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断頭台のドラゴン

……………………


 ──断頭台のドラゴン



 久隆が壁から降下する。


「やっちまいな」


 ベリアが呟くようにそう告げる。


 久隆は降下していき、斧が首に達する。


 久隆の斧はドラゴンゾンビの首を完全に切断した。首を失ったドラゴンゾンビが藻掻き暴れる。


「やったんじゃないのか!?」


「相手はゾンビだよ。タフに決まってる」


 ブレスを吐くことはなくなったが、それでもドラゴンゾンビは暴れまわっている。その巨体が暴れまわるのに久隆たちは退避を余儀なくされる。


「どうするんだ!?」


「落ち着きな。頭の魔力的パスは潰したんだ。あれがただの死体に戻るまで待っていればいい。それまでの間は逃げ回るしかないがね」


「最悪だ」


 ドラゴンゾンビの動きは先ほどより素早くなり、辺り一面に破壊をもたらしている。ダンジョンの壁を破壊し、階段を破壊し、目につくもの全てを破壊している。


「さあ、逃げろ、逃げろ。もう少しで勝利だ」


 ベリアはそう告げて久隆とともに逃げ回る。


 ドラゴンゾンビは何で周囲を知覚しているのかもはや完全に分からないが、久隆たちを追いかけてくる。破壊を振りまきながら、久隆たちに迫ってくる。


「追いつかれるぞ!」


「『凍れ、大地』」


 ベリアがそう唱えると、ドラゴンゾンビの足元が凍り付き、ドラゴンゾンビの動きが一時的に止まる。本当に一時的に。


 すぐにドラゴンゾンビは氷の足枷を破壊し、追跡を再開する。


「あの魔法、もう1回使えないのか?」


「あたしの魔力量にも限度って物があるんだ。無茶言わないでくれ」


 久隆とベリアはそう言い合いながらドラゴンゾンビから逃げ回る。


「お前に死なれたら、全て終わりだ。何としても逃げ切るぞ」


「言われるまでもないさ」


 ドラゴンゾンビから逃げ回ること20分。


 ドラゴンゾンビの動きが次第に緩やかになっていき、ついにドラゴンゾンビは地面に平伏すようにして倒れた。


「よしっ! やったぞ!」


「やったねえ。まさかふたりでドラゴンゾンビに勝てるとは思わなかったよ」


 達成感を感じる久隆と呆れたようにそう呟くベリア。


「あんた、付呪がなくてもかなり強いだろう? レベルを見せてみなよ」


「ああ。好きにしてくれ」


 ベリアがレベルを覗く。


「レベル11。こいつは凄いステータスだね。常識外れにもほどがある。そりゃあ、ドラゴンゾンビの首を断頭台で切り落とせるわけだよ」


 ベリアは納得したように頷く。


「そういうお前こそ、ここまでほぼ単独できたんだろう? どうやったんだ?」


「基本は『姿隠しの外套』で身を隠して進む。エリアボスとかモンスターハウスとかどうしようもない場合のみ交戦。交戦も一撃決めたら即下の階に移動。その繰り返しだよ。大したことはしていない」


 事実、部下をふたり死なせちまったしねとベリアは言う。


「それでも大したもんだ。この辺りまで単独で来れるなんて補給も何もなかっただろう? 何を食ってたんだ?」


「魔法ゴケ。ひたすらそればかりさ。どうにかなりそうだったけど、あたしが最下層にいかない限りは、魔族たちは全員このダンジョンで干からびるしかないと思っていたから、必死だったよ」


 そこでベリアは久隆を見る。


「あんた、人間だろう? それも異世界の人間。どうしてあたしたちの心配を?」


「人道的見地からの支援だ。まあ、余計なおせっかいだよ。お前らは必要ないというかもしれないけれど、それでも助けずにはいられなかった。レヴィアは元気にしてるぞ。お前のことを酷く心配している」


