不死鳥
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──不死鳥
久隆たちは万全の準備を整えて100階層にあるアガレスたちの砦を訪れた。
「アガレス。110階層は?」
「調べた。110階層までに魔物はいない。そして110階層のダンジョンボスはフェニックスだ。それさえ倒せばダンジョンコアは制御できる」
「110階層まで魔物はいないのか」
つまりフェニックスさえ倒せば、全てが片付く。
この戦いも終わる。
「フェニックスの弱点については?」
「それが難しい。だが、マルコシアならば何か知っているかもしれない」
「聞いてみよう」
久隆はマルコシアの方を目指す。
「マルコシア。ダンジョンボスはフェニックスだそうだ」
「フェニックス!? 本当ですか!?」
「ああ。アガレスの情報だ」
マルコシアが目を丸くする。
「フェニックスはとても倒すのが難しい魔物です。不死の魔物とすら呼ばれています。事実、フェニックスは一度倒したと思っても灰の中から復活することがあります。その羽は炎でできていて、炎を飛ばしながら攻撃してきます」
「厄介だな」
「ええ。厄介です。ですが、魔法攻撃には弱いですし、炎に覆われていても、より強い炎による攻撃は有効です。つまり私もお役に立てます。それから弱点は風系統の魔法ですが。物理攻撃も当然有効です。ですが、相手は炎に包まれているのでリスクはあります」
「なるほど。全員で戦えるなら勝算はあると思うか?」
「あるはずです」
マルコシアが決意込めて告げる。
「よし。魔法使いも騎士も総動員だ。一気に決着をつけるぞ。これで終わりにするんだ。長い戦いもこれで終わりだ」
「はい!」
久隆は話す。魔法使いたちに、騎士たちに。
これからフェニックスと戦うこと。それはとても危険だが、やり遂げなければならないこと。そして全員が力を合わせれば勝てる見込みはあるということを。
騎士も魔法使いも叫ぶ。『我々に勝利を』と。
そう、勝利が必要だ。全員が元の世界に戻るには勝利が必要だ。
相手がフェニックスだろうとドラゴンゾンビだろうと何だろうと勝利しなければならない。そして、揃って元の世界に戻るのだ。
犠牲者は多く出た。元の世界に戻っても生き返らないものたちもいる。それでも彼らの犠牲の分だけ勝利しなければいけないのだ。
「110階層へ!」
上層に留まっていた部隊も合流し、総力戦の勢いで久隆たちは110階層へと向かう。
アガレスもベリアも参加してる。彼らも戦いを終わらせるつもりなのだ。
長く続いたこの戦いに終止符を打ち、勝利を手にする。
魔族たちが行進する110階層に向かって。
110階層に至るまでの各階層で久隆は索敵を一応行うが本当に何もいない。
彼らは進み続ける。
そして、110階層に到達した。
「ついに来たか、薄汚い魔族ども」
久隆たちを出迎えたのはダンジョンコアという名の少女だった。
「ダンジョンコア。お前とはもう敵対関係にある。容赦はしないぞ」
「それはこっちのセリフだ、人間。人間のくせに魔族の味方をしやがって。覚悟しろ。お前たちはここで死ぬんだ。ひとり残らず!」
ダンジョンコアがそう宣言するするとダンジョンから湧き出るように燃え上がる炎の羽を持った魔物が姿を見せた。フェニックスだ。
「全員死んでしまえ! 殺されるぐらいなら殺してやる!」
ダンジョンコアのその意志に従うようにフェニックスは久隆たちに襲い掛からんとする。戦闘開始のゴングは今ならされた。
「フルフル! 付呪を頼む!」
「『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」
久隆たちの身体能力が跳ね上がり、まずはサクラたち弓兵が矢でフェニックスを狙う。フェニックスに向けて無数の矢が放たれ、フェニックスは呻き声をあげて、地面に落下していく。
