロール部隊の兵士が声を上げるが、レヴィアに鎧を引っ張られる。


「久隆はレヴィアとフルフルの命の恩人なの。そして、レヴィアたちを助けるためだけにここまで来てくれたの。失礼なことを言ってはダメなの」


「し、しかし……」


「いいの、いいの。久隆はレヴィアの臣民ではないのだから」


 そう告げられてパトロール部隊の兵士は久隆を少し睨むと黙った。


「ここにいるのは近衛騎士団の騎士か宮廷魔術師団の魔法使いなの。あの時、あの場にいた魔族だけが巻き込まれているならば、他にレヴィアたちヴェンディダードの魔族たちは巻き込まれていないからそう言えるの」


「そうか。騎士団っていうと装備は統一してそうなものなんだが」


「近衛騎士団も重騎士、軽騎士と2種類あるの。あの子は軽騎士なのね。そして、近衛騎士団でも閲兵のとき以外は、装備は実戦に沿ったものを各々自分で準備することがあるの。装備品が自由なのも近衛騎士団の特権なの」


「なるほど。特殊作戦部隊のようなものか」


 特殊作戦部隊も一定の装備の自由が許されていた。


 主力になる自動小銃は基本的に統一されていたが、それにつけるアクセサリーは自由だった。軍から支給される特殊作戦用装備の他に私物として購入した光学照準器などを装備するケースがあった。


 またサイドアームに関しては各々に大きな自由が許されていた。海軍の正式拳銃は陸軍と同じVP9自動拳銃だったが、HK45CT自動拳銃やシグP320自動拳銃を装備している隊員などもいた。サイドアームは頻繁に使うものではなく、兵站に負荷もかからないので、そのような自由が許されていた。


 その他タクティカルベストなどについても各々が好き勝手にやっていた。


 戦場で生き残るために最善を尽くす。特殊作戦部隊は駒としての歩兵というわけではない。敵地深くに侵入させ、少人数でミッションを達成する部隊だ。だからこそ、彼らには生き残るために自由が許されたのだ。


 そういう点では近衛騎士団も同じなのだろうと久隆は思った。


「それではこちらです、陛下。パイモン砦にようこそいらっしゃいました!」


 まさに陣地というよりも砦が築かれていた。


 金属の板が四方を固め、それが連結させてある。その間からは弓矢を持った近衛騎士と杖を持った魔法使い。それだけで守りは完璧なように思われたが、金属の分厚い板にはへこんだ様子がある。


 そして、その陣地の中には負傷者が多数。魔法使いと思われるものが必死になって治療しているのが見えていた。だが、負傷者の数が多い。フルフルは15名生き残りが集まっていると言っていたが、15名中6名が負傷者だ。


「フルフル。戻ったようだな!」


 その陣地の中で一際目を引くのは身長2メートルは軽くある魔族だった。ヘラジカのような大きな角を有しており、腰には短剣、背中にはハルバードを装備している。纏っている鎧も一見して立派なものだと分かる作りで、色も白に金縁と豪華だった。


 久隆は説明されるまでもなく、彼こそが近衛騎士団長アガレスだと分かった。


「そして、レヴィア陛下。再びお会いできて嬉しく思います。陛下がいなくなってからというもの我々は絶望的な状況で、陛下を救出することもできず、このダンジョンの中でただただ忸怩たる思いを……」


 アガレスが男泣きに泣く。


「大丈夫なの。私はみんなみたいに苦労してないの。むしろ、みんなに申し訳ないぐらいの楽な暮らしをしていたの。温かいご飯を食べて、柔らかい寝床で寝る。ここにいるみんなはもっと辛い生活をしていたのでしょう? 申し訳ないの……」


「いえ! 陛下が安全に暮らせていたと聞いて、安堵しております! 陛下までもが我々のような暮らしをしていたと聞いておりましたら、このアガレス、陛下に対して義務が果たせなかったと腹を切ってお詫びするつもりでしたので」


 アガレスはそう言い切って久隆の方を向いた。


「ところで陛下。あの人間はパトロール部隊の報告によると凄まじい戦闘力を有するものだそうですな。ジャイアントオーガを赤子の手を捻るように倒してしまったと。あのものはなにものなのですか? いくら人間が強くともそれほどまでの戦闘力があるとは……」


「久隆はとっても強いの! あれでまだレベル4だけどもうステータス的にはレベル20のような限界突破した魔族並みにあるの! もっとも魔力はゼロなの」


「そうなのですか。確認しても?」


「構わないの」


 アガレスが親指と人差し指で円を作って久隆の方を向く。


「こ、これは! なんという高いステータス! しかし、本当に魔力はゼロですな」


「魔力はゼロなの。久隆の世界には魔法がないそうなの」


「……? それはどういう……?」


 理解できない話が出てきたのにアガレスがフルフルの方に視線を向ける。


「は、はい。このダンジョンは現在、異世界に繋がっております。ダンジョンコアの暴走によるもののためと思われます。ダンジョンの出口が繋がっている先はヴェンディダードではないのです。我々はヴェンディダードとは異なる世界にいるのです」


「なんということだ……。それでは救援も……」


「はい……。絶望的であります……」


 アガレスが額を押さえるのにフルフルが俯いた。


「援軍が、こない……?」


「私たちはここに取り残されてしまったの……?」


 同時に生き残りの騎士と魔法使いたちにも衝撃が走る。


「大丈夫なの! レヴィアたちには久隆がいるの!」


 そんな中、レヴィアがそう宣言したのだった。


……………………

本日の更新はこれで終了です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 絶望は死に至る病だからね、希望を潰えさせないように頑張るレヴィアちゃんは良く王様やってるよ。
[気になる点] >記述していなかったが先ほどの ~ これって最後は久隆の書いた自叙伝かなにかを読んでいて完ってことなのかなと思ってみたり
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