「陛下が、か。陛下には悪いことをしたね。他の近衛騎士や宮廷魔術師団と合流するってことも考えたんだけど、それだと時間がかかり過ぎると思ったんだ。ちょっと潜れば、ダンジョンコアまで到達できると思ってね。だけど、思った以上にダンジョンが深くてこのざまさ。挙句は悪魔にとっ捕まるし」


「悪魔?」


「ダンジョンコアと一緒にいた小娘だよ。あれは悪魔の中の悪魔。大悪魔だ。そうとう危険な悪魔だよ。あれがダンジョンコアに力を与え、ダンジョンを異世界に飛ばしたんだ。まあ、もう奴は出てこないだろうけれどね」


「そうか」


 ラルは何を思って怯えた少女の振りをして、久隆についてきたのだろうと思う。


「地上に、と行きたいが階段がぶち壊されている。再構築を待つしかない。それまでいろいろと聞かせてくれ」


「あんたもあたしにいろいろと聞かせてくれ」


「ああ。ついでに飯にしよう」


 久隆はバックパックを下ろし、災害非常食を取り出して温める。その様子をベリアは興味深そうに眺めていた。


「ほら。熱いから気を付けろ」


「こいつは凄い。日持ちするのかい?」


「ああ。災害が起きたときのための非常食だ」


「へえ。これは軍隊でも使えそうだ」


 軍隊で使えたから民間でも使うようになったのだとは久隆は言わなかった。


「うん! 美味い! 魔法ゴケばかり食っていたから普通の食事には涙が出るよ。本当だよ? 本当に美味い。これぞ食事だ。魔法ゴケは食事じゃない」


「ああ。上層にいる連中はこれを食ってる」


「アガレスたちは無事なのかい?」


「一定数は。かなりの数が死んだが、生き残りも多い。生き残りはアガレスの下に集まって、ダンジョンを掃討しながら、兵站線を確保している」


「へえ。やるもんだね」


 ベリアは食事の方が忙しそうだった。


「あんたの部下のフルフルとマルコシアは道を切り開いている。ダンジョンをここまで深く到達できたのは彼女たちのおかげだ。それからレヴィアのおかげでもある」


「陛下まで戦闘に加わってるのかい!?」


「そうだ。レヴィアの活躍は凄かったぞ。エリアボスやモンスターハウスでも大活躍だ。凄いもんだよ」


「勘弁しておくれよ。死んだ前魔王陛下と王妃様に言い訳できないじゃないか」


「お前がひとりで潜り続けたことも原因のひとつだぞ?」


 ベリアが額を押さえるのに、久隆がそう告げる。


「あたしはあたしの仕事をしていただけだ。あたしがダンジョンコアに到達すれば、このダンジョンを元の世界に戻せる。そうなれば応援だろうと何だろうと自由に呼べる。あたしさえダンジョンコアに到達できればよかったんだ」


「その行動のせいで大勢が迷惑したぞ」


「悪かったよ。あたしもこうなるとは思いもしなかったからね」


 ベリアはダンジョンはせいぜい50階層くらいだろうとみていたそうだ。


 それが100階層を超えるもので、それに気づいたときには既に引き返せなくなっていた。彼女がいうにはそういうことだった。


「陛下たちはどこら辺まで来ているんだい?」


「95階層ではぐれた。モンスターハウスは97階層だ」


「ってことはこっちからいくしかないね」


 食事を終えたベリアがゆっくりと立ち上がる。


「90階層はリザードマンと人狼の組み合わせだぞ」


「知ってるよ。どうにかするさ」


 久隆たちは待つ。ダンジョンが再構成されるのを。


……………………

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― 新着の感想 ―
[一言] ようやっと目的の一つ………合流してないし安全域まで戻ってないからその半分ぐらいか。
[気になる点] 100階層まで丁寧に描写されたのは良いとしても戦闘パターンがワンパターン化し過ぎていてダレてると感じました。(良い代案提示出来ないので申し訳ない) 私はこの物語面白いと思ってますし、き…
[良い点] 最下層ボスを倒して更に上に上がるのはちょっと予想外。 どうなるかな。
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