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着実に進めよう

……………………


 ──着実に進めよう



「強行軍と言うと、この間の40階層から50階層までの突破のような?」


「ああ。それも選択肢のひとつだ。だが、もうひとつある。モンスターハウスとエリアボスだけを相手にして、他の階層の魔物は無視していく方法だ。それであのダンジョンがどれだけ深いのかをとりあえず確かめる」


 久隆の案はこうだった。


 通常の階層の魔物もこれまでは相手にしてきた。殲滅してきた。


 だが、それをなくそうというのだ。


 強行突破で魔物の群れを突っ切り、地下に地下にと潜る。


 どうしても相手にしなければならないモンスターハウスとエリアボスだけを相手にする。他は完全に無視。それでいけるところまで進み、このダンジョンのおおよそでいいので階層を割り出そうというわけだ。


「無理だと思うか?」


「非常事態の場合、我々の捜索班には回復魔法使いがいません。死人が出ますよ」


「そう、それを含めて耐えられるか聞いている」


 フルフルが告げると久隆がそう返した。


「反対なのね。流石に無理があるの。臣下の身を預かるものとしては、賛成はできないの。みんなで生きて帰らなければ嫌なの」


「私もちょっと。これまでのように後方の支援が受けられなくなるのは」


 レヴィアとマルコシアは反対。


「私も反対です。冷静になって、着実に攻略していくべきです」


「自分もあまり賛成はできません。べリア様のことは気がかりですが……」


 フルフルとフォルネウスも反対。


「私と久隆さんとで偵察するだけならともかく、それには無理があります」


 サクラも反対。


「よし。全員、焦ってはいないようだな。それならば着実に進めていこう。全ての階層を掃討していき、モンスターハウスを制圧し、エリアボスを倒し、拠点を地下に地下にと構えていく。これでいいな?」


「問題なしなの!」


 久隆自身も自分の提案した強行軍が可能だとは思っていなかった。


 ただ、捜索班のメンバーが焦っていないか知りたかったのだ。


 ダンジョンの終わりは見えず、べリアは地下に進んでいる。べリアを確保しなければ、ダンジョンコアに辿り着いても元の世界には戻れない。


 それでも捜索班のメンバーが焦っていないことに久隆は安堵した。


「それでは晩飯にしよう。ファミレスになるがいいか?」


「レヴィア、ファミレスは好きなのよ。美味しそうなものがたくさんあるの」


 ファミレスで満足してくれる魔王様も助かるには助かるがと久隆は思った。


「食事をしながら、今後のことについて話し合おう。長期戦になるなら、長期戦の備えをしなければならない。幸い、活動資金については朱門から融通してもらっている。あの金を使うのは少しばかり躊躇われれるが……」


 マフィアが換金した金だ。使うのには抵抗がある久隆だった。


「まあ、ここまで来たんだ。割り切るしかない。装備も充実させておこう。それぞれがライトと無線機を携行する。今後の連携のためには必要になってくる」


 無線機をひとり1台。それだけでも意志疎通は行いやすくなる。


「それから応急処置の方法について教える。応急処置キットも与える。それで仲間が負傷してもパニックに陥らずに済むだろう。俺から教えておく。朱門は今、取り込んでいるからな。あの衰弱した魔族が元に戻るまでは時間がかかるだろう」


 久隆はそう告げてサクラの方を見る。


「サクラから何か全員に配っておくべきものはあるか?」


「タクティカルベストですね。今のベルトポーチもいいですけれど、運べる荷物の量と取り扱いやすさが増します。ライトと無線機、応急処置キットを配るならなおさら。バックパックも全員分あった方がいいかと」


「よし。通販で注文しておこう。暫くは地上だ。ダンジョンのことを考えつつも、リフレッシュしてくれ。気持ちの切り替えは重要だぞ。いつまでも緊張が続くようでは神経が参ってしまうからな」


 久隆はそこで話を終えてファミレスに向かった。


 ファミレスではダンジョンの魔物の生態についてマルコシアから話を聞いたり、これまでの超深度ダンジョンの中でも浅いレベルのものについての話を久隆は聞いた。それはある意味では慰めになったが、決定的にな問題解決とはいかなかった。


 やはりダンジョンは面倒な代物だというのが久隆の感想だった。


 その日はレヴィアたちは風呂に入り、歯を磨いて早々に寝た。


 起きているのはサクラと朱門、そして久隆だけだ。


「これからどうなるんでしょうね……」


「まあ、潜らないことには始まらないだろう」


 久隆は既に通販で物品を注文している。届くのは3日後だ。


 久隆とサクラは縁側で虫の泣く音を聞きながら、夏の夜空を眺めていた。


「よう。おふたりさん。1杯付き合えよ」


「朱門。預けておいた患者は?」


「問題ない。死ぬほどの疲労じゃなかった。だが、暫くは栄養点滴だな。かゆもダメだ。固形物を消化できるほどの体力がない」


「それは死にかかっているレベルの疲労じゃないか?」


「死にかかっている疲労ってのはもっと酷いものだ」


 朱門はそう告げて久隆とサクラにウィスキーをオンザロックにしたものを渡した。


「どれくらいでよくなる?」


「5日は欲しいな。それだけあれば大丈夫だ」


「5日か」


 長いようで短い。


「それで、ダンジョン攻略の方はどうなんだ? 順調なのか?」


「馬鹿デカい蜘蛛を退治してきた。だが、地下何階層まであるのか分からん。前例としては地下400層のダンジョンも存在したらしい。そして、俺たちの相手にしているミノタウロスなどが出没するのは中層だと」


「蜘蛛か。俺は蜘蛛は苦手だ。いや、昆虫全体が苦手だ。それはそうと、地下400階層もあるダンジョンだったらどうするんだ?」


「やれるところまでやってみるさ」


「俺は付き合いきれんかもしれないぞ?」


「そうだな。その時は俺たちは俺たちでやっていくさ」


 朱門はマフィアの闇医者だ。また抗争や臓器の違法移植手術があれば、ここを立ち去らなければならない立場である。


 そうなると、後方支援から医者が外れる。久隆たちは医者なしでここを攻略しなければならなくなる。それが可能かどうかは分からない。


 回復魔法使い頼りにして、ダンジョンは果たして攻略できるのