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買い出しと医者

本日2回目の更新です。

……………………


 ──買い出しと医者



 久隆は戦勝祝いの次の日も6時に起き、朝食を作り、弁当を作った。


「おはようございます」


「おはよう、フルフル。朝食ならできてるぞ」


「ありがとうございます」


 まずはフルフルが起きてくる。身だしなみには気を使っているのか寝起きのままではない。みっともないところを見られたくないという思いがあるのだろう。


「ふわあ。おはようなの」


「よう。おはよう。朝飯食べろ」


 レヴィアはそういうのは全く気にしていない。寝起きのままぼさぼさの頭と寝ぼけた顔で出てくる。それもそうだ。身の回りの世話は宮殿にいる侍女たちが全てやってくれていたのだから。レヴィアは魔王なのだ。


「朝飯食ったら今日はまずホームセンターに向かう。新しい斧とヘルメットを買っておく。確かにオーガやオークにぶんなぐられたらどうにもならない強度だが、矢は防げる。10階層より下にゴブリン弓兵が出没するなら備えておきたい」


「装備品の調達なのね。他には何か買うものはあるの?」


「これと言って考えていない。だが、何か使えそうなものがあったら教えてくれ」


「分かったの」


 それから朝食を終えて、レヴィアの身支度が済むと、久隆たちはホームセンターに向かった。田舎でもホームセンターは品ぞろえがいい。観葉植物から工作道具まで様々なものが販売されている。


「これは……一体どういう趣旨の店なのですか……?」


「雑貨屋だ。何でも売っている。食品、工具、DIY素材、酒、バッテリー。まずはヘルメットだ。軽量素材の品が売っていたはずだ」


 フルフルは見慣れぬホームセンターの様子をきょろきょろと見渡し、レヴィアも様々な商品に関心を示していた。


「あった、あった。カーボンナノチューブ繊維の防災用ヘルメット。サイズを確かめてみてくれ。丁度いいサイズの奴を購入する」


「これ、レヴィアたちには装備できないの」


「ああ。そうだった。角が問題だったな……」


 レヴィアもフルフルも角があるのでヘルメットは被れない。


「仕方ない。俺だけ購入しておくか。それからゴーグルもあった方がいいな」


 これまでダンジョンで視界を妨害してくるような敵はいなかったが、10階層以下には様々なモンスターがいるという。瓦礫がまき散らされて、粉塵で目をやられたら、戦闘力はそれだけで低下する。


「ゴーグルは嵌められるだろう?」


「うん。ばっちりなの!」


 レヴィアとフルフルの分のゴーグルも購入。


「それから斧だな。あれもだいぶ使ったから、そろそろ交換しておいた方が無難だろう。研ぎはしているが本来の用途以外で使用し過ぎた」


 工具コーナーで斧を購入。高くて頑丈な奴をチョイス。


「何か他に必要そうなものはあったか?」


「うーん。鎧なんかは置いてないのね」


「当り前だ。ここは戦地じゃない。平和な国だ。表向きは」


 日本国国防四軍は今もアジア各地で活動中だとしても。


「何もないなら、このまま家に帰るぞ。今日中に15階層に到達したい」


「おー!」


 再び車で自宅に戻る。


 車を充電器に繋ぎ、久隆はスマートフォンを取り出した。


 そして、アドレス帳を眺める。


「まさか、この番号に本当にかけることになるとはな……。3年前の高校の同窓会以来か。なるべくなら、世話になりたくはなかったが……」


 アドレス帳からひとつの名前を選んで久隆は通話ボタンを押した。


 呼び出し音が何度か響く。


『はい』


 5回目で通話相手が出た。


「椎葉か? 球磨だ」


『久隆か。久しぶりだな。日本に帰ってきているのか?』


「6か月前に傷病除隊になった。手足を吹き飛ばされてな」


『……そうか。日本での暮らしは慣れたか? 帰国した兵士が精神を病むケースは多い。精神科の紹介状ならいつでも書いてやるぞ』


「いや。それは海軍がやってくれた。少しばかり慣れないところはあるものの、ストレスの少ない田舎に住んでいる。それよりもお前に頼みたいことがあるんだが。お前のその職業に関して、だ」


『俺の仕事が何なのかは知ったうえだよな? 盗聴はされていないか?』


「極東電子防衛企画に引っかかる通話はしてない。安全だ。それなりに準備をしてくれれば、そちらとしてもそれなり以上に儲けられるかもしれない話だが、乗るか?」


『……今、どこに住んでいる?』


「後で住所を送るが熊本の田舎だ」


『分かった。明後日にでもそっちに向かう。住所を頼む。まあ、古い知り合いの頼みは断りにくい。儲けられたら御の字とでも思っておくさ』


「ありがとう。頼りにしている」


 これで医者が確保できそうだなと久隆は一安心した。


 久隆自身もダンジョン内で負傷する可能性がある。そして、医者は事件性があるのならば警察にそれを通報するように今の日本の法律はそうなっている。銃で撃たれたり、刺されたり、殴られたりした傷を負って病院を受診した場合、医者が事件性があると思えば警察に連絡がいく。


 ただし、そういう連絡をしない医者がいる。


 反社会的組織もここ最近ではグローバル化し、中国資本のものや、日本のヤクザ、ロシア人のマフィアなどが入り交じっている。東京や北九州などでは抗争が度々起きており、警察の締め付けは厳しい。


 医者がそういう反社会的組織の人間を治療することはリスクだ。反社会的組織に協力したとして起訴されることもある。ヒポクラテスの誓いはどこへやら。とにかく、今の日本はそういう反社会的組織の壊滅を狙っており、そういう人間を警察に通報せず治療するような医者は邪魔だった。


 だが、需要があれば供給がある。


 高額の医療費で秘密裏に治療を施す医者がいる。それどころか反社会的組織と繋がって非合法に売買された臓器移植を行う医者がいる。表向きには出回っていないことになっているはずの軍用義肢を非合法に移植する医者がいる。


 すなわち、闇医者。


 都市伝説のような存在だが、それは確かに存在している。医療免許を持っていながら、大学できつい講義を受けていながら、難関の医学部に入学していながら、より多くの富を求めるために道義的責任を放棄した人間が。


 それもよりにもよってその闇医者というのは元陸軍の軍医だ。


 つまりは国防医科大学校で給料をもらいながら医学について学び、税金で身に着けた技術をよりによって国益に背く連中のために使っているのだ。


 だが、個人の性格としてはいい人間だ。とても犯罪者とは思えない。


 普通の医者が頼れない以上は、こういう医者を頼るしかない。闇医者のやっていることは犯罪だが、闇医者の診察と治療を受けることは犯罪ではない。


 残るは15階層まで潜って、レヴィアたちの仲間を救出するだけだ。


 15階層までは何日かかるだろうかと思いながら久隆は家の中に入った。


……………………

本日の更新はこれで終了です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 追いついちゃった・・・続き楽しみに待ってます!
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