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74階層へ

……………………


 ──74階層へ



 久隆たちは74階層に降りていく。


 そして、すぐさま索敵を行う。


「リザードマン18体。数が増えていっているな。この調子で増え続けられると面倒だが、恐らくはそうなるんだろう」


 ゴブリンからミノタウロスまで。深層に潜れば潜るほどその数は増えた。例外はエリアボス直前の階層だけである。あの罠のような静寂が、エリアボス前に横たわっている。


 リザードマンも増え続けるだろう。新種のリザードマンが生まれない限り。


「まずは偵察からだ」


 久隆はそう告げて無人地上車両(UGV)を展開する。


 無人地上車両(UGV)は74階層内の偵察を始める。


「ふむ。武器は短剣と盾。そして、6体のグループが3つ、と。厄介だな」


 無人地上車両(UGV)の送ってくる情報を見ながら久隆はそう呟いた。


 まず盾というのが面倒だ。そして、相手は攻撃の手数を増やせる短剣で武装している。盾と短剣の組み合わせはバランスがいい。相手の攻撃を受け止めながら、攻撃を連続できる。防盾に守られた機関銃のようなものだ。


「全員、先の73階層の反省点のことを忘れるな。迅速に動くぞ。いいな?」


「了解なの」


 久隆たちは一番他の群れから離れた位置にいるリザードマンに迫る。


 奇襲は重要だ。最初の第一撃は奇襲することにしている。奇襲によって早期に敵の群れを殲滅できれば、他の2つの群れのレスポンスに対する時間的余裕が生まれる。


 地形的に立て籠もれる場所はない。挟み撃ちを避けるには、迅速に敵の群れを殲滅するしかない。スピードだ。とにかくスピードが必要だ。


 こういう戦いもある。兵は神速を貴ぶという格言があるように、迅速な行動こそが勝利をもたらすこともあるのだ。ドイツ軍による電撃戦がそうだし、海外展開能力を向上させたアメリカ軍もそうだし、特殊作戦部隊による強襲も大抵は速度が命だった。


 久隆がいた日本海軍特別陸戦隊でも作戦は少人数によるもので、それで自分たちより数の多い敵と戦うことになる。航空支援などは受けられるとしても、自分たちより数の多い敵と戦うには奇襲と迅速な行動が重要となってくる。


 そして、迅速な行動と慎重な攻撃というのは矛盾しない。適度な緊張下で頭をしっかりと働かせつつ、何度も繰り返した訓練の経験で動けば、慎重に迅速な攻撃が行える。


 それが今の捜索班で可能か?


 不可能ではない。彼らはこの74階層に到達するまでに数多くの戦いを経験している。ミノタウロスとの戦いにおいても彼らは迅速かつ慎重な行動が行えた。経験は積んできた。実戦に勝る経験はない。


 お互いの相性も分かっており、どう動くかも分かっている。ならば、戦える。


「目標、この先。3カウントだ」


 そして3秒のカウントが始まる。


 3──2──1──。


「今だ」


「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」


 フルフルが第一撃を叩き込む。


 リザードマンの鱗が劣化を始め、リザードマンたちが攻撃に気づく。


「『降り注げ、氷の槍!』」


「『爆散せよ、炎の花!』」


 そして、時間を置かずにレヴィアとマルコシアが第二撃を叩き込む。


 レヴィアの氷の槍は発生する際に周辺の気温を低下させる。それによってリザードマンたちに僅かながら動きを鈍くする効果を与えていた。つまり、リザードマンたちは攻撃に気づいても回避することは難しいということである。


 一気にほとんどのリザードマンが負傷し、2体のリザードマンが死亡した。


「さて、出番だ」


 魔法攻撃が終わった段階で久隆たちが前に出る。


 そして、まだ混乱状態にあるリザードマンに向けて突撃する。


 久隆たちは負傷したリザードマンたちを容赦なく屠る。容赦がないのは当然だ。向こうも容赦はしないのだ。こちらが容赦する意味はない。


 久隆はリザードマンの頭を潰し、首を刎ね飛ばす。


 フォルネウスの方も善戦していた。彼にはサクラが付いている。サクラの援護によって、姿勢を崩したリザードマンたちの眼球を狙って短剣を突き出す。


 6体の群れは瞬く間に殲滅された。


「次だ! 騒ぎに気づいて近づいてきている! 俺に続いて動け!」


 久隆はこの階層の構造を頭に叩き込んでいる。そして、リザードマンたちの群れのおおよその位置も把握していた。久隆は挟撃を避けるために最善のルートを進み、リザードマンの群れの迎撃に移る。


