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60階層攻略に向けた合同作戦

……………………


 ──60階層攻略に向けた合同作戦



「ウァレフォル。またともに戦うことになる。よろしくな」


「よろしくお願いします!」


 50階層で久隆たちはウァレフォルたちと合流した。


 ウァレフォルの部隊は以前と同じ3名。顔なじみだ。


 騎士2名に魔法使い1名の編成。遠近両用の部隊である。


「これから共同作戦を行う。お互いのことを知り、こちらの指揮での戦闘に慣れてもらいたい。以前の共同作戦は短かった。今回は本格的にやりたい」


「ええ。こちらとしても是非とも」


 ウァレフォルが頷いた。


「では、55階層からだ。55階層は一度掃討して重装ミノタウロスだけになっている。55階層は重装オーク、オークロード、オークシャーマンが現れる。最優先で狙うのはオークロードだ。オークロードを仕留めれば、重装オークは脅威じゃなくなる。それからオークシャーマンを潰す」


「重装ミノタウロスは?」


「前線に来たならば潰す。遠距離攻撃はさっきの優先度だ。だが、用心しろ。重装ミノタウロスは厄介な相手だ。パワーと速度はそのまま。頑丈な鎧に包まれ、鎧を盾にして攻撃を防ぐこともある。だが、倒せない敵じゃない」


「そうですね……。なら、重装オークも?」


「こちらもオークロードがいる限り、重装ミノタウロス並みの厄介さだ。だが、オークロードを倒せば、ただの重装オークになる。手間取る相手でもない。だが、油断はするな。重装オークでも脅威は脅威だ。人を殺せる」


「了解」


 全員に緊迫感は漂った。


「適度な緊張だ。緊張し過ぎず、油断し過ぎない。適度な緊張が重要だ。さて」


 久隆は地面にノートを広げた。


「陣形を変更する。ウァレフォルは最前列。フォルネウスは他の2名と一緒に後方へ」


 久隆はまずウァレフォルに戦闘について知ってもらうために、ウァレフォルとフォルネウスの位置を入れ替えた。ウァレフォルには別行動をしたときに久隆の戦い方を知っておいてもらう必要があった。


 久隆は60階層のケルベロス討伐戦の際に久隆とウァレフォルのチーム、フォルネウスとレヴィアのチームに分けて戦うつもりだった。ウァレフォルのチームは騎士が2名いるので1名はフォルネウスのチームに回すが、ウァレフォルのチームの指揮は久隆が執る。


 流石に久隆もウァレフォルだけに任せるのは心配だったのだ。


 そして、久隆の指示に従ってもらうために、久隆の命令の意図するところをすぐ理解してもらえるよう、今回の合同作戦ではウァレフォルを隣に置いた。


 それと同時にフォルネウスには自主的な行動ができるように、後方を委ねた。指揮はサクラが支えるだろうが、フォルネウス自身の自主性も求められる。軍隊は基本的に指示がなければ行動してはならないのが原則だが、戦闘時においては臨機応変に行動することが求められる。もちろん、交戦規定(ROE)の範囲内において。


 全てサクラに任せてもよかったのだが、それだとフォルネウスが自信を失いかねない。フォルネウスに自信を持たせるためにも彼に指揮を任せてみることにした。


「まずは55階層で腕試しだ。重装ミノタウロスを相手にどこまでやれるかみてみよう」


「了解!」


 そして、久隆たちは55階層に戻る。


 索敵をすぐに行ったが、ダンジョン再構成前なので重装ミノタウロス5体がいるのみだ。即席のチームを試してみるには丁度いい。


「ウァレフォル。あそこの通路で迎撃する。鎧を貫こうとは思うな。貫けるような鎧じゃない。頭を狙え。目を狙え。そうすれば仕留められる。いいか?」


「はい」


「では、始めよう」


 久隆はまずは無人地上車両(UGV)を発進させてミノタウロスの位置と情報を把握する。ミノタウロス5体は一か所に纏まっており、武器は槍。ダンジョン内では使い勝手が悪い武器だろうが、魔物たちはお構いなしだ。


「目標を視認。ウァレフォル、仕掛けるぞ。敵を呼び寄せろ」


「了解」


 ウァレフォルが咆哮する。


 その音に反応してミノタウロスが一斉に久隆たちがいる通路に向かってくる。別れた様子もなく、5体全てが真っすぐ久隆たちに向かってくるのである。


「フルフル、付呪はいけるか?」


「大丈夫です」


「なら、頼む」


「はい。『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」


 久隆たちが付呪で身体能力をブーストされる。


「次は重装ミノタウロスだ。余裕があったら頼む」


「任せてください」


 そして、重装ミノタウロスたちが姿を見せた。


「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」


 フルフルが即座に2発目の付呪を叩き込む。


 重装ミノタウロスの防具が劣化していく。


「行くぞ。ウァレフォル!」


「了解です!」


 久隆たちは迫りくる重装ミノタウロスに向けて突撃する。


 槍で久隆たちを貫こうとする重装ミノタウロスに久隆たちは上昇した身体能力で回避し、久隆は槍に回し蹴りを叩き込む。金属の槍から響いた衝撃が、ミノタウロスの手に伝い、腕をしびれさせ、槍を手放させた。


 そして、そのまま久隆は重装ミノタウロスの腹部に蹴りを叩き込む。


 劣化していた重装ミノタウロスの鎧がへこみ、重装ミノタウロスが後方に弾き飛ばされる。その際に3体の重装ミノタウロスが巻き込まれた。


「レヴィア、マルコシア!」


「了解なの!」


 そして、魔法攻撃が加わる。


 降り注いだ氷の槍と爆発によって一気に4体のミノタウロスが壊滅する。


「はあっ!」


 残る1体もウァレフォルがなんとか倒していた。


「どうだ。こいつが重装ミノタウロスだ。やれそうか?」


「な、なんとか。久隆様のようにはいきません」


「俺はある意味いかさまをしているからな」


 パラアスリート用の義肢の驚異的な発育。今や久隆の義肢の人工筋肉はアーマードスーツに使用される人工筋肉以上の性能になっていた。15トン未満、5トン以上のアーマードスーツを支えられる人工筋肉以上なのだ。


 そんな化け物染みた人工筋肉をさらに付呪で強化しているのだから、途方もない出力が出るのは当たり前なのだ。重装ミノタウロスを蹴り飛ばすことも当たり前なのだ。


 もちろん、久隆は自分のように戦ってくれとウァレフォルに求めているわけではない。ただ、自分とともに戦ううえでこういうことも起きるし、久隆にはこういう手段もあるということを理解しておいてほしいだけなのだ。


 お互いの能力を知る。それが相互理解に繋がる。何ができて、何ができないのか。それが分からなければ合同作戦など夢もまた夢だ。


 久隆もウァレフォルの戦闘を評価していた。


 フォルネウスよりも積極性はない。だが、慎重な戦闘で、確実に目標を仕留めている。久隆には剣を使った戦闘の良し悪しはよく分からないが、ウァレフォルの剣捌きはなかなかのものであると思われた。


 少なくとも前線で肩を並べて戦うのに不満はない。


「では、56階層だ。ここからが本番だぞ」


 久隆はそう告げて56階層への階段をゆっくりと降りていった。


……………………

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