3体
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──3体
久隆たちは小休止を終えて、85階層に潜った。モンスターハウスまではあと1階層だ。
久隆は85階層に降りてすぐに索敵を始める。
「リザードマン21体。3つの群れに分かれている。厄介だな」
リザードマンの群れは7体が3つの群れに分かれていた。
恐らくはそれぞれの群れにリザードシャーマンがいる。
「とりあえずは偵察だ」
久隆はそう告げて無人地上車両を展開させる。
音もなく無人地上車両はリザードマンの群れに近づき映像を送る。
「リザードマン6体リザードシャーマン1体。武器は短剣と盾」
その調子で偵察は続いた。
「ふうむ。それぞれの群れに1体のリザードシャーマンと6体のリザードマンか」
リザードシャーマンの数が増えたのは面倒だ。だが、群れひとつ当たりのリザードマンの数はさほど多くはない。隠密である程度はやれるだろう。
「では、サクラ、フォルネウス。狙撃チームは3つの群れのリザードシャーマンを狙撃しなければならない。できるか?」
「なんとかしましょう」
「頼むぞ」
サクラの狙撃が失敗した場合について考える。
フルフルの付呪しかないだろう。対抗魔法を使わなければ、リザードシャーマンが付呪をかけたリザードマンを相手に戦うなどとてもではないが難しい。付呪をかけたリザードマンは久隆ですら圧倒される。
正面から戦うのはリザードシャーマンを排除してから。それか対抗魔法を行使してから。そうでなければ、久隆が押され、戦線が崩壊しかねない。
戦線の崩壊はレヴィアたちを危険にさらすことを意味する。
「久隆、久隆。いざとなったらレヴィアが魔法で援護してあげるのね」
「そうだったな。お前の魔法は強力だからな」
レヴィアの凍結魔法を使えば、いくら付呪のかかったリザードマンであろうとも動きは鈍るだろう。そこを叩くという手もあった。
「いずれにせよ、油断はしないように。俺も細心の注意を払う」
久隆たちは打撃チームと狙撃チームに分かれて、ひとつ目の群れに向かう。
久隆は可能な限り隠密で仕留めていくためにリザードマンを誘導し、仕留める。サクラから狙撃可能という合図が来るまで1体ずつ仕留めていく。
「狙撃チームより打撃チーム。狙撃可能」
「やれ」
久隆は命令を下した。
リザードシャーマンが倒れ、リザードマンたちが警報の鳴き声を上げる。
「ここからは時間との勝負だ。サクラ、確実に潰せ!」
『了解』
可能な限り、自分たちの方向に敵を引き付け、サクラたちによる狙撃のチャンスを作る。それが重要だ。
「フルフル。付呪を頼む」
「了解です。『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ』」
フルフルの詠唱でリザードマンたちの防御が落ちる。
「レヴィアたちは次の群れまで魔法は控えろ。俺が相手する」
ひとつ目の群れの残りのリザードマンは全て久隆が相手した。この程度の数ならば問題にはならない。
問題は次に押し寄せてくるリザードマンたちだ。
付呪による効果を受けているならば、素早くサクラに狙撃してもらわなければ。
久隆はそう考えつつも戦闘音を聞きつけて襲来するリザードマンと対峙する。
「フルフルは付呪! レヴィアはその後に魔法を叩き込め!」
「了解なの!」
フルフルが付呪をかけて相手の防御を崩し、そこにレヴィアたちが魔法を叩き込む。いくつかの魔法は盾によって防がれたが、同時に盾も破損した。6体中3体が打撃を受け、2体が死亡した。盾の破損は4体だ。
そして、久隆が突撃する。
久隆の一撃を素早く防御するリザードマン。やはり付呪の影響を受けている。久隆の腕力でもびくともしない。
久隆は正面の戦線を維持すべく、それでもリザードマン相手に一歩も引かない。
リザードマンは連続した打撃を加えてくる。一発一発が素早く、重いが久隆は辛うじて耐え続けている。長剣を弾き返し、次の攻撃を躱し、ひたすら耐え続ける。
攻撃のチャンスは当然窺っている。だが、今のところ反撃の手はない。
『狙撃可能』
「やれ」
そんな中でサクラがリザードシャーマンを狙撃した。
リザードマンたちの速度が目に見えて低下する。
「さあ、勝負だ」
久隆は待ちかねた反撃のチャンス到来に一気に押し始めた。
リザードマンたちの首を叩き切り、頭を砕く。確実に致命傷となる一撃をリザードマンたちに与えていった。流石のリザードマンも付呪なしでは久隆のようなアーマードスーツ並みの人工筋肉の出力がある人間を相手にするなど不可能だった。
リザードマンは屠られ続け、瞬く間に壊滅する。
「次が来るぞ。フルフル!」
「はい!」
再びフルフルが付呪をかけ、レヴィアたちが魔法を叩き込む。
6体中2体が打撃を受けた。今回はリザードマンたちも防御をちゃんと固めたのだ。
そして、久隆とリザードマンたちが交戦する。
金属と金属のぶつかる激しい音が響く。やはり、付呪で強化されたリザードマンを久隆がそのまま相手にするというのは無理がある。こうなるとモンスターハウスでの戦闘は相当苦しいものになるだろうなと久隆は思った。
しかし、今は考えるよりも行動する時だ。
戦線を維持するためにリザードマンの猛攻を防ぎ続ける。一歩も引かず、戦線を守り続ける。リザードマンの攻撃は重いし、素早いが、久隆の身体能力ならば、辛うじて相手にし続けられるだけのものだった。
『狙撃可能』
「やれ!」
サクラからの報告に久隆が叫ぶ。
リザードシャーマンの狙撃に成功したのか、リザードマンたちが一斉に弱体化する。
久隆はそこを狙って斬り込んだ。
今後はリザードマンたちが押される番だ。リザードマンたちは久隆の猛攻にさらされ、相次いで倒れていく。彼らは撤退することも、降伏することもなく、必死に戦い続けたが、それは勝利に繋がらなかった。
最後の1体まで皆殺しにされ、リザードマンは壊滅。久隆たちは他に残敵が存在しないかを確認し、無事に壊走がクリアになったことを確かめた。
「クリアだ。なんとか勝てたな」
「レヴィアがもっと魔法を使っていれば、もっと楽に勝てたの」
「魔法に頼りすぎるのはよくない。魔法も限られたリソースで回しているものだ。その点、俺とサクラはリソースをそこまで消費しない。戦争もエコでいかなければならない時代だ。だが、次の階層では頑張ってもらうことになるぞ」
「モンスターハウスなのね」
戦争だろうと何だろうと物資も兵員も無限にあるということはない。
限りあるリソースを上手に使って、戦争を勝利に導くのが軍人の役割だ。物資も兵員も有限。配られた手札で勝負する。後は技術の問題だ。戦争を勝利に導くのは、カードゲームより複雑だが、相手と駆け引きをするという点では同じだ。
「小休止後に、モンスターハウスだ。いけるか?」
「いけるの!」
「よし。今は休め」
久隆はマットを敷き、レヴィアたちに休息を取らせた。
モンスターハウスという名の地獄はすぐ下の階層だ。
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