ジャイアントキリング
本日1回目の更新です。
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──ジャイアントキリング
久隆は思いっきり地面を蹴ってバスケットボールでダンクシュートを決めるように跳躍すると、人工筋肉が予想以上の出力を発し、高い天井付近にまで達する。
そして、敵は自分たちより小さいと思って必死に地面付近を攻撃しているジャイアントオーガの頭部に斧を振り下ろした。
ジャイアントオーガはその一撃で死亡し、死体が消えようとする中、久隆は死体を蹴って、次のオーガの首を狙う。オーガの首はやはり脂肪と筋肉によって守られているが、それでも胴体より防備が弱い。その首を刎ね飛ばすことは不可能でも、頸動脈に損傷は与えられるだろう。
久隆は狙いを定めて斧を振るう。ジャイアントオーガの首が斬り裂かれ、呻き声を漏らすとハルバードを振るった勢いで体勢が前のめりになっていたことで、倒れていく。
久隆はその背中を蹴って、次のジャイアントオーガに向かう。
次のジャイアントオーガは視力を奪われていなかった。そのオーガは友軍が倒れたことを確認して、ハルバードを久隆に向けて振るう。
空中で逃げ場のない状況。
久隆は咄嗟に身を翻し、ハルバードの一撃を間一髪で回避すると、ハルバードを蹴ってジャイアントオーガの次の攻撃を遅らせ、そうしている間に頭に飛びかかった。
ホームセンターで買った最高級の斧がジャイアントオーガの頭を叩き潰し、ついに3体目のジャイアントオーガが地面に崩れ落ちていく。
3体のジャイアントオーガは倒れ、膨大な金貨と宝石だけが山のように残った。
「片付いたな」
久隆は油断せず、即座に索敵を行う。
オークたちが向かってきている。連戦になりそうだ。
「レヴィア! フルフル! オークが来るぞ! 準備しろ!」
「了解なの!」
ジャイアントオーガが倒れた場所に駆け付けたオークたちは鎧を纏い、やはりハルバードを手にしていたが、久隆にとっては獲物に過ぎなかった。
久隆はオークたちの首を刎ね、頭を潰し、隙を見ては武器を奪って数体のオークに打撃を与え、瞬く間に5体のオークを殲滅した。恐れていたゴブリン弓兵の奇襲などはなく、全てが順調に終わった。
「他に敵が近づいてくる気配はない」
再び索敵を行い、久隆はそう告げた。
「どうだ、フルフル。ジャイアントオーガもくたばったぞ。俺たちで倒せない相手じゃない。気分はよくなったか?」
「そ、そ、そうですね。私たちでも倒せるんですね……。私たちでも超深度ダンジョンのジャイアントオーガが倒せるんですよね……」
フルフルはそう告げると泣き始めた。
「おい。どうした、フルフル?」
「どこか痛いの、フルフル?」
久隆とレヴィアが心配してフルフルに駆け寄る。
「だ、だって、だって、倒せるんですよ! あの化け物が倒せたんですよ! これまで私たちが血を流して倒してきたあの化け物が倒せるんですよ! それも無傷で! う、嬉しくて、それが嬉しくて……」
フルフルはそう告げて顔をぐちゃぐちゃに濡らした。
「ほら、タオルだ。顔を拭け。泣くもんじゃない。笑うべきだ。俺たちはこのまま15階層まで潜って、お前たちの仲間を救う。その見通しが立ったんだから、ここは笑え。泣くのは上手くいかなかったときだ」
「は、はい。でも、でも、嬉しくて……」
フルフルの中でジャイアントオーガの存在はよほどトラウマになっていたのだろう。彼女はタオルで涙を拭いながらも次々に涙が零れ落ちていた。
「フルフル。もう大丈夫なの。久隆がいればみんな助かるの。上手くいくはずなの」
「は、はい……」
レヴィアはフルフルを優しく抱きしめて、頭を撫でてやった。
しかし、と久隆は思う。
今回は3体だったからこそレヴィアの魔法とフルフルの付呪でどうにかなったが、これがまたモンスターハウスのように大量に出現したら大変なことになるだろう。この11階層から20階層までの間にはモンスターハウスが1階層ある。それをどうするかだ。
だが、少なくとも15階層まではモンスターハウスはないはずだ。あればフルフルが報告している。何せ、ジャイアントオーガの群れがいるということになるのだ。フルフルが真っすぐ出口を目指したところで気づかないはずがない。
モンスターハウスは15階層以降。
そのとき、自分は戦えるだろうかと久隆は少しばかり考えた。
いや、戦わなければならないと久隆は考える。
レヴィアたちの仲間は25階層より下にいる。ならば、25階層より下に行かなければならない。それはとても苦労することかもしれない。それは命の危険すらあるかもしれない。それでもやらなくてはならない。
久隆は海軍を除隊して初めて生きる意味を見つけたのだ。
この仕事をやり遂げることを今は第一に考えたい。死ぬかもしれないとか不可能かもしれないとかは考えない。考えるだけ無駄だ。人間、死ぬときは死ぬ。不可能に思えることにも突破口がある。その気持ちで行くと久隆は決意していた。
他に生きがいはないのだ。生きる目的がないのだ。
「そろそろいいか? 11階層を探索し終えたら、12階層に降りる。この調子で15階層を目指そう。まだまだ時間はある」
「分かったの!」
それから久隆たちは11階層の地図を作成すると、12階層に降りる階段を見つけた。
久隆たちは再びジャイアントオーガに遭遇することを覚悟しつつ12階層に降りた。
久隆は音もなく12階層に降りると早速索敵を始めた。
「ジャイアントオーガ2体、オーガ6体、オーク6体、ゴブリン3、4体」
「楽勝なのね」
「油断はするな。ダンジョンの構造によってはこの数でも脅威になる」
狭い通路や開けたフロア。それらが組み合わさったのがダンジョンだ。開けたフロアで敵に囲まれれば脅威だし、狭い通路で挟み撃ちにされても脅威である。
魔物の数だけで脅威は測れない。実際にダンジョンを巡ってみなければ。
「いつも通り、先にゴブリンを片づける。話はそれからだ」
久隆たちは慎重にダンジョンを進むが、厄介なことが分かった。
「ゴブリンとオークの距離が近い。連携している可能性がある。面倒だな……」
「レヴィアに任せるの」
「やれるか?」
「フルフルの付呪を受ければやれるの」
レヴィアはそう告げてフルフルの方を向く。
「フルフル。久隆とレヴィアの両方に付呪はつけられる?」
「で、できないことはないですが……。あまり何度もはできないかと……」
「では、今回だけ頼むの」
「分かりました」
フルフルが杖を構える。
「では、『賢きものよ、より多くの叡智を極め、力を得よ。賢者に力を』『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』」
フルフルはレヴィアと久隆の両方に付呪を展開した。
「ふう。暫くは魔法は使えません。鎧オーガなんかには出くわさないでくださいね」
「何分ぐらいだ?」
「10分ぐらいです」
「それなら大丈夫だ」
乱戦になったとしてもレヴィアの魔法が強化された状態でならどうにかなる。
最悪、鎧オーガは首を狙えばいい。
そう考えて久隆たちは12階層を進んだ。
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