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ドラゴンゾンビ

……………………


 ──ドラゴンゾンビ



 ラルがその言葉を言い放った次の瞬間、久隆たちの視界が暗転した。


 そして、元に戻る。


「ベリア。不味いことになっている」


「分かるよ。とても不味いことだってことはね」


 腐敗した肉の臭いがし、それが近づいてくる。


 現れたのは一部の肉が腐り落ち、骨が見えるようになったドラゴンだった。どういう手段で久隆たちを感知しているかは不明だが、間違いなく、久隆たちに向かって進んできている。


「お前は逃げろ、ベリア。お前は全員の希望だ」


「逃がしてくれる相手だと思うのかい?」


 ベリアはそう告げて杖を構える。


「足掻けるだけ足掻いて、奴を墓場に埋葬してやろう」


「分かった。援護を頼む」


「付呪かい?」


「ああ。フルフルと一緒に行動していたと言えば分かるか?」


「あの子は優秀だからね。分かったよ。『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』」


「助かる」


「狙うなら頭だよ。奴の魔力的パスは頭部に集中している。頭を狙えば、奴を倒せるかもしれない」


「かもしれない?」


「確証はどこにもない。ドラゴンゾンビを倒した例があまりに少ないから」


「笑えないな」


 そう言いながらも久隆は迫りくるドラゴンゾンビと対峙していた。


「──行くぞ」


 久隆がドラゴンゾンビめがけて突撃する。


 ドラゴンゾンビはその朽ちかけた体を動かし、久隆を踏み潰そうとする。だが、動きが鈍く、攻撃は空振りに終わった。久隆は地面に落ちてきた腕を伝ってドラゴンゾンビの体をよじ登っていき、ドラゴンゾンビの頭を目指す。


 ドラゴンゾンビは羽虫を払うように腕を振るが、久隆は斧を突き立てて、踏ん張った。ドラゴンゾンビは未だに身を振るうようにして、久隆を振り落とそうとしているが、まだ久隆は保っている。


「『貫け、氷の矢』」


 そこでベリアからの支援攻撃が叩き込まれた。


 数百発の氷の矢が次々にドラゴンゾンビの体を貫いていく。


「援護に感謝する!」


 久隆は一気にドラゴンゾンビの体を走り抜け、頭部を目指して突き進む。そして、頭部に向けて斧を突き立てた。


 だが、ドラゴンゾンビは意に介した様子がない。平然と久隆を頭の上からはたき落とそうと手を伸ばしてくる。久隆はそれを回避しながら、何度も、何度も、何度も、ドラゴンゾンビの頭に斧を叩きつける。


