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80階層以降

……………………


 ──80階層以降



 イポスたちはカレーを食べてから久隆たちとともに80階層に戻った。


 70階層に残る2名は70階層に残り、イポスたちとは80階層まで潜る。


「おお。久隆殿。皆の者は風呂に入れただろうか?」


「入れた。これから物資補給に来た魔族を風呂とセットで癒していこうと思う。イポスが言うには太陽の光を浴びれないことで体調を崩しているものもいるのだろう?」


「ううむ。まさにその通りだ。やはり太陽の光は必要なようだ。だが、久隆殿。それではそちらの負担になるのではないか? 今でも久隆殿には迷惑をかけている。これ以上となると流石にいいのかと思ってしまう」


「乗りかかった船だ。最後まで面倒は見たい。それにそちらの戦力が脆弱になって困るのは俺たちも一緒だ。戦力維持の観点からしても、そちらには協力しておきたい」


「ありがたい。迷惑をかけるがよろしく頼む」


 アガレスはそう言って頭を下げた。


「偵察結果はまだ出ていないか?」


「出ている。報告書を渡そう」


 アガレスはそう告げて翻訳魔法のかけられた報告書を久隆に見せる。


「80階層以降は鎧付きリザードマンが出没。リザードマンシャーマンも存在。モンスターハウスは86階層。90階層のエリアボスはサイクロプス」


 久隆が報告書を読み上げる。翻訳魔法に間違いがあっては困る。


「その通りだ。リザードマンの強化個体が出没する。それに加えてリザードマンシャーマンも。そして、90階層ではサイクロプスだ」


「ふむ。リザードマンの強化個体はともかくとして、リザードマンシャーマンというのは面倒だな。魔法を使うリザードマンということだろう?」


「そうなる。リザードマンは魔法を駆使して戦うこともある魔物だ。油断しないでくれ。あいつらの魔法は強力だ」


「迅速な排除が必要だな」


 戦術を練り直さなければなるまいと久隆は思った。


「それからサイクロプスだが、これは一体どのような魔物だ」


「巨人だ。久隆殿も今までミノタウロスのような巨人と戦ってきただろう。だが、それを上回る巨人だ。背丈は8メートル近くあり、ダンジョンの壁ですら素手で容易に破壊する。そんな化け物が棍棒で武装して、90階層にいるのだ」


「それは面倒だな……」


 流石の久隆も8メートルも背丈のある巨人と戦うとなると、どうしていいのか分からなくなる。ここには魔法か、近接戦闘武器しかないのだ。


 もし、久隆たちが1、2両の戦車の増援を受けていれば話は変わっただろう。


 巨人は確かに恐ろしい。巨大で、見るものを圧倒する。だが、ある意味では巨人は格好の的なのである。


 戦車は巨大な兵器だ。だが、技術者たちは戦車を巨大化して作ろうとはせず、より車高の低く、小さな戦車を目指す。何故ならば大きければ大きいほど、敵の砲弾が命中する可能性は高くなるからである。


 的が大きければ当てるのは簡単。単純な話だ。


 アニメや映画では巨大兵器がもてはやされるが、現実の兵器開発は小型化へと向かっている。戦車においてはコンパクトにすることのメリットが多い。小さければその分十分な装甲がつけられるし、移動の際のインフラも整備しなおさなくていいし、そして敵の弾が命中する可能性も低くなる。いいことづくめだ。


