2体のリザードシャーマン
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──2体のリザードシャーマン
久隆は階段を降りてすぐに索敵を始める。
「リザードマンの数20体。群れはふたつに分かれている。偵察にかかろう」
久隆は無人地上車両を走らせ始める。
無人地上車両はリザードマンの群れのひとつに潜り込み、様子を探る。
「リザードシャーマンを確認。リザードシャーマン1体、リザードマン9体。武器は長剣のみ。次に行こう」
久隆は次の群れに無人地上車両を進ませる。
無人地上車両は音もなく進み続け、群れを偵察する。
「リザードシャーマンを確認。リザードシャーマン1体、リザードマン9体。装備は同じだ。さて、厄介な局面になったぞ」
想定していたリザードシャーマンが2体の場合だ。
部隊の運用をどうするべきか。久隆は頭を回転させる。
「サクラ。フォルネウスとの少数チームで狙撃だけは可能か?」
「無人地上車両の映像を見る限りでは可能です。ただし、リザードシャーマンを狙撃した時点で、敵は侵入に気づきます。いずれにせよ、どちらかのリザードマンたちとは正面から戦わなければならないでしょう」
「分かっている。狙撃だけで片付く問題じゃない。狙撃しつつ、戦闘を行う」
久隆は作戦を整理する。
「まずひとつ目の群れのリザードシャーマンを狙撃。その後、俺たちはその群れを殲滅するために正面から戦う。その間にサクラとフォルネウスはもうひとつの群れに向かい、リザードシャーマンを狙撃。敵が付呪をかける前に両方のリザードシャーマンを始末する。こういう計画だ」
「かなりタイトですね」
「分かってる。だが、こうでもしないと、リザードシャーマンが厄介だ。やつらが付呪をかけたリザードマンと戦うと思うとぞっとする」
サクラの指摘するようにかなりタイトな作戦だった。
誰かひとりがミスしても危うい。そして、狙撃チームに頼りすぎている。狙撃チームが失敗した場合の代替案がない。せいぜい敵が付呪をかける前にフルフルが対抗魔法をかける。その程度のプランしかないのである。
狙撃チームは負担が大きく、またリスクも大きい。
「やれるだけやってみようじゃないか。いざとなればフルフルの付呪でなんとか互角に戦う。危険は承知の上だが、危険を冒してでもやる価値はある」
「そうですね。やってみましょう」
最終的にサクラの同意を得て、作戦は実行に移されることになった。
まずは第一の群れに迫る。
狙撃チームは通路の右側から、打撃チームは通路の左側から、それぞれ迫る。
「打撃チームより狙撃チームへ目標視認」
『こちらも目標を視認するも、狙撃位置に付けず』
「こちらでどうにかする」
久隆はそう告げると、近くにあった石をリザードマンに投げつける。
リザードマンが注意を引かれ、3体のリザードマンがのそのそとやってくる。
久隆はその3体を瞬く間に仕留めた。首に斧を突き立て、首を刎ね飛ばし、完膚なきまでに相手を叩きのめした。
それから3体のリザードマンがいなくなってことに気づいたように他のリザードマンが移動してくる。チャンスだ。
『狙撃チームより打撃チーム。狙撃可能』
「やれ」
サクラの狙撃が開戦の合図となった。
リザードマンたちは自分たちが攻撃を受けているということに気づく。それと同時に久隆たちが正面から仕掛ける。
「打撃チームより狙撃チーム! 次の群れの狙撃に向かえ!」
『了解』
サクラたちが移動していく中、久隆たちはリザードマンに正面から戦いを挑んだ。
「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」
「『降り注げ、氷の槍!』」
「『爆散せよ、炎の華!』」
3人の魔法使いの放った魔法により、リザードマンが大打撃を受ける。
そして、いつものように久隆が斬り込む。
ここは久隆ひとりで戦線を支えなければならない。大変な仕事だが、この戦闘状態の中2名だけでリザードシャーマンを狙撃に向かっているサクラたちの方が大変だと思う。
この作戦で最もリスクを負っているのはサクラたちだ。2名だけの行動で、敵を叩くという。全く以て危険極まりない仕事ではないか。
それに比べれば久隆はレヴィアたちの支援を受けて戦える。かなり恵まれた状況で戦うことができるのである。
だからこそ、踏ん張れる。ひとりで同時に何体ものリザードマンを相手にしようともくじけずに戦い続けることができる。
久隆は頭を冷静に働かせたまま斧を振るい続ける。
リザードマンの第一の群れは久隆とレヴィアたちの努力もあって迅速に殲滅された。だが、もうひとつの群れのリザードマンたちが迫る音がする。
『狙撃チームより打撃チーム。第二の群れのリザードシャーマンを狙撃した』
「狙撃チーム、ご苦労。可能ならば合流してくれ」
『了解』
これで敵のリザードシャーマンは全滅だ。通常のリザードマン──いや、鎧付きリザードマンでもなんとか殲滅することはできるだろう。
事実、殲滅は容易だった。
レヴィアたちの魔法が叩き込まれ、久隆が斬り込むことでリザードマンの群れは一挙に殲滅されてしまった。
「クリアだ」
最後に階層の隅々まで敵を捜索した久隆が宣言する。
「やったのね!」
「ああ。やった。だが、やはりまだ分からないことが多い」
リザードシャーマンの付呪を受けたリザードマンはどれぐらいの脅威なのか。リザードシャーマンは付呪以外の魔法も使うのか。リザードマンたちはリザードシャーマンを守ろうとはしないのか。
「お疲れ様です、久隆さん」
「お疲れ様だ、サクラ。そっちの方が苦労しただろう」
「狙撃そのものは容易でしたよ。リザードシャーマンは最後尾からついていくのでそこを狙えば他のリザードマンにも気づかれずにリザードシャーマンを始末できます」
「リザードマンたちはリザードシャーマンを守ろうとはしないのか?」
「しないみたいですね。こちらが狙撃しても無反応でした」
「ふうむ。やはり魔物に知性はないのか……」
これまでの魔物たちも知性は窺えなかった。侵入者を見つけたら飛びかかってくる。それだえけだ。そういう意味ではしてにしても脅威にはならなかった。
「問題はリザードシャーマンが生き延びて、付呪をかけた場合の想定だな。フルフルの付呪並みの強化されると、相手にできなくなる」
付呪の重要性は久隆も理解している。付呪ひとつで戦局が左右されることも。
「一度、敢えて付呪をかけさせますか?」
「リスクが高い。それに時間的余裕もない。だが、モンスターハウスでぶつけ本番になるのは望ましくないな」
モンスターハウスには間違いなくリザードシャーマンが複数いる。そして、久隆たちにはそれら全てを仕留め切るような余裕はないだろう。
となると、モンスターハウスで付呪のかけられたリザードマンと戦うのはぶつけ本番になるわけである。
「やはり試すべきだと思いますよ。私がすぐに狙撃できる位置に就きますので」
「分かった。次の階層では試してみよう」
久隆たちは次の階層──84階層に進む。
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