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ワイバーン戦

……………………


 ──ワイバーン戦



 いよいよワイバーンに挑む時がやってきた。


 あまり準備に専念し過ぎて、80階層までの階層が再構成されても困る。迅速に行動しなければならない。


 久隆たちは唐辛子爆弾を4つ準備した。2つはサクラの矢に装着し、残りは手投げ式として久隆が保持した。それから唐辛子スプレーはそれぞれが所持している。


「準備はいいな? 今から引き返すのは無理だぞ」


「いけるのね!」


 レヴィアたちの士気は上々。士気だけならば問題はない。


「サクラ。頼んだぞ」


「お任せあれ」


 サクラもあれから訓練を重ね、弾道のずれを理解した。


「後は実際にやってみるしかないか」


 ワイバーンを討伐しなければ、80階層より下には潜れない。


 べリアを追いかけ、ダンジョンコアに到達するためにもここは何としても突破しなければならないのだ。


「覚悟を決めるか」


 久隆はそう告げて80階層への階段を下り始めた。


 久隆の装備はいつも通りのものに加えて、ファストロープ降下のためのロープが準備されている。これを螺旋階段の柱に結びつけて、いざという場合はこれによって一気に地上まで降下するつもりだった。


 そうならないことを祈りたいが、現状不安要素が多く、準備は怠れない。


 久隆は階段を下りながらロープを巻き付け、そしてワイバーンの姿を確認する。


「ワイバーン視認。地上にいる。サクラ、やれるか?」


「もう少し距離を詰めてからの方がいいかもしれません」


「分かった。もう少し下ろう」


 そして、久隆のロープがしっかりと螺旋階段の柱に結びついたとき、サクラが合図した。攻撃開始の合図だ。


「狙撃可能」


「やれ」


 サクラが告げると同時に久隆か許可を出す。


 ここから先は運試しだ。


 サクラの矢が放たれ、ワイバーンの眼前に突き立てられる。


 何事かとワイバーンが首をもたげる前に久隆が点火スイッチを押した。


 唐辛子爆弾が炸裂し、釘や鉄片と同時に唐辛子エキスが撒き散らされる。


 顔面のそれが直撃したワイバーンが大混乱を起こす。顔面に鉄片を浴び、さらには追い打ちをかけるように唐辛子エキスを浴びたワイバーンは地上でもだえ苦しみ、のたうち回っている。


 今がチャンスだ。


「俺は先に降下する。レヴィアたちを連れてきてくれ!」


「了解」


 サクラはレヴィアたちを連れて螺旋階段を一斉に下り始め、久隆はファストロープ降下を開始した。地上でワイバーンがのたうっている今こそ、攻撃のチャンスである。


 久隆はロープをしっかりと握り、速度を調整しながら一気に地上まで降下する。ファストロープ降下は他のヘリやVTOL機からの降下方法と違って純粋に足と手の力だけで降下する。展開速度はもっとも早いが、その分危険性も高い。


 とは言え、久隆は海軍時代に何度もこの手の降下作戦を行っている。その感覚は鈍っていない。迅速に地上まで降下していき、地上に降り立った。


 ワイバーンは未だにのたうっている。唐辛子エキスは効果覿面だったようだ。もちろん、久隆が混ぜた悪意──釘や鉄片も少なからずワイバーンの顔面にダメージを与えることに成功しただろうが。


 唐辛子エキスの散布は一瞬のことで大気中にはもう唐辛子エキスの影響はない。久隆は地上で悶えているワイバーンに向けて突き進む。


 ワイバーンは敵の足音を聞いたためか、悶えながらも戦闘状態に入りつつあった。


 音を頼りに目標を探り、そこに向けて火炎放射を放つ。


「危うく丸焦げだな」


 久隆は火炎放射に備えてジグザグ移動していたために攻撃から逃れた。


 だが、ワイバーンは接近すればするほど、火炎放射の命中率が上がる。久隆は一度手前で止まり、じっくりと相手の出方を窺いつつ、攻撃のチャンスを窺う。


 ワイバーンは足音がしなくなったことで目標を見失い、どうしていいか分からず、また唐辛子爆弾の影響もあって混乱していた。


 そんなワイバーンに久隆は持ってきた別の唐辛子爆弾を投擲する。


 唐辛子爆弾はワイバーンの顔面を再び襲い、ワイバーンは悲鳴染みた雄叫びを上げる。普通の生き物ならばここで撤退することを選ぶだろうが、ダンジョンの魔物たちはあくまで侵入者を殺すために行動する。