「続いて、魔法使いに付呪!」
「『賢きものよ、より多くの叡智を極め、力を得よ。賢者に力を!』」
魔法使い全体の能力がこれで急上昇する。
「『爆散せよ、炎の花!』」
「『風よ、切り裂け!』」
「『降り注げ、氷の槍!』」
無数の魔法攻撃がフェニックスに叩き込まれる。
フェニックスは確実にダメージを受けていた。体の一部が灰になって、ダンジョンの床に落ちる。だが、マルコシアの言った通りだった。灰の中からフェニックスは復活する。灰になった体は再びフェニックスの体に戻り、再生する。
「無駄だよ! 何をしたって無駄なんだ! 私のフェニックスは最強の魔物だ! 魔法でも、弓矢でも、槍でも、剣でもどうにもならない! 無敵なんだ!」
ダンジョンコアが叫ぶ。
「落ち着け。再生の条件を探れ。何でもいい。奴が再生するための条件を探せ」
「了解」
久隆の捜索班は全員が頷く。
「はははは! 無敵であると? 過去に倒されたフェニックスがいなかったようであるな! だが、私は以前フェニックスを殺したことがある! その武勲を讃えられ、今の地位へと召し抱えられたのだ!」
アガレスが巨大なハルバードを構える。
「者ども! 我に続け! 敵を打倒せよ!」
「応っ!」
アガレスの一団がフェニックスへと突撃する。
「全く。考えなしの突撃馬鹿。『風よ、守れ』」
フェニックスは炎の翼から炎をまき散らして攻撃するが、ベリアの展開させた風の流れが炎を押し流す。アガレスたちはフェニックスに突っ込んだ。
「騎士としても名誉を示せ!」
アガレスたちは一斉に近距離武器でフェニックスを攻撃する。フェニックスは多数の刃を受けて、体が灰に変わるも、またしても復活する。
「むう。いかん! 下がれ!」
そこでフェニックスから炎の拡散攻撃が振りまかれた。ベリアの風でも吹き飛ばせない勢いのもので、騎士たちが炎を浴びる。
「負傷者はこっちへ! 手当てを行います!」
「負傷者は下がらせろ!」
だが、魔族たちもテキパキと臨機応変に応戦し、フェニックスに立ち向かい続ける。
「アガレス! 以前、フェニックスを倒したそうだが、どうやった!?」
「すまぬ! 覚えておらぬ! ただ、寒かったことのみを覚えている!」
「寒い……?」
フェニックスが炎をまき散らして、騎士や魔法使いを攻撃しているのに寒いとはどういうことだと久隆は考える。
「温度の変化が重要なのか……?」
灰が熱を持っていたら再生する。そういう条件であったならば?
「レヴィア! 凍結魔法を使え!」
「炎で跳ね返されるの! 意味がないの!」
「いいからやるんだ! チャンスは俺たちが作る!」
久隆たちはフェニックスと対峙する。
「お前も終わりだ、人間! 私を殺そうとする奴はみんな殺してやる!」
ダンジョンコアが叫び、フェニックスが久隆を襲う。
「終わるものか。ようやく終わりが見えてきたんだ」
久隆はそう呟いてフェニックスに向けて斧を振るう。狙うのは首。
フェニックスは炎を振りまき、久隆の頬に熱が熱々と感じられる。もう火傷を起こしているのかもしれない。それでも久隆はフェニックスの首を狙って斧を振るった。
フェニックスの首が刎ね飛ばされ、地面に転がると同時に灰になる。
そして、灰が元の部位に戻り始める。
「レヴィア! やれ!」
「『凍てつけ空気、全てを凍らせよ!』」
一気にダンジョンの温度が下がる。
「炎の化身を相手にそんな攻撃が通じるわけないだろう!」
ダンジョンコアはレヴィアの行為をあざ笑う。
「もう一度だ。何度でもやるぞ」
久隆は覚悟を決めた。
……………………
次回、最終回。
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