 サイクロプスについても同じこと。


 大きければ大きいほど的になる。致命的な一撃を加える戦車砲の砲撃。いや、対戦車兵器の一撃でも重機関銃の攻撃でもいい。それらがあるならば、攻略は容易い。


 しかし、それらがないのがこのダンジョンだ。


 戦車など持ち込めるはずもないし、対戦車兵器や重機関銃は手に入らない。あるものでどうにかしなければならない。


 またサクラを頼ることになるが、彼女の一撃は強力だ。サイクロプスの頭部を上手くいけば貫けるかもしれない。あるいはレヴィアかマルコシアの魔法。


 ここで役立たずなのは久隆とフォルネウスだ。流石の久隆とフォルネウスでも8メートルの巨体から繰り出される攻撃を受け止められるとは思えない。


 近接戦で相手にしようとしたものはことごとく潰されたに違いない。


「何とかしてみよう。90階層ともなればいい加減にべリアに追いついてもいいはずだ。偵察部隊からべリアについての報告は?」


「残念なら何もない。痕跡は全く発見できなかった。べリアがどこにいるのかについては未だ不明のままだ」


「どうなってるんだ」


「全く分からん」


 アガレスもべリアが少数で潜り続けていることに不安を抱いているようだった。


 不安と苛立ち。ベリアが足を止めて、その場にとどまってくれれば、久隆たちの懸念している問題は解決する。そこまで歩みを早くする必要もない。だが、ベリアはひたすら潜り続けているようであり、その行方は全く知れない。


 ベリアを確保しなければ、ダンジョンを元の世界に戻す術も失われる。


「ベリアについては引き続き、こちらで捜索し続ける次第だ。久隆殿たちは90階層の制圧をお願いしたい」


「任せてくれ。力を尽くそう」


 アガレスと久隆はそう言い合って、分れた。


 久隆はその足でレヴィアたちの下を目指す。


「久隆、久隆。みんな風呂に入れるって喜んでいるの!」


「それはなによりだ。士気が高まるのはいい」


 レヴィアはトトトとやってきてそう告げた。


「さて、80階層以降の情報が明らかになった。80階層以降は鎧付きリザードマンとリザードマンシャーマンが出没する。そして、エリアボスはサイクロプスだ」


 捜索班の全員が息をのんだ。


「マルコシア。お前の方から魔物について説明してほしい」


「はい。鎧付きリザードマンは超深度ダンジョン特有の魔物です。分厚い鎧と兜を被っています。そのまま破壊するのは困難でしょう。リザードマンシャーマンはリザードシャーマンと呼んだ方が適切ですね。これも超深度ダンジョン特有の魔物で、ゴブリンシャーマンやオークシャーマンと違うのは、相手も付呪の魔法を使うという点です」


 マルコシアがそう説明する。


「相手もこちらの防具を劣化させてくるというわけか?」


「いえ。防具の劣化などの魔法は使ってきません。友軍の身体能力ブーストを使ってきます。リザードマンたちの身体能力を上げてくるのです」


「それは厄介だな。今のところ、ギリギリで渡りあえているのに、身体能力をブーストされて、その上、相手は防具に身を固めているとは」


 リザードマンはこれまでノーマルの個体でも面倒だった。それが鎧に身を包んだ上に、リザードシャーマンの付呪まで受けるのであればかなりの脅威となる。


「何か対抗策はあるか?」


 魔物の専門家であるヴェンディダードの魔族たちならば、この状況を打破できる方法を知っているのではなかと思って久隆が尋ねる。


「対抗魔法の付呪をかけるという手があります」


「どのような魔法なんだ?」


 フルフルが言うのに久隆が尋ねる。


「相手の魔法を打ち消す付呪です。戦争では相手が自分たちに防具劣化などの付呪をかけてくるのを阻止するためにかけますが、ダンジョンではリザードシャーマンのようなものが、魔物に付呪をかけるのを打ち消すために使います」


「なるほど。それは有効そうな手段だな」


 だが、問題点もあるなと久隆は思った。


「だが、それだとフルフルの負担がさらに増加する。相手が防具で身を固めている以上、防具劣化の魔法も使わなければならないし、それに加えて対抗魔法もとなると」


 そう、フルフルに頼りすぎているのだ。


「大丈夫です。適度な休憩を挟んでもらえばいけます」


 フルフルはそう言って微笑んだ。


……………………

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[一言] まさか過労死フラグ
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