 ワイバーンは四方に火炎放射を浴びせ、狂ったように動き回る。


 こうなると手に負えない。だが、時間稼ぎという任務には成功した。


「久隆! 今から魔法を叩き込むの!」


「やってやれ!」


 レヴィアたちが地上に到達した。これで戦闘準備は万端だ。


「『凍てつけ空気、全てを凍らせよ!』」


 レヴィアの覚えた魔法。温度を急速に低下させ、相手を凍り付かせる。


 ワイバーンはその魔法が直撃した。ワイバーンの動きが酷く鈍いものになり、火炎放射の威力が低下していく。効果は抜群だ。


「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」


「『爆散せよ、炎の花!』」


 続いてフルフルとマルコシアの魔法が叩き込まれる。


 ワイバーンの鉄壁の鎧が劣化し、マルコシアの魔法が頭部を直撃する。


 ワイバーンは相次ぐ爆発を頭部に受け、脳震盪を起こしそうになっていた。


 それでもなおワイバーンは戦う。


「やはり盾を持ってくるべきだったか?」


 レヴィアの魔法を浴びても、ワイバーンの火炎放射は依然して接近を許さない。


「久隆さん。こちらでワイバーンの気を逸らしますのでそのうちに」


「助かる、サクラ」


 サクラはワイバーンの斜め後ろから矢を放つ。


 矢は深くワイバーンの体に刺さり、ワイバーンは悲鳴のような雄叫びを上げて、サクラの方を向き、火炎放射を放つ。だが、レヴィアの魔法の影響で火炎放射はサクラに到達しない。


「『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」


 そして、フルフルがさらに久隆とフォルネウスを強化する。


「やるぞ、フォルネウス」


「はい、久隆様」


 久隆とフォルネウスが一気にワイバーンに肉薄する。


 久隆はワイバーンの頭部を狙って斧を振り下ろしたが、ワイバーンの鱗は砕けたものの、ワイバーンの頭蓋骨までは砕けなかった。だが、次に攻撃を加えたフォルネウスの攻撃はワイバーンの眼球を貫き、完全に目を潰した。


「予想以上に面倒だぞ」


「ええ。自分もサクラさんと同じようにワイバーンの気を逸らしますのでそのうちに久隆様が仕留めてください。久隆様ならばやれます」


「言ってくれるな……」


 誰かがあの化け物を仕留めなければならない。


 そして、その役割は久隆に託された。


 あの頭蓋骨の固さからしてサクラが射抜くのは無理だ。フォルネウスの攻撃も脳に達しなかった。となれば、久隆は何としても頭蓋骨を叩き割るしかない。


「『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士さらなる力を』」


 フルフルがさらに久隆に付呪を重ねる。


「やってください、久隆さん!」


「やっつけるの!」


 フルフルとレヴィアがそう告げる。


「おし。やってやろうじゃないか」


 久隆は斧を握りしめる。


「気はこちらで逸らします」


「そのうちに!」


 サクラとフォルネウスは矢と短剣でワイバーンの注意を引く。


「ここで畳む」


 久隆が一気に加速してワイバーンに迫る。


 唐辛子爆弾とフォルネウスの短剣で視覚を潰されたワイバーンは久隆に気づけず、久隆はワイバーンの懐に飛び込んだ。


 ワイバーンは何かを直観したのか羽をはばたかせ飛ぼうとしたが遅かった。


 久隆が跳躍し、飛び立とうとしたワイバーンの頭上から斧を振り下ろした。


 久隆の全体重と増強された筋力から生み出された打撃はワイバーンの頭を叩き割り、ワイバーンは飛び立つこともできずに地上に落下していった。


「やったか……」


 ワイバーンは膨大な金貨と宝石を残して消え去った。


「やったの、久隆! ワイバーンをやっつけたの!」


「やりましたね、久隆様!」


 レヴィアたちが喜びの声を上げて、久隆に駆け寄ってくる。


「ああ。なんとかなったな。予想より上手くいった。もっと悲惨な状況を想定したが、相手が馬鹿で助かったというべきか。まさかほとんど地上で相手になってくれるとは思いもしなかった。飛んでいればもっと厄介だっただろうに」


「飛ぶにも飛べなかったんですよ。視覚を潰されていますから、下手に飛ぶと壁に衝突して自滅することになります」


「そうか。確かにそうだな。サクラの奇襲が成功したのが何よりだ」


 マルコシアが告げると久隆がサクラの方を向く。


「よくやってくれた、サクラ」


「皆さんの勝利ですよ」


 サクラははにかむように笑った。


「では、勝利の知らせを届けよう。いよいよ拠点も80階層だ。少しはべリアに追いつけているといいのだが」


 久隆はそう告げて螺旋階段を上り、70階層を目指した。


……………………

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