 迅速に、迅速に。


 油断なく、迅速に。


 今はスピードこそが勝利をもたらす。限界まで走って、敵に向かわなければ。


「前方、敵集団! フルフル!」


「りょ、了解です!」


 フルフルが付呪を叩き込む。


 この大きな支援によって敵の防備が崩れた。攻撃のチャンスだ。


「いくのっ!」


「やります!」


 続いてレヴィアとマルコシアが魔法を叩き込む。


 リザードマン全体の動きが鈍り、かつ3体が死亡。全員が傷を負った。


「絶好調だな」


 そして、久隆たちが畳む。斧と短剣でリザードマンを確実に仕留める。


 群れは全滅。僅か3分足らずのことだった。


「さあ、次が来るぞ。後方からだ。陣形転換!」


 レヴィアたちと久隆たちが位置を交換する。


 最後の群れのリザードマンが久隆たちを目指して突撃してくる。


「やります!」


 フルフルが付呪を叩き込む。


「貫けー!」


「倒れて!」


 レヴィアとマルコシアの魔法が炸裂。


 だが、今回はリザードマンたちも簡単にはやられなかった。


 数体のリザードマンが天井に向けて盾──ラウンドシールドを構え、レヴィアの氷の槍を受け止めた。レヴィアの攻撃は3体で不発に終わり、残り3体も負傷するに留まった。


「ああ! 防御されたの!」


「大丈夫だ。敵もギリギリってところだからな」


 そう、敵もギリギリだ。


 盾は辛うじてレヴィアの攻撃から身を守ったが、今は破損している。機能していない。そして、氷の槍発生時の冷気で動きが鈍っているのが分かる。


 これならばやれる。久隆は確信していた。


「殲滅するぞ。これで終わりだ」


 久隆たちが突撃する。


 リザードマン6体中3体は無傷。だが、問題はない。久隆はリザードマン3体程度なら無傷のものを敵に気づかれずに仕留めたこともある。残りの負傷したリザードマンはフォルネウスとサクラがいる。


 久隆たちが斬り込み、リザードマンが応じる。


 負傷したリザードマンをフォルネウスとサクラに任せ、久隆は無傷のリザードマンに挑む。無傷と言っても、盾は失われている。攻撃を防御される心配はない。


 久隆は斧を振り上げ、短剣で反撃しようとするリザードマンより素早く、リザードマンの頭を叩き潰した。


 後方から2体目のリザードマンが久隆を狙って短剣を突き出してくる。久隆はそれを横にステップして躱すと、素早く反撃に転じる。まずはリザードマンの短剣を突き出した腕を叩き切り、短剣を奪う。そして、その短剣を後方のリザードマンの眼球めがけて投擲する。短剣はリザードマンの眼球を貫き、死に至らしめた。


 それから武器を失い、腕を失ったリザードマンの首を刎ね飛ばす。


 リザードマン3体は瞬く間に殲滅された。


「や、やった……」


「これぐらいならば行けますね」


 フォルネウスとサクラの方も3体のリザードマンを殲滅していた。


「他に敵がいないか確認する」


 久隆はダンジョン内をくまなく探索し、生存している魔物がいないことを確かめた。


「よし。クリアだ。この調子で行きたいが、疲労の方はどうだ?」


 久隆が確認する。


「まだまだいけるのね」


「余裕です!」


 レヴィアとマルコシアが元気よく答える。


「私もまだまだお役に立てます」


「分かった。だが、一応小休止を挟もう。それから75階層だ」


 久隆はそう告げ、捜索班一行は休憩を取った。


……………………

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