表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/284

12階層の戦い

本日2回目の更新です。

……………………


 ──12階層の戦い



 曲がり角から鏡でその先を確認する久隆。


「開けたフロアになっている。面倒だな。そして、ゴブリン弓兵が4体と鎧オークが6体。オークの武器は短剣。フロア全体に広がっている。ここは1体ずつ釣り上げていくべきだろうな。わざわざ敵の数がフルに活かされるフロアで戦う必要はない」


 相手に有利な地形では戦わないのも戦術のひとつだ。


 久隆たちは3名。そのうち、近接戦闘ができるのは1名だけ。遠距離火力が1名。補助要員が1名とギリギリのメンバーで戦っている。ここで無理にフロアに突入して、周囲を取り囲まれるようなことになれば、久隆が盾になれない。


 ならば、狭い通路に誘き出して、1体ずつ始末すればいい。


「レヴィア。フロア全体にお前が攻撃を叩き込んだあとに、連中をここの廊下に誘き出す。やれるか?」


「もちろんなの。任せるの」


「よし。頼むぞ」


 レヴィアがひょいと曲がり角から顔を出す。


「『降り注げ、氷の槍!』」


 その詠唱と同時にフロア全体に氷の槍が雨のように降り注いだ。


 ゴブリンたちは呆気なく貫かれて死に、オークたちも頭部に直撃を受けたものが倒れ、他も手足に氷の槍が突き刺さり、もがき始めていた。


「こっちだ! 化け物ども! こっちに来い!」


 久隆がフロアに向けて叫び、レヴィアを下がらせる。


 レヴィアの魔法の選択は適切だった。足に攻撃を受けた魔物とそうでない魔物とで速度が異なる結果となり、そのため廊下にはほぼ1体ずつ突入してくる。


 久隆は突入してきたオークやゴブリンたちの頭に斧を叩き込む。


 魔物にやはり知性はないということを証明するように彼らは連携もせず、先にやられた仲間と同じように撃破されて行く。突入しては斧で頭を潰され、首を刎ね飛ばされ、オークとゴブリンたちは金貨と宝石を残して消滅した。


「オーガとジャイアントオーガが接近中だ。少しばかり逃げ回るぞ。フルフルの付呪がもう一度展開できるようになるまでだ」


「了解なの」


 フルフルの付呪の効果は時間を計測したところ30分間は有効であった。


 今既に5分が経過しているので、残り5分逃げ回り、フルフルが再び付呪を展開できるようになれば、自分たちに有利な地点でオーガ及びジャイアントオーガと交戦する。そういう計画であった。


 5分というのは普段の生活では短いが、戦場においては永遠に思える。


 残り5分で航空支援が。残り5分で即応部隊(QRF)が。残り5分でダストオフ(救急ヘリ)が。その全てが永遠の時間のように感じられる。たったの5分が生死を分ける戦場では5分というのは永遠なのだ。


 その点において5分間、ダンジョン内を逃げ回るという久隆のアイディアは微妙なところであった。ダンジョンの広さも、構造も完全に把握できたわけではないのに、逃げ続けられるだろうか? 行き止まりに出くわしたり、挟み撃ちにされる可能性がないわけではないのだ。


 だが、その点はその5分の重要性を理解している久隆がもっとも分かっている。


 彼はフルフルの付呪は使えたら使えたでありがたいというだけのスタンスだった。レヴィアの魔法が強化され、久隆自身の身体能力をブーストされている状態なら、鎧オーガでも付呪で鎧を弱体化させなくても撃破は十分にできる。


 だが、万全には万全を重ねておきたい。


 鎧オーガがどのような鎧を纏っているか分からない。これまでの鎧オーガは首に隙があったが、それを改善した鎧オーガが出没しない可能性はないのだ。それと兜の有無。たまに混じっている兜を被った鎧オーガは頭を潰すには鎧を弱体化させておかなければならない。斧は斧でしかなく、金属を切断するための道具ではないのだ。


 だから、なるべくならばフルフルの付呪を使いたい。


 敵に遭遇してしまった時はその時だ。やれる限りのことをして切り抜ける。いざとなれば鎧オーガの顔面に斧を叩き込んでやるだけだ。即死はしないかもしれないが、間違いなく戦闘不能には追い込める。


「こっちだ」


 幸い、ゴブリンなどと違って移動しながらでもジャイアントオーガと鎧オーガの位置は把握できる。足音が大きく、隠れる気もない相手から逃げ回るのは難しいことではない。ゴブリンがひょっこり伏兵として出てきたら不味いが、ゴブリンには出くわさない。


 1分、2分、3分、4分と時間が経過していく。


 1分が重い。まだ1分しか経っていないのかと思う。相手は完全に警戒態勢に入っており、そこら中を探し回っているのが分かる。それが余計に神経を刺激し、時間を遅く感じさせる。久隆は落ち着いているが、フルフルは明確に神経質になっている。


「5分経過。迎え撃つぞ」


 久隆がそう告げたときレヴィアとフルフルが大きく安堵の息をついた。


「鎧オーガはこの先からこっちに来ている。この廊下は狭い。オーガは1体ずつしか通過できないだろう。ここで迎撃する。フルフルは付呪を頼む。レヴィアは魔法で攪乱を」


「ジャ、ジャイアントオーガは?」


「あれはまだ遠くにいる。足はあまり速くないらしい」


 ジャイアントオーガの足音は遠い。そして、遅い。あの巨体でスピードまであったら脅威だが、長期的な速度の維持は無理らしい。


「来るぞ」


 曲がり角から鎧オーガが姿を見せた。


 数は6体。兜付きが2体で後は兜はない。そして、武器は短剣と盾だ。盾を使ってくるとは久隆も予想していなかった。だが、機動隊が使用するようなライオットシールド状のものではなく、小さな丸い盾だ。そして、素材は間違いなく木製。


「フルフル!」


「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」


 フルフルの付呪が効果を発揮し鎧オーガたちの鎧がボロボロと崩れていく。


「レヴィア、叩き込め!」


「『吹き荒れろ、氷の嵐!』」


 フルフルの付呪で強化されたレヴィアの魔法が鎧オーガたちを襲う。


 脆くなった鎧が氷によって削られ、剥き出しの顔面が氷によって打撃を受け、視界が一時的にではあるが失われる。


 そこに久隆が突撃する。


 フルフルの付呪とレヴィアの魔法で削れた鎧ごと腎臓を破壊し、頭を潰し、首を刎ね飛ばし、盾で相手が身を守ろうとすれば蹴りを叩き込んでよろめかせ、その隙に致死的な攻撃を叩き込んでいく。


 鎧オーガが壊滅したのはきっかり10分後のことだった。


「残り10分でジャイアントオーガを料理するぞ。こっちだ」


「どんどんやっつけるの!」


 久隆たちは大きな足音を立てて移動しているジャイアントオーガの方に向かう。


 音が近くなってきたところで、久隆が様子を探り、狭い廊下を巨体が移動しているのが確認された。武器は短剣と盾。盾の大きさが違う以外は鎧オーガと同じ武装だ。


「連中をさっくりと片付けちまうか。残り8分で」


 久隆はそう告げて斧を握りしめた。


……………………

本日の更新はこれで終了です。


では、面白いと思っていただけたらブクマ・評価・励ましの感想などお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