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ここまでやってきた

……………………


 ──ここまでやってきた



「ダンジョンが再構成される」


 ベリアが告げる。


 高かった天井は普通の高さに戻り、螺旋階段は普通の階段となる。


「これで上に上がれるな」


「ああ。陛下たちを迎えに行かないと」


「どちらかというと俺たちが迎えてもらう方だな」


 レヴィアたちは今も90階層のアガレスと連絡できる立場にある。迎えられるのは久隆とベリアの方である。


「久隆!」


「レヴィア……!?」


 再構成されたダンジョンの階段から姿を見せたのはレヴィアだった。


「お前、モンスターハウスは……」


「突破したの! ベリアもいるのね! ベリア、会いたかったの!」


 モンスターハウスを突破したという言葉に久隆は信じられないという顔をする。


 モンスターハウスは人狼とリザードマンの混成部隊でできていたはずだぞ。それをレヴィアたちだけで突破したのか?


「再びお会いできて光栄です、陛下」


「もう! ベリアがどんどん地下に潜るから心配していたのね!」


「申し訳ありません、陛下。ですが、私がダンジョンコアに達さなければ、我々は元の世界には戻れない恐れがありましたので。そして、分かったことですが、ここのダンジョンコアは知性を持っています。明確な生存の意志もあります」


「ダンジョンコアに知性が……!?」


 ベリアの報告にレヴィアが驚く。


「ああ。確かにあれは知性があった。そして、生き残りたいという意志も。ダンジョンコアってのはもっと無機質なものかと思ったが全然違っていた。あれはほとんど人間や魔族と変わらない。ただ、生きることを望んでいる存在だった」


「そうだったの……。けど、レヴィアたちはダンジョンコアを操作しなければいけいの。そうしないと元の世界に戻れないの」


「ああ。ダンジョンコアに知性があろうとなかろうと奴はお前の仲間たちを大量に殺している。躊躇する必要はない。やってやるぞ」


「うん……」


 レヴィアは少し落ち込んだ様子だった。


「ベリアからもいろいろと話しを聞きたいの。まずは90階層に戻るの。そこに拠点があるの。アガレスもいるのよ」


「90階層まで進出していたのですね」


「そうなの! 久隆はとっても強いの! ……ドラゴンゾンビは?」


 そこでレヴィアは本来ここにいるはずのエリアボスがいないことに気づいた。


「あー。それだが俺とベリアで倒した。なんとかってところだったが、一応は倒せている。心配かけたな」


「流石は久隆とベリアなのね! ドラゴンゾンビまで倒してしまうなんて!」


「お前たちだってモンスターハウスを突破してきたんだろう? 凄いことだぞ」


「ふふん。レヴィアたちなら余裕だったのね」


 レヴィアは自慢げに胸を張った。


「とにかく、90階層に戻るの。みんな、ベリアのことを心配していたのよ?」


「すみません、陛下」


 そして、久隆たちは90階層に凱旋する。


「ベリア様!?」


「ベリア様だ!」


「ご無事で!」


 ベリアが姿を見せると90階層の魔族たちが湧きたった。


「ベリア! 生きていたか!」


「勝手に殺すな、アガレス。この通り、ぴんぴんしている。90階層までの全てのモンスターハウスとエリアボスは撃破したのか?」


「ああ。久隆殿たちのおかげでな。久隆殿とはもう会ったか?」


「一緒にドラゴンゾンビを倒したよ」


「おお。流石だな」


「ちとばかりひやっとさせられたけどね」


「ははは! 宮廷魔術師長でもドラゴンゾンビの相手はひやっとするか!」


 アガレスとベリアが一緒に大声で笑う。


「それで、ダンジョンコアは?」


「恐らくは110階層だ。つまり、もうすぐそこということになる。ドラゴンゾンビを倒した今、110階層に到達するのは容易い」


「つまり、ようやくということか……?」


「ああ。ようやくだ」


 アガレスとベリアの話を聞いていた魔族たちがざわめく。


 ようやく長かったダンジョン攻略が終わる。夥しい血を流した戦いが終わる。自分たちは自分たちの世界に戻ることができる。


「やった! やったぞ!」


「帰れる……。帰れるんだ……」


 90階層は歓喜の声とむせび泣きに包まれた。


「喜ぶのはまだ早い。100階層のドラゴンゾンビはくたばったが、110階層には恐らくダンジョンボスがいる。奴の知性から考えて、相当強力な魔物を従えているはずだ」


「知性?」


「このダンジョンのダンジョンコアには知性がある。会話すら可能だった。そして、奴は望んでいる。我々を皆殺しにしてでも生き延びたいということを」


「なんということだ……。知性があるダンジョンコアなど聞いたことがない」


「だが、実際にいるんだ。どうにかしなきゃならん」


 ベリアはそう告げて周囲を見渡した。


「酒、持ってる奴いないのか?」


「いるわけないであろう。我々が転移した状況を考えろ」


「だが、あたしが魔法ゴケで食いつないでいた間、美味いもの食ってたんだろう?」


「それは、まあ、そうだが……」


 アガレスが助けを求めるように久隆に視線を向ける。


「地上に出てきてくれたら、酒を奢るぞ。出るか?」


「異世界ってのにも興味がある。行ってみよう」


 こうしてベリアが地上に出ることになった。


「しかし、ダンジョンコアは110階層なのね。本当にくるところまできたのね」


「そうだな。長い戦いだった」


 110階層を攻略すれば、レヴィアたちは元の世界に戻ることになる。


「レヴィア。お土産を買って帰るか?」


「いいの!?」


「だって、お前たちはもうすぐ帰るんだろう?」


「……そうなのね」


 レヴィアは元の世界への帰還と久隆たちとの別れを結びつけていなかったようだ。


「お前は魔王様なんだし、しっかりやれよ」


「分かってるもん」


 レヴィアが少し拗ねたようにそう告げる。


「それからモンスターハウス突破記念とドラゴンゾンビ討伐記念を兼ねて、焼肉に行くか? どうする?」


「いくの! お腹いっぱいに食べるの!」


「よしよし。そうしよう」


 そんな久隆たちの様子をベリアが見つめる。


「陛下はあの人間とかなり打ち解けられておられるんだな、フルフル」


「ええ。久隆さんは我々が苦しいときに助けてくださいました。最初は私も信用できないと思っていたのですが、後からとてもいい方だとわかりましたよ」


「そうか。人間と魔族がこうして肩を並べているだけでも奇跡だというのにな」


 ベリアは感慨深げにそう告げた。


「ベリア様。私もダンジョンで鍛錬を積みました。きっとこれからはお役に立てると思います」


「実力に見合った自信も手に入れたみたいだね。その調子だ。その調子で成長し続けるんだよ」


 ベリアはフルフルの肩を叩き、地上に上っていく。


……………………

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― 新着の感想 ―
[一言] 終わりが近い……と素直に思えない不穏さを感じてしまうなぁ。
[一言] ベリアと一緒に下層に潜った、二人の魔族が不憫 合掌
[一言] 冷静に考えると徒歩で休憩取りに100階から1階まで上がっていくのやべえな…
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