リザードマンの猛威
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──リザードマンの猛威
ダンジョンに響く雄叫び。
リザードマンたちが一斉に反応して狭い廊下に殺到する。
「フルフル!」
「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」
フルフルの付呪が最初に叩き込まれ、リザードマンたちの鱗が一斉に劣化する。
「『振り注げ、氷の槍!』」
「『爆散せよ、炎の花!』」
レヴィアとマルコシアの魔法が炸裂し、リザードマンが一斉に攻撃を浴びる。
廊下に踏み込んでいた20体中15体が打撃を負い、その中の4体が死亡した。
それでもリザードマンは気にせず突っ込んでくる。
死を恐れない不屈の兵士。そう言えば聞こえはいいが、実際は何も考えていないだけだ。ただただ、単純に侵入者を攻撃するだけ。他の行動には関心を示さない。
だが、これこそ日本国防四軍のお偉方の欲しがった兵士ではないのか?
恐怖することなく、最期のひとりになっても戦い続ける。キラーマシン。
ナノマシンを頭に叩き込んだ日本国防四軍の兵士たちとリザードマンの間の違いとはなんだ? どちらの命令に忠実に最後のひとりまで戦い続けることを望まれて作られているではないか。
いいや。違うとも。日本国防四軍の兵士たちは己の意志で志願して軍人になった。切っ掛けがある。リザードマンはただダンジョンに生み出され、戦うためだけの人生を送るだけである。
久隆のように下手に生き延びて、戦後の暮らしを送ることもない。
久隆はリザードマンに襲い掛かる。
相手が長剣を振り下ろす前に、相手が盾を構える前に、久隆が打撃を叩き込む。
リザードマンの頭が叩き割られ、崩れ落ちる。久隆はリザードマンから長剣を奪い取り、後方のリザードマンめがけて投擲する。リザードマンは胸に長剣を受けて悶えながら、地面に倒れていく。
久隆たちが前衛として善戦している間に、レヴィアたちが第二撃の準備を整える。
「久隆! 叩き込むの!」
「了解! サクラ!」
久隆が目の前のリザードマンに回し蹴りを叩き込んで後方に強引に戦列を下げさせる。サクラの方もフォルネウスの相手しているリザードマンに矢を叩き込み、フォルネウスがその間に後退する。
「蜂の巣にしてやるの!」
「お役に立ちます!」
レヴィアとマルコシアの魔法が再び炸裂する。
ダンジョン内の温度が低下していくと同時に氷の槍が相手を襲う。今後は20体が打撃を受け、うち3体が死亡した。
「よくやった、レヴィア、マルコシア!」
久隆たちが再び戦闘を継続する。
久隆たちは何度だろうが突撃してくるリザードマンたちを相手に死闘を繰り広げる。
相手の頭を叩き割り、相手の攻撃を受け止め、相手の盾を破壊し、相手の首を刎ね飛ばす。何度も何度も打撃を加え続け、必死になって戦線を維持することに尽力する。
久隆たちの奮闘の甲斐あって、戦線は未だ維持されている。突破はされていない。久隆は攻撃を加え続け、レヴィアたちが次の攻撃を行うまで戦線を維持することに尽力する。フォルネウスとサクラも連携して敵を撃破している。
「フォルネウスさん。右から行きます」
「了解です!」
サクラが援護し、フォルネウスが押さえる。
サクラの援護は的確で、フォルネウスも思ったところに攻撃が届くのでやりやすかった。そこにはともに戦ってきた仲間だからこそ分かるものがあった。
「食らえー!」
久隆たちが必死に前線を維持し続ける中、再びレヴィアたちの魔法が炸裂する。突撃に集まったリザードマンの群れは密集しており、レヴィアとマルコシアの魔法をもろに受けた。降り注ぐ氷の槍と爆発がリザードマンたちを襲う。
だが、リザードマンたちもやられてばかりではなかった。盾を上に向けて構えたリザードマンたちはレヴィアの攻撃を辛うじて凌いだ。
