ショッピングモール
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──ショッピングモール
レヴィアたちのお土産を買おうと久隆たちはショッピングモールを訪れた。
レヴィアとフルフル、マルコシアは本。フォルネウスは既にアーティファクト化したナイフをもらっているので辞退。ベリアはアガレスの分まで含めて焼酎ということになった。久隆とサクラはそれを見守るのが役割だ。
「まずは本屋からだ。どういう本がいい?」
「思い出になる本がいいのね」
「ふうむ。となると、地球の風習を描いた本か……?」
思い出になる本と言われても困る。
本を読むことは確かに思い出になるが、本そのものがただ思い出になるということはあるのだろうか?
「児童書のコーナーを見てみたらどうです?」
「そうしよう」
サクラからの助言を受けて久隆たちは児童書コーナーに向かう。
「ふむふむ。どれも面白そうなのね。けど、やっぱり1冊にしておきたいの」
「思い出のためか?」
「そうなの。その本を見たとき久隆との思い出が蘇る本がいいの」
「そうか」
レヴィアは児童書コーナーをしばらく見て回ったのちに、1冊の本を手に取った。
「これにするの!」
「ドラゴンの物語か。そう言えばヴェンディダードではドラゴンが神聖視されているんだったな」
「そうなの! 太陽神もドラゴンなのよ?」
「じゃあ、その絵本はいいかもしれないな」
ドラゴンが主役の物語だ。悪者や乱暴者としては描かれていない。
宗教的な問題はないだろう。
「フルフルたちは決まったか?」
「え、あ、はい……」
フルフルとマルコシアは青年漫画コーナーにいた。
「漫画か? 日本の漫画は世界的な評価があるぞ」
「ええ。確かにそうだと思います。いいものです。その、かなり特殊ですが……」
フルフルが持っている青年漫画を見るとかなりハードな代物だと分かった。
「あー。他人の趣味にどうこう言わんが、せめて完結しているやつがいいぞ。向こうでは続きは手に入らないからな」
「そ、そ、そ、そうですよね。そうします!」
フルフルは漫画を置いてそそくさと別の本を探しに向かった。
「漫画って面白いですね。こんなに面白いものがあるとは思いませんでした。絵でここまで表現するだなんて凄いことだと思いますよ」
「最近はいろんな国が漫画を書いてる。絵による表現っていうのはアニメというのもあって、俺はあまり詳しくないがこれも世界的に広がっているものだ」
「なるほど。もうちょっとこの世界に残りたいくらいです」
マルコシアは少し寂し気にそう告げた。
「そっちの世界でも漫画を作ればいい。絵を描く本でも買っていっていいぞ。お前の魔物のスケッチを見たが、よくかけていた。あれだけ描けるなら、漫画だってかけるだろう。試してみたらどうだ?」
「いやあ。あたしじゃストーリーが思い浮かびませんし」
「今回のダンジョンの騒動を描いたらどうだ。きっと大勢が感動するぞ」
「それはいいですね。じゃあ、漫画を描く本を」
マルコシアは絵と漫画を描く本を買っていった。
「私はこれにします!」
「おお。巨匠の作品だな。俺も好きだぞ。この医者の漫画は」
フルフルは伝説的な医者の漫画を購入。セットなのでかなり重い。
まずは本を車に収め、それからベリアと合流した。
「ベリア。待たせたな。選べたか?」
「いや。どれが美味いのかと思ってね。あたしが飲んだのはどれだ?」
「これだ。高級品の芋焼酎だ。アガレスとふたりで飲むなら2本くらい買っていくか?」
「そうしよう」
ベリアは2本の芋焼酎を持って運ぼうとする。
「待て待て。会計は俺がする」
「奢ってもらうわけにはいかないよ。それに金なら持ってる」
「お前の持っている金はここでは使えない」
金貨は使えないということをベリアは知らない。
「な……。なら、どうしてるんだ?」
「俺が会計を済ませる。金貨は換金するのに手間がかかる」
そう告げて久隆はベリアの分の焼酎の会計を済ませた。
「あんたには借りばかりだね。いつか返したい」
「構わないさ。客人をもてなすのはどこの世界でも、国も同じだろう?」
「そう言われちゃかなわないね」
ベリアは肩をすくめると、久隆からのもてなしを受け取った。
「さあ、昼飯はラーメンでいいか?」
「いいの!」
「じゃあ、ラーメンだ」
久隆たちはいつものようにラーメン屋に向かう。
「ラーメン? どういう料理なんだ?」
「ふふん。美味しいスープパスタなのよ。クリーミーな風味でチャーシューって肉が美味しいの。きっとベリアも気に入るのよ」
「パスタですか。いいですね」
いや、スープパスタではないのだがと久隆は思う。
何はともあれ、ラーメン屋で注文する。
熱々の豚骨ラーメンが運ばれてくる。トッピングは全員が全部乗せだ。
「こりゃ美味い。なんというかパスタとは違うね。アガレスが好きそうだ」
「アガレスはとうとう地上の料理は食べられなかったのね」
「そうですか。まあ、責任の重い立場ですからね。ダンジョンから離れることはできなかったでしょう」
アガレスはずっとダンジョンの中にいた。
外に出て太陽の光に当たることもなく、風呂に入ることもなく、ずっとダンジョンの中で指揮を執っていた。彼のタフネスには驚かされる。
「それにしても美味いものがこんなにあるなんて。これはヴェンディダードの食文化も変えていかないといけないねえ」
「栄養バランスと適量の食事を守れば贅沢病にはならない。後で栄養バランスシートを渡すから、それと使ってくれ」
「助かる」
贅沢病の仕組みさえ分かれば、ヴェンディダードの食文化も上昇するだろう。
「酒の飲みすぎもいけないからな。買った焼酎はゆっくり飲んでくれ」
「分かってる、分かってる。無茶な飲み方はしないよ」
そういって昨日の焼肉屋では無茶なほど飲んだじゃないかと久隆は思う。
「このラーメンも今回で終わりなのね」
「カップラーメンなら渡せるが、味はだいぶ違うな」
「ううむ。残念なのね……」
レヴィアはそう告げて少し寂し気にラーメンを啜った。
「こちらと向こうを行き来できたらいいんだろうけどな」
「それは難しい。今回の転移だって、大悪魔の気まぐれだ。それにまた転移したら、また死人が出る。難しいよ」
ベリアは首を横に振る。
「そういうことなら、思い残すことがないように過ごしてくれ。食事にしろ、娯楽にしろ、何にしろ、思う存分楽しんで帰ってくれ」
「おー!」
それから久隆たちはショッピングモール内を巡り、服を買ったり、アイスクリームを食べたりして過ごした。
思う存分遊んですごし、遊び疲れたところで家に帰ることになった。
「あんたには礼を言わなくちゃいけないね」
「焼酎の礼か?」
「いや。レヴィア陛下を助けてもらった礼だ。あの方はあの年齢で魔王になられた。子供のように遊ぶことはできない、公務続きの日々だった。それがあんなに笑われて、楽しまれて、本当に子供のように過ごされた。礼を言う、久隆」
「どうということはない。楽しむと決めたのはレヴィアだ」
久隆はそう告げて、寝ているレヴィアたちを乗せて家に帰った。
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