マンティコア討伐
本日2回目の更新です。
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──マンティコア討伐
ダンジョンの壁にもたれ、タオルケットを地面に敷いて眠っていた久隆は、いつものように6時には目を覚まし、まだ眠っているレヴィアたちを見た。
「起きろ。時間だぞ」
「う、うーん……」
レヴィアとフルフルが目をこすって起きる。
「コーヒーだ。目を覚ませ。朝食を食べたら、いよいよ10階層だぞ」
「いよいよなのね」
災害非常食についてきた乾パンにジャムをつけて食べ、コーヒーでカフェインを摂取し、しっかりとした状態を整えると久隆たちは地下10階層への階段に向かう。罠は既にそこに置かれており、10階層に続く階段がぽっかりと開いている。
「俺が先に潜って状況を探ってくる。ふたりはここで待っていてくれ」
「大丈夫なの……?」
「任せろ。これでも訓練している」
久隆は罠を設置する地点やマンティコアの位置情報を得るために単独で潜った。マンティコアは鼻は悪いが、目と耳はいいという。ならば、音を発さないような行動が必要だ。そして、久隆は特殊作戦部隊の隊員として音もなく動く術を身に着けている。
久隆は音を立てずに階段を降り、地面にそっと触れる。
重量としては300キログラムほどの生き物が動いているのが分かる。あまり遠くはない。近い位置にいる。これは注意が必要だなと久隆は思った。
音を立てぬように用心しつつ地図の作成を始める。マンティコアの位置は常に計測しつつ、マンティコアに出くわすことがないルートを選んでダンジョン内を進んでいく。
この階層の広さがどの程度なのか分からないが、ある程度の地図は作成できた。罠を設置できそうな場所も把握できた。後は罠を仕掛けるだけだ。
久隆は用心深く階段まで戻り、レヴィアたちと再合流する。
「敵はかなりデカい。だが、倒せない相手ではないはずだ。罠を仕掛けよう。それから足音を立てないようにしてくれ。マンティコアは移動しているが、階段からそう離れていない場所にいるのが分かっている」
「分かったの。ついにやるのね……!」
「ああ。ここを突破したら、一度地上に戻って、それから15階層を目指そう」
いよいよ15階層までの道のりが見えてきた。
10階層までは罠を運ばなければいけなかったので物資はそう多くは運べなかったが、10階層でエリアボスであるマンティコアを討伐すれば、罠は必要なくなる。15階層にいるレヴィアたちの仲間のために大量の物資を輸送し、救援することができるようになる。
だが、まずはどうあろうとマンティコアを討伐しなければならない。
「罠を運んで設置する。レヴィアとフルフルは本当に足音を立てるな。地下に降りたら会話も厳禁だ。いいと言うまで魔法も詠唱するな」
レヴィアとフルフルが無言で頷く。
「では、行くぞ」
久隆は罠を抱えて、10階層に潜る。レヴィアとフルフルも足音を立てずにそれに続く。静かに、どこまでも静かに久隆たちは10階層を進んでいく。
久隆は無言で通りに罠を仕掛け始めた。迂回路のない場所で、まっすぐ突っ込むしかない場所に久隆は罠を仕掛ける。古典的なブービートラップの数々が、ダンジョンの廊下に設置されて行く。
「よし。いいぞ。デカい声で叫べ。こっちに奴を呼び寄せる」
「分かったの!」
「いくぞ!」
久隆たちは息を思いっきり吸う。
「来やがれ、化け物!」
「叩きのめしてやるの!」
「こ、こっちに来いっ!」
そして、すぐさま久隆が索敵を行う。
「来るぞ。フルフル、今のうちに付呪を」
「は、はいっ! 『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」
フルフルが久隆に付呪をつける。
「かなり早いな。20秒かそこらで突っ込んでくるぞ。デカくて速いのは厄介だな。その上、即死毒持ちとは。神頼みもしたくなりそうだ」
猛獣の駆ける振動が地面を伝わってくる。
「──来た」
そして、この階層の主が姿を見せた。
ライトで照らされたマンティコアの姿は醜いことこの上なかった。
体はライオンのようであり、尻尾はサソリ、顔はライオンと老人の顔を組み合わせたようで、口には牙がズラリと並んでいる。その姿は醜く、見るものを怯えさせるものだった。だが、やはり、その瞳に知性の色はない。
「さあ、来い」
久隆はレヴィアとフルフルを十分に下がらせてから攻撃の準備を行う。
「────!」
マンティコアはこの世のものとは思えない叫び声を上げると、廊下を駆け抜けてくる。だが、この廊下には罠が大量に仕掛けてあるのだ。
まずは釘を打ちつけた丸太がマンティコアの顔面に降り落ちてくる。マンティコアの顔面に丸太の重量で速度と力を得た釘が突き刺さり、マンティコアが悲鳴を上げてのたうつ。だが、これは致命傷にならない。
「レヴィア! 今の間に魔法を仕掛けろ! 尻尾を狙え!」
「了解なの! 『斬り裂け、氷の刃!』」
氷の刃がマンティコアに向けて複数飛来し、その体を切り刻む。
だが、尻尾の切断はできなかった。サソリのような尻尾はまるで装甲のように硬く、氷の刃を弾き返してしまった。
「し、失敗したの!」
「安心しろ。まだチャンスはある。焦るな」
マンティコアが体勢を整えなおし、再突撃する。
だが、再び罠が。今度は灯油などの可燃物を詰めた空き瓶が落下してくるもので、マンティコアが全身にその液体を浴びたところで、衝撃で発火するように仕組まれたライターが火をつけ、マンティコアが一瞬で炎に包まれる。
マンティコアは苦し気な悲鳴を上げながらも久隆たちに近づく。
そこで再び釘丸太の罠。顔面が滅茶苦茶になるほどの打撃を浴びて、マンティコアが悲痛な悲鳴を上げて地面にうずくまる。
「レヴィア! もう一度だ!」
「『斬り裂け、氷の刃!』」
今度もやはり尻尾は切断できない。だが、傷を負わせることはできた。
「────!」
次々降りかかる罠を前に怒り狂ったマンティコアが炎を帯びたまま突撃してくる。
「レヴィア、フルフル! 下がれ! 俺が仕留める!」
「気を付けるの、久隆! 絶対に毒を浴びたらダメなの!」
レヴィアが叫び、フルフルが杖を構える。
「『沼に嵌りて、その足に重荷を! 枷を嵌めたまえ!』」
フルフルがそう唱えるとマンティコアの速度が低下した。
「わ、私にできるのはここまでです! 絶対に、絶対に、どうあっても死なないでくださいね、にんげ──久隆さん!」
そしてレヴィアとフルフルが曲がり角を曲がって下がる。
「助かったぞ、レヴィア、フルフル。相手は満身創痍だ。手負いの獣は面倒だが、仕留められない相手ではない」
久隆はそう呟くと斧をしっかりと握りしめる。
海軍時代に、東南アジアの戦争時代に戻ったかのような殺意が久隆から溢れ出る。
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本日の更新はこれで終了です。
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