そして、突撃に殺到する。
リザードマンの圧力はじりじりと戦線を後退させ、久隆たちを階段のあるフロアまで押し戻そうとする。久隆は懸命に戦い続け、戦線を維持しようとするが、フォルネウスが後退すると彼も下がらざるを得ない。
「フォルネウス! これ以上は下がれないぞ! 分かっているな!」
「は、はい!」
「死ぬ気で戦え!」
久隆が焦るのも当然と言えた。階段のあるフロアまで押し戻されたら、周囲を取り囲まれることになる。そうすればいくら久隆でも支えきれない。
なんとか廊下の戦線を維持しなければ、レヴィアたちが危険にさらされる。
「何としても突破させるな! 何としてもだ!」
久隆が吼え、リザードマンの頭が叩き潰される。
久隆はリザードマンの隊列を攪乱するように突撃し返し、リザードマンたちを次々に屠っていく。リザードマンの頭を潰し、首を刎ね、長剣を奪って心臓を貫く。
「久隆! 一旦引くの! 魔法を今度こそ叩き込んでやるの!」
「了解!」
久隆はリザードマンの頭を潰し、死体を蹴り飛ばすことで距離を取った。
「てりゃー!」
レヴィアたちの魔法が叩き込まれる。
リザードマンたちにはもう槍を防ぐ手はない。手の盾は最初の攻撃で破壊されている。リザードマンたちは攻撃が直撃し、次々に死亡していく。
「もうひと踏ん張りだ! 残り10体程度! いけるぞ!」
久隆は前に出る。
自分が前に出ることでフォルネウスも前に出れることを彼は知っていた。だが、前に出過ぎれば、側面を敵に晒し、2体のリザードマンを相手にしなければ行けなくなることも分かっている。
それでも久隆は前に出る。
時として前線指揮官が勇気を示さなければならない戦局もあるのだ。
それが今だ。
久隆が前に出て、フォルネウスが続く。
サクラが援護し、久隆が敵の隊列をかき乱し、フォルネウスが久隆の側面の敵を叩く。息の合ったコンビネーションができている。
それから戦闘は5分続いた。
レヴィアが最後の魔法を放ち、それでリザードマンは一掃された。
「何とかやったな」
久隆が残敵を確認し、リザードマンの群れが壊滅したことを確かめるとほっと安堵の息を吐いた。
「やったの! やったの! レヴィアが最後のトドメを刺したのよ!」
「ああ。よくやった。お前がMVPだ」
レヴィアが今回はもっとも多くの敵を屠っている。リザードマンたちに大打撃を与えた功労者だ。
「全員、相当疲れただろう?」
「疲れました……」
フォルネウスは久隆についていくのに精いっぱいで疲れ果てていた。彼の武器とリザードマンでは相性があまりにも悪い。
「私もです……」
同じくリザードマンとは相性の悪いマルコシアが声を上げる。
「よし。今日は一度戻るか?」
「それはダメなの! 80階層までの道のりを作るの!」
レヴィアが声を上げる。
レヴィアが疲労していないように見える原因については久隆には心当たりがあった。
コンバットハイだ。
レヴィアの攻撃はリザードマンたちに恐ろしく効果的だった。レヴィアが魔法を叩き込めば、リザードマンたちは次々に倒れる。魔法を放つたびに鮮明に効果が現れた。
だから、レヴィアは戦闘に興奮していたのだ。自分の攻撃が効果を発揮してるときほどテンションの上がるものはない。憎き魔物が次々と倒れていくのを見て、テンションが上がるのは当然のことだ。
だが、それは見せかけの元気だ。実際はレヴィアも消耗している。魔法をあれだけ使えば、魔力は激しく増減する。テンションが上がった勢いで今でこそ元気だが、今度はレヴィアがフルフルのように倒れるという事態になりかねない。
「分かった。なら、休憩してからだ。しっかり飯を食って休憩してから80階層まで進めるようにしておこう」
久隆はそう告げてマットを広げた。
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