 だが、ついに久隆はドラゴンゾンビの頭から振り落とされた。久隆は受け身の姿勢を取って衝撃を体全体に逃し、負傷を防ぐ。


「畜生。頭が弱点じゃなかったのか?」


「頭を切り落とさないと無理だろうね」


「魔法では?」


「ドラゴンは高い魔法抵抗を持っている。ゾンビになってもそれなりの抵抗を」


「じゃあ、俺がやるしかないってことか」


「できる限りの援護はする。『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士にさらなる力を』」


 ベリアは久隆に付呪の重ね掛けを行う。


「行ってこい。私は魔法で援護する。奴はブレスも使うから用心しろ」


「了解」


 久隆は再びドラゴンゾンビの頭を目指す。


 そこでドラゴンゾンビが大きく口を開いた。


「『土の盾よ』」


 ベリアの詠唱で久隆の前のコンクリート製のような壁が現れる。


 次の瞬間、ドラゴンゾンビから放たれたブレスがその壁を直撃し、壁が熱されて行く。ブレスは10秒ほど続き、そこで途絶えた。


「援護が適切だ」


 前に前衛と組んだことがあるのだろう。ベリアの支援はどこまでも的確だった。


 久隆はブレスが去り、壁が消えた時点で走り出す。


 そして、一気に跳躍してドラゴンゾンビの肩に這い上る。


 ドラゴンゾンビは再び久隆を払い落そうとするが久隆は耐える。斧を深々と突き立て、腐肉にしがみつく。


 ドラゴンゾンビは身をゆすったり、腕を振るったりするが、久隆はそれに耐えてドラゴンゾンビの体を登り、頭を目指す。


 次は首を。頭をドラゴンゾンビから切り離す。


「『衝撃を』」


 久隆を振るい落とそうとするドラゴンゾンビの頭に爆発が起きた。


 ドラゴンゾンビは一時的に行動不能になり、その隙に久隆が駆ける。


 久隆はドラゴンゾンビの首を見定め、斧を突き立てる。ドラゴンゾンビは未だに爆発の衝撃の混乱している。今の内だ。


 ドラゴンゾンビの首をめがけて何度も、何度も、斧を振り下ろし、久隆はドラゴンゾンビの頭と胴体を切り離そうとする。


 ドラゴンゾンビはついに混乱から回復し、自分を傷つけている小さな羽虫──久隆を首から振り落とそうと大きく首を振るった。久隆は振り回されるように右に、左にと揺さぶられ、ついに吹き飛ばされる。


「大丈夫かい」


「大丈夫だ。まだやれる」


「そうでないとな」


 ベリアは杖をドラゴンゾンビに向ける。


「『大地貫く杭を』」


 ベリアの詠唱で、ドラゴンゾンビが土の杭に打ち付けられ、地面に固定される。


「今のうちだよ」


「いいアイディアがある」


 久隆は自分が叩きつけられた螺旋階段を見上げると、そこを駆け上り始めた。


「おいおい! 私をおいていくつもりか!?」


「違う。紐なしバンジーだ」


 久隆は十分な高さがあり、ドラゴンゾンビの首を狙える位置に立つと、そこから一気に飛び降りて、ドラゴンゾンビの首を斧で狙った。


 狙いは半分は成功。ドラゴンゾンビの首は深い傷を負い、裂けた傷口から腐った血が流れ落ちる。だが、完全に首を切断するには至らなかった。


 久隆は落下の衝撃に備え、空挺降下訓練で教わった通りの受け身の姿勢を取る。


「畜生。もう少しだったんだが」


「あんた、いつもあんな戦い方してるのかい? 命がいくつあっても足りないよ」


「ああ。自分でもそう思う」


 久隆はただ笑って、ドラゴンゾンビを見据える。


 ドラゴンゾンビは口を開き、ブレスの姿勢に入る。


「来るよ。隠れてな。『土の盾よ』」


 ブレスが飛んでくると同時に土の盾が久隆たちをブレスの高熱から守った。


「あの野郎。どういう仕組みで炎を吐いているんだ?」


「魔法だよ。ドラゴンは高度な魔法の使い手。脳みそが腐ったゾンビはブレス程度しか打てないが、そうでないドラゴンはもっと高度な魔法を使う」


「魔法か。魔法、魔法、魔法。どうにかして、奴の首を叩き切る魔法はないものか」


 久隆は頭を全開に働かせる。


「そうだ。さっきの土の盾はどこにでも出現させられるのか? 長さの調整は?」


「できるよ。何をするつもりだい?」


「決まってる。奴の首を叩き切る」


 久隆はベリアに作戦を説明する。


「賭けになるよ」


「元からそういうものだ」


 ベリアが渋い表情を浮かべるのに、久隆はそう返した。


「では、頼むぞ。合図は必要か?」


「こっちの魔法にそっちが合わせな。こっちもあんたの動きに合わせる」


「よし。行くぞ」


 久隆は再び、ドラゴンゾンビに向けて走る。


 そこで3度目のブレス。だが、今回は走り抜けて回避する。


 そして久隆はドラゴンゾンビの首がある真下に来た。


 それと同時に久隆の足元から土の壁が一気にせりあがる。


 またドラゴンゾンビの切断されかかった首の場所にも土の壁が隆起し、まるでギロチンにかけられる囚人のようにドラゴンゾンビの首を固定した。


「こいつで終いだ」


 久隆は高らかとせりあがった壁から一気にドラゴンゾンビの首をめがけて降下する。


……………………

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― 新着の感想 ―
[一言] この物語のダンジョンは侵入者を糧にせず、自前のリソースしか使えないみたいだけど それなら、ダンジョンの営業を廃業して、こっそりと普通の洞窟になった方が長生き出来そうなんですけど
[一言] ダンジョンコアちゃん、ドラゴンゾンビのところに送るなら主人公とベリアさん片方ずつにするべきだったのでは…この二人セットになるとドラゴンゾンビすら…w
[良い点] ソロは無理でも、べリアさんとならコンビで100層クリアできるっぽい? 魔王様置いてけぼり(・∀・`)
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