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買い物へ

……………………


 ──買い物へ



 魔力回復ポーション作成のための材料となる草花を買いに、ダンジョンを出た久隆たちはホームセンターに向かった。


 流石のお盆は終わったので子供たちの姿は見えない。


 フルフルとマルコシアはガーデニングコーナーに向かい、久隆は非常用発電機のためのガスを購入しに向かった。


 それからあるものを忘れないように購入しておいた。


「昼飯は何がいい?」


「ラーメン!」


「よし。じゃあ、久しぶりにラーメン食いに行くか」


 レヴィアの宣言でホームセンターでの買い物を終えた久隆たちはラーメンを食べにショッピングモールへと向かったのだった。


 朱門からはつまみのナッツを頼まれている。スーパーのナッツは口に合わなかったそうである。どこまでもマイペースな人物だ。


「さあ、久しぶりのラーメンだぞ」


「チャーシューメン!」


「お前は決めるのが早くていいな」


 久隆とフルフルは普通のラーメンにし、レヴィア、マルコシア、フォルネウスはチャーシューメンにした。まだまだ熱気の残るこの夏の中、冷たい店内でラーメンを啜るというのは悪いものではなかった。


 満腹になったところで久隆たちは買い物を続ける。


「晩飯は魚でいいか?」


「はい! 是非とも魚で。それからお刺身も……」


「分かった。刺身とアジにしよう。アジはフライにしても美味いからな。それから野菜だな。適当にシーザーサラダにでもしておくか。材料は……」


 スマホで材料をチェックしつつ、買い物かごに商品を入れていく。


「何か他に食べたいものはあるか?」


「レヴィアは甘いものが食べたいのね」


「じゃあ、アイスを買って帰ろう。味は適当に選ぶぞ」


 久隆は自分好みのメーカーのアイスクリームを買い物かごに入れると無人レジで会計を済ませた。これで買い物は終わりだ。ちゃんと朱門のためのナッツも買っておいた。


「じゃあ、帰るぞ」


「少し遊んでいきたいの」


「何で遊びたい?」


「この国の魔道具がみたいのね」


「魔道具はこの国にはない」


「でも、部屋を冷やす機械とか、物を冷たくしておく機械とかあるの」


「ああ。家電のことか。少しだけならいいぞ」


「やったのね!」


 刺身やアイスクリームなどの冷やす必要のあるものは氷と一緒に入れてあるが、氷の解ける速度は2045年代と2020年代で特に差はない。


「30分だけだ。それだけ見て回っていい」


「ケチー……」


「ケチじゃない」


 帰り道も2時間だ。時間に余裕はない。


「それに家電は揃っているだろう? そして、ダンジョン内に電力の余裕はない。家電なんて買い込んでもしょうがないだろう」


「アガレスたちにもあの快適さを味わってほしいの……」


 どうやらレヴィアはアガレスたちが困難な状況にあって、自分が快適な環境にあることに罪悪感を感じているらしい。


「じゃあ、70階層までの掃討が終わったらアガレスたちを地上に招くか?」


「いいの!?」


「ただし、目立たないようにな」


 アガレスは巨漢だ。大人しくていなければ酷く目立つ。


「アガレスたちを地上に呼んで美味しいものを食べてもらうの! あの温めるご飯も美味しいけれど、久隆のご飯には及ばないのね!」


「最近のパック飯は美味いだろう?」


 災害非常食とほぼ同等の性能のを持つ戦闘糧食II型は幾度かのマイナーチェンジを経て、兵士たちが本当に美味しいと思えるものになっている。


 食事は兵士の士気にかかわると認識され、そして食品加工技術の向上により、災害非常食と同等の戦闘糧食II型も年々その美味しさが強化されて行ったのである。


 まして、それを災害に遭った被災者向けに作ったものだ。災害時の食欲のなさを補うぐらい美味なものが提供されている。災害で高いストレス下にある民間人でも食事を取れるように災害非常食は設計されているのである。


 今では食品加工の分野は特に進んだ。温めなおしてもカラッと揚げたての唐揚げが楽しめるし、ご飯は丁度いいぐらいに炊かれているように味わえるし、災害非常食のカレーの味にしたところで市販のカレールーを使って作ったものより美味い。


 日本は災害大国だ。災害に備えるということにおいては、こと世界有数の地位があると言っていい。災害非常食もその影響を受けて、メーカーが競って味のいいものを追求してきたし、それが軍用のレーションにも反映されている。


 だが、流石にレーションで寿司や刺身は味わえないが。


 逆に言えばそれ以外のものは味わえるということだ。


 なので、久隆の料理に期待されても、業界で切磋琢磨して生まれた災害非常食には敵いそうにないというのが現状であった。


 久隆の料理はほとんど手軽に作れるものばかりだ。それに対して災害非常食は作り込んである。煮物から何まで本当にパック飯なのかというぐらい美味い。


「寿司! アガレスたちが来たら寿司を頼むの!」


「ああ。それならいいぞ。しかし、アガレスは生魚は大丈夫なのか」


「問題ないの。アガレスの出身地はフルフルと同じ港町なのよ」


「それなら大丈夫そうだな」


 しかし、他の部下は? と思ったものの、最近のすし屋のデリバリーには様々な和食が含まれている。それを頼めばいいかと久隆は思った。


「じゃあ、家電量販店で見て来なくてもいいな?」


「ちょっと見たいの。久隆たちの世界の発明をヴェンディダードにも持ち帰るの」


「分かった。30分だけだからな?」


「やったの!」


 それからレヴィアは30分間、テレビやスマホ、冷蔵庫にエアコンを見て回ったが、これと言っていて仕組みが理解できるものはなかった。


「残念なのね」


「最近の家電は昔と違って複雑だからな」


 家電はほぼ完全な電子制御。仕組みも省エネに省エネを重ね、複雑になっている。これを家電のかの字もない国の、全く専門外の人間が見て、理解できればそれは天才だ。


「さあ、家に帰ろう。やることがないわけではない」


 久隆はそう告げてレヴィアたちを車に乗せた。


 今日は10階層までプランターを運ぶ準備をしなければならない。


 プランターを10階層まで運んでおき、次来た時に60階層まで運ぶのだ。


「久隆、久隆。美味しい夕食、期待しているからね?」


「ああ。久しぶりの揚げ物だ」


 その日はアジフライと刺身、ほうれん草の胡麻和え、ナスの味噌汁となった。


 レヴィアたちは喜んでそれを食べ、フルフルも故郷の味に喜んでいた。


 だが、久隆たちはまた暫くの間、このような手料理にはあずかれなくなる。


 60階層以降の戦いでは、魔族たちを導かなければならない。久隆と行動を共にしてきたレヴィアたちが後続の魔族たちを導くのだ。それほど重要な仕事もない。彼らの活躍によって救わる命があるかもしれないのだ。


「全員、重装ミノタウロス対策はできているな?」


「できているつもりです。重装ミノタウロスはもう何度も相手にしましたから」


「よろしい。では、一応おさらいしておこう。重装ミノタウロスの狙うべき場所はどこかから始めようか」


 それから久隆たちが議論を重ね、自分たちの経験を基に重装ミノタウロス対策を打ち立てた。顔面を狙う。魔法は効果的。魔法と白兵戦の組み合わせによってより効果的な戦闘を行うことができる。


 意見は一致し、久隆たちは明日に備えて休みに入った。


……………………

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