表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

234/284

再度の知性ありしもの

……………………


 ──再度の知性ありしもの



 号令。


「『吹き荒れろ、氷の嵐!』」


「『砕け、岩石の槌!』」


「『爆散せよ、炎の花!』」


 突入してくる重装ミノタウロスを氷の嵐が襲い、地面から突き出した岩石の手が重装ミノタウロスに強力な打撃を食らわせ、爆発が重装ミノタウロスの顔面を吹き飛ばす。


 2体の重装ミノタウロスはよろめきながら少しずつ前に進み、久隆たちの前で倒れた。


「危ないところだったな。だが、そう簡単に突破はさせんぞ?」


 久隆はそう告げて2体の重装ミノタウロスを追い立てていた1体の重装ミノタウロスと対峙する。重装ミノタウロスはハルバードを構え、久隆に矛先を向ける。


 魔物には通常、知力はない。戦術的行動はとらない。だが、この重装ミノタウロスは仲間を盾にして、前衛を突破しようとした。間違いなく、知力のある存在だ。


 そして、久隆は既に知っている。こういう個体を稀少個体と呼ぶことを。


「バルバトス。こいつは稀少個体だ。厄介な相手になるぞ」


「重装ミノタウロスの稀少個体……」


「ああ。だが、俺はミノタウロスで既に稀少個体との戦いを経験している。任せてくれ。レヴィアも魔法が必要だったら援護を要請する。もっとも、こいつは魔法を叩き込ませる余裕を与えてはくれないだろうがな」


 稀少個体は魔法を理解している節がある。魔法を回避するし、防御するし、なんなら魔法の叩き込めない位置まで前衛に接近する。


 これを葬るには、白兵戦で敵を圧倒するしかない。


 しかし、前回の稀少個体戦と違って、今回はフルフルの付呪がない。


 どこまでやれるか? 久隆は自問自答する。


 いや、やらなければならないと久隆は決断した。


 稀少個体だろうと倒せるようになっておかなければ、今後のダンジョンでは生き残れない。敵を倒し、道を切り開いて、このダンジョンを攻略するのだ。


「いくぞ」


 眼前で睨みつける重装ミノタウロスを相手に久隆が動いた。


 同時に重装ミノタウロスも動く。久隆の突進してくる方向にハルバードを突き出し、久隆の突進を阻止しようとする。


 だが、久隆は突撃し始めたら方向転換できない騎兵や象兵ではない。重装ミノタウロスの攻撃を地面を蹴りつけて回避すると、重装ミノタウロスに迫った。


 重装ミノタウロスは即座に武器を持ち替え、久隆から予想される攻撃に備える。


 そして、それは成功した。久隆の重装ミノタウロスの首を狙った一撃は重装ミノタウロスのハルバードによって阻止された。だが、同時に重装ミノタウロスのハルバードの刃に亀裂が生じる。


 ここで重装ミノタウロスは相手の力が自分よりも上だということを理解した。


 短期決戦で終わらせなければ、次はハルバードの刃ではなく、自分の首に刃を受けることになると。そこから重装ミノタウロスの猛攻が始まった。


 ハルバードを振るい、振るった後の隙をなくすために距離を取っては詰め、久隆が防戦一方に追い込まれるほどに攻撃を連続する。久隆も反撃の機会を窺うが、重装ミノタウロスは全く隙を見せることなく戦ってくる。


 だが、久隆もただただ防戦に甘んじていたわけではない。久隆が狙っていたのは重装ミノタウロスの刃。つまり、ハルバードだった。


 防戦に追い込まれた振りをして、重装ミノタウロスのハルバードに打撃を加える。最初にできた亀裂が大きくなっていき、金属音が不快な音を生じさせ始める。


 重装ミノタウロスも武器の異常には気づいているのか、なるべく久隆に打撃を与えられないようにハルバードを繰り出して来る。隙の生じやすい大きく薙ぎる攻撃などは裂け、刺突や短い振りで攻撃を連続しつつ、久隆に打撃を受けそうになったら引く。


 それでもダメージは蓄積されて行く。久隆は攻撃は回避するか防ぐかして絶対に通さないし、武器に打撃を与えるチャンスがあれば蹴りだろうと何だろうと叩き込んでいたからだ。ダメージはじわじわと蓄積されて行く。


 それを見ているバルバトスたちは何が起きているのか分からない様子だった。


 久隆が防戦一方に追い込まれているようで、重装ミノタウロスも随分と慎重に何度も攻撃を放っているように見える。彼らは久隆が何を狙っているか、重装ミノタウロスが何を狙っているか。素早すぎて理解できていなかった。


 そして、ついに決壊した。


 久隆の斧による一撃が重装ミノタウロスのハルバードを破壊し、ハルバードの刃が砕け散る。そこで生じた隙に久隆が重装ミノタウロスの腹部に回し蹴りを叩き込んだ。重装ミノタウロスはバランスを崩しかけ、辛うじて踏みとどまる。


「そろそろ終わりだ」


 久隆はトドメを刺しにかかった。


 だが、重装ミノタウロスはまだ諦めてはいなかった。


 重装ミノタウロスはトドメとなるはずだった久隆の頭への斧による一撃を辛うじて回避すると、刃のなくなったハルバードを槍や棍棒のようにして扱い始めた。


 刃がなくなった分、軽くなったハルバードによる攻撃は素早く、久隆がトドメを刺すのを妨害してくる。だが、頑丈な刃ですら、最終的には砕けたのだ。それより細い柄が折れないという保証はどこにもなかった。


 事実、久隆が重装ミノタウロスが突き出したハルバードを回避した瞬間、叩き込んだ斧による一撃でついにハルバードは完全に破壊された。


 破壊されたハルバードを重装ミノタウロスは投げ捨て、拳を構える。


 久隆はもはや相手に手はないと判断し、首を狙った一撃を繰り出す。だが、重装ミノタウロスは防ぎきった。自分の左腕を犠牲にすることによって。


 攻撃は不発に終わった久隆の動きは素早かった。久隆は次に予想された右腕の拳による久隆へのカウンターに備えて、左腕に突き刺さった斧を放棄して、予備の斧を構える。


 そして、予想通りだった右腕の拳による一撃を斧によって叩き伏せると、ついにトドメを刺すべく重装ミノタウロスの頭を狙って斧を振り下ろした。


 斧は重装ミノタウロスの頭を砕き、死亡させた。


 ついに15分に及ぶ戦闘に決着がついたのである。


「ようやく撃破か……。ひやひやさせやがって……」


「稀少個体ですか? 初めて見ました……。あそこまで魔物なのに知性があるとは」


「ああ。発生する数は少ないはずなんだが、どうも俺は縁があるらしい」


 バルバトスが告げると久隆がそう返した。


「とりあえず、これで63階層はクリアだ。後は後続の部隊に任せよう。後続から応援要請があるかもしれないからこのフロアには待機しておくぞ」


 先に進んでいた部隊に何が起きたときのために無線機は配られている。何か起きれば無線機を通じて連絡がくるはずだ。応援が必要ならば久隆たちが駆けつける。


「こちら久隆。63階層クリア。次に進んでくれ」


『了解』


 ようやく無線機の使い方を覚えたフォルネウスから返事が来る。


 フォルネウスたちが64階層と66階層を掃討し、フルフルたちが67階層と68階層を掃討する。それで70階層までの道のりが開ける。


「全員、よくやったな。勉強にはなっただろうか?」


「なりました。やはり経験のある人物から学ぶのは重要ですね」


 バルバトスが頷く。


「私も前衛を支えるためにこれまで以上に魔法に力を注がないと」


「努力しろ。努力は報われる」


 久隆はイポスが気合を入れるのを見て、そう告げたのだった。


……………………

面白いと思っていただけたらブクマ・評価・励ましの感想などお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