リザードマンハウス
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──リザードマンハウス
いよいよ86階層のモンスターハウスに挑むことになった。
「全員、準備は万端か?」
「いけますよ!」
久隆が尋ねるとマルコシアたちが拳を突き上げる。
「作戦はこうだ。戦闘地域はこの一本の廊下。裏手から挟撃される恐れのない場所で戦う。レヴィアとマルコシアはフルフルが防具劣化の付呪をかけてから攻撃開始。フルフルはまずは対抗魔法でリザードマンたちが強化されるのを阻止してくれ」
「了解です」
フルフルが頷く。
「フォルネウスは俺と一緒に戦線を支える。相手は付呪で強化される恐れもある。それでもやれるか?」
「やれます!」
フォルネウスは威勢よく述べる。
「サクラはリザードシャーマンを発見し次第狙撃してくれ。1体でも多くのリザードシャーマンが消えれば、戦闘はそれだけスムーズに進むことになる」
「了解」
サクラが頷いた。
「それでは作戦を確認したところで86階層に挑むぞ。気合を入れろ」
「おー!」
久隆たちは86階層に降りていく。
久隆は降りてすぐに索敵を行う。
「リザードマン、60体以上かなりの修羅場になりそうだ」
久隆は憂鬱そうにそう告げる。
「行きますか?」
「ああ。まずは廊下まで進出。それから廊下でリザードマンたちを迎え撃つ」
久隆はそう告げて、レヴィたちを引き連れ、廊下まで進出した。
廊下の先ではリザードマンで溢れるフロアがある。
「いくぞ。鬨の声を響かせろ!」
久隆たちが己に気合を入れるように叫ぶ。
その叫びにリザードマンたちが一斉に反応した。
「フルフル! 対抗魔法だ!」
「『そなたには魔法の力は及ばず、その魂は変質することなし!』」
フルフルが対抗魔法を先頭のリザードマンたちに行使する。
「フォルネウス! フルフルのリキャストタイムが過ぎるまで押しとどめるぞ!」
「了解!」
リキャストタイムは無視することもできる。実際にフルフルはリキャストタイムを無視して複数の付呪を行使してきた。だが、それは激しい魔力の増減を生み、疲労へとつながるのだ。倒れるほどの疲労へと。
だから、久隆はリキャストタイムを厳守させることにした。確実に物事を進めたい久隆らしい選択肢だった。
「付呪がかかってなければそこまでの相手ではない」
リザードマンはハルバードで武装していたが、そのような武器はダンジョンには適さない。すぐ隣に友軍がいる場合は特にだ。
久隆たちはリザードマンはハルバードを振り回すのを受け止め、弾き、さらには回避し、カウンターを叩き込む。久隆はリザードマンの首を狙い、フォルネウスはリザードマンの眼球を狙う。
フォルネウスも行く度もの実戦経験を経て、ベテランの兵士になっていた。間合いの取り方も、相手の動きの予想も、近衛騎士の中では1、2位を争うほどになっていた。
彼の武器はリザードマンに対しては向かないが、それでも彼はやれることをやっている。彼は兵士としても義務を果たしている。
「リザードシャーマン視認。数1体」
「狙撃可能なら狙撃しろ」
リザードシャーマンがこのモンスターハウスで1体限りとは思えない。とにかくリザードシャーマンは潰していく。それも確実に。
「狙撃」
リザードシャーマンは1体倒れた。だが、まだまだリザードシャーマンはいる。
「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」
そして、リキャストタイムが過ぎ、フルフルが付呪を叩き込まめるようになった。
「レヴィア! マルコシア! 叩き込め!」
「了解なの!」
レヴィアとマルコシアの魔法が炸裂する。
リザードマンは一気に大打撃を受け、密集していたこともあって、10体近くが死亡した。打撃を受けたのは20体にも及ぶ。
「押すぞ!」
久隆はリザードマンたちが態勢を整えなおす前に、斬り込む。
首を刎ね、頭を潰し、眼球を貫き、一気に戦線を押す。
「新しい群れのお出ましだ。フルフル!」
「了解です!」
フルフルが対抗魔法の付呪をかけ、久隆たちが次の攻撃までの時間を稼ぐ。
防具劣化の付呪が施されてないリザードマンたちはかなりの脅威だ。
兜と鎧のある頭部はまず狙えない。手の切断も難しい。狙うのは首しかない。
首しか狙えないということはリザードマンたちも理解している。だから、リザードマンの防御は的確だし、反撃も早かった。
ダンジョンは最下層に近づけば近づくほど、悪意が増してくる。
オーガやミノタウロスは今思えば大した敵ではなかった。リザードマンという全身装甲に覆われた相手に比べれば遥かに楽な敵だったのだ。
それでも久隆たちは戦う。道を切り開くために、レヴィアたちをヴェンディダードに帰すために。彼らのための久隆は戦う。
何故か? それは今も久隆は自分のことを軍人だと思っているからだろう。
馬鹿げた話だが、久隆にはやはり英雄願望があるのだ。あれだけ英雄を嫌った男だが、心のどこかでは誰かのためになりたい。英雄になりたいと思っているのだ。
久隆の戦う理由はエゴ。久隆はそれを少しばかり自覚しているが、気にしていない。戦う理由がエゴだろうが結果さえ残せばいいのである。
久隆にとって結果とはやはりレヴィアたちのヴェンディダードへの帰還に他ならない。それこそが久隆の目的であり、レヴィアたちの目的なのだ。
「リザードシャーマン。2体目を確認」
「仕留めろ」
「了解」
サクラはかなりの初速で放たれた矢でリザードシャーマンの頭部を貫く。生きている武器は成長を続けており、今は全くの別物に成長している。そのうち血でも吸い出すんじゃないですかねとサクラは冗談めかしていっていた。
「付呪、行けます!」
「叩き込め! レヴィアとマルコシアも続け!」
フルフルの付呪が叩き込まれ、レヴィアとマルコシアの魔法が猛威を振るう。
15体ばかりのリザードマンが倒れ、合計で25体ほどのリザードマンが打撃を受けた。
加えてレヴィアの魔法で漂い始めた冷気がリザードマンたちの動きを鈍らせる。
ここぞとばかりに久隆とフォルネウスが攻撃に出る。
久隆とフォルネウスの攻撃、フルフルの対抗魔法、久隆とフォルネウスの防御、フルフルの防具劣化の付呪、レヴィアとマルコシアの魔法。
この繰り返しで、リザードマンは確実に数を減らしていき、追い込まれて行った。
「ラスト5体!」
久隆は一気に押し込む。
斧を振るって首を刎ね飛ばし、頭を叩き割る。
サクラも狙撃で援護し、フォルネウスも戦う。
そして、リザードマンは1体もいなくなった。
「やったな」
「やったの!」
久隆が額の汗を拭うのにレヴィアが飛び跳ねる。
「全員の連携の勝利だ。全員が上手く連携できたからこそ勝利できた。この捜索班は最高のチームだ。俺は誇りに思う」
不可能だと思われたことを成し遂げた彼らに久隆がそう告げる。
「そうですね。全員の勝利です!」
「みんな頑張ったのね!」
さあ、86階層のモンスターハウスは撃破した。
残り4階層で90階層に達する。
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