パトロール部隊
本日1回目の更新です。
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──パトロール部隊
15階層に降りてすぐに久隆が索敵を始める。
「ジャイアントオーガ2体。オーガ2体。オーク4体。それから不明な足音が多数」
「そ、それですよ。きっと味方です。パトロールの部隊がいるかもしれません。け、けど、用心しないと私たちも魔物と間違えられて……」
「細心の注意を払おう。ここまで来て同士討ちは笑えない。まずは陣地に向かうぞ。道案内を頼む、フルフル」
「わ、分かりました」
フルフルの誘導で久隆たちは15階層を進んでいく。久隆は不明な足音に十分に注意しつつ、他の魔物の足音にも注意を払っていた。
不明な足音は近くで4名分する。フルフルの言っていたパトロールだと久隆は予想をつけた。その近くに気づいていないのか魔物の足音がする。ジャイアントオーガとオーガだ。衝突するのはダンジョンの構造が久隆の予想通りなら時間の問題だった。
そして、金属音が激しく響き始めた。
炎の燃え上がる音と金属音がダンジョン内に響き渡る。それを聞きつけてオークたちが接近し始めていた。不味い状況だ。
「フルフル、この先で間違いないか?」
「は、はい。け、けど、戦闘が……」
「加勢するしかないだろう」
久隆は斧を握りしめた。
「フルフル。付呪を頼む。ここにいる魔法使いの魔法で巻き込まれそうなのは?」
「ええっと。ガミジン候の火炎魔法は周囲をかなり広範囲で焼きます」
「分かった。気を付ける。フルフルは付呪をかけたら、こちらが援護しに向かうことを向こうに知らせてくれ」
「わ、分かりました……。け、けど、戦闘中ですから危ないかと思いますよ……」
「放っておいて死なれても寝覚めが悪い」
久隆は戦闘が行われているだろう方向に進み、廊下の曲がり角から様子を窺う。
「よりによって開けた場所で……」
4名の魔族のパトロールは広いフロアでジャイアントオーガ2体と鎧オーガ2体を相手にしていた。それに加えて、オークが4体この戦場に近づいてきている。このままでは包囲されてしまい、あの4名は大損害を出す──いや、死ぬだろう。
「フルフル。付呪と合図を。レヴィアは巻き添えを出すかもしれないから今回は下がっていろ。向こうにも魔法使いはいる。ここは向こうに任せよう」
「で、では、『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』」
「よし。次は合図だ。魔物と思われないように知らせてくれ」
「は、はい」
フルフルが戦闘中の4名のパトロールを見る。
男性3名、女性1名のパトロール部隊は男性2名と女性1名が前衛を務めて、ジャイアントオーガと鎧オーガの攻撃に耐えつつ、男性1名が魔法でジャイアントオーガたちを攻撃していた。だが、ジャイアントオーガたちは4名を押している。
「皆さん! フルフルです! 戻ってきましたー!」
「フルフル!?」
戦闘中のパトロール部隊が一斉にフルフルの方を向く。
それと同時に久隆が飛び出した。
彼はまずジャイアントオーガに狙いを定めた。
地面を蹴って大きく跳躍すると、背中を見せていたジャイアントオーガの頭に斧を叩き込む。その一撃でジャイアントオーガは倒れた。そして、そのままジャイアントオーガの倒れ行く死体を利用して、隣にいた少し背の低いジャイアントオーガの首を狙う。
成功。ジャイアントオーガは頸椎をやられて、そのまま地面に倒れ込む。
そして、位置エネルギーを活用して、ジャイアントオーガの右手にいた方の鎧オーガの頭に斧を振り下ろした。一撃で頭蓋骨が砕け散り、鎧オーガは応戦する暇もなく倒れる。次は左手にいる鎧オーガだと久隆が狙う。
鎧オーガは混乱していた。
先ほどまで前方にいるパトロールと交戦したはずなのにジャイアントオーガ2体が瞬く間に倒され、鎧オーガだけになってしまったのだ。
だが、彼はその混乱から立ち直る余裕すら与えられなかった。
久隆の斧が首の守られていない鎧の構造を利用して、首を刎ね飛ばしたのだ。
「あ、あなたは……」
「助かりました! ありがとうございます!」
暗くて久隆の容貌がよく見えないのか、魔族たちは久隆のことを地上からフルフルが呼んできた同じ魔族だと思っていた。
「気を付けろ。さらに4体、オークが近づいている。9時の方角からだ」
久隆はそう告げてフロアに入られる前に廊下で防ぎにかかった。
鎧オークで武器は棍棒だった。記述していなかったが先ほどのジャイアントオーガたちも棍棒で武装していた。
久隆はまずは鎧オークが棍棒を振り上げるのを待ち、振り上げと同時に懐に飛び込んだ。一瞬で鎧オークの首が刎ね飛ばされ、棍棒を振り上げたときの勢いと首を刎ね飛ばされたときの衝撃で後ろに倒れる。
鎧オークが後方の鎧オークにぶつかっている間、久隆は別の鎧オークを片付けに向かった。鎧オークは棍棒を振り回しているが、狙いは定まっていない。
久隆はでたらめに棍棒を振り回すオークの側面に回り込むとその手を叩き切り、棍棒を落とさせ、その間に頭に斧を叩き込んだ。
鎧オークが立て続けに2体やられても鎧オークたちは向かってくる。
少しばかり広い廊下に2体の鎧オークが横並び。
だが、彼らの反応速度より久隆の速度の方がはるかに早かった。
久隆は棍棒を構える鎧オークの1体に軍用ナイフを投げて右目を潰すとその痛みに1体の鎧オークがもがいている間にもう1体に向けて斧を振るった。棍棒を思いっきり振り下ろして久隆を殴ろうとした鎧オークの攻撃は空を切り、気づいたときには鎧オークの首は刎ね飛ばされてしまっていた。
そして、最後にまだ右目を潰されて苦しんでいる鎧オークの頭を潰す。
「クリア」
戦闘後、即座に策敵を行った久隆はそう宣言した。
「フルフル! 地上から助けを呼んできてくれたんだな!」
「一体、どこの騎士団の所属なんだ!? 凄い腕前じゃないか! ジャイアントオーガがまるでかたつむりの観光客のように屠られたぞ!」
フルフルは広間に出てきて、先ほど全滅寸前だったパトロール部隊に囲まれていた。
「いえ、その、あの、いろいろと事情がありまして……」
「ここから地上が近いのか? 増援はどれだけ来たんだ?」
「だから、その、じ、事情があって……」
「ああ! さっきの方だ! 先ほどはありがとう──」
そこでパトロール部隊の持っていたランタンが久隆を照らした。
「人間だ!」
「なんだとっ!?」
パトロール部隊の兵士たちが一斉に剣と杖を構える。
「これはどういうことだ、フルフル!」
「裏切ったのか!?」
パトロール部隊の兵士のひとりがフルフルの胸倉を掴む。
「ふええええ……! だから、これには事情があるんでずう……!」
フルフルは恥も外聞もなく泣き出してしまった。
「そこまでにするの」
「そ、そのお声は……!」
そこでレヴィアの声が響いた。
「久隆はこちらの味方なの。武器を収めるの。これは命令なの」
「レヴィア陛下!」
兵士たちが一斉に武器を収めて跪く。
「さて、ではみんなで拠点に向かうの。アガレスに会いたいの!」
レヴィアはそう告げてにこりと笑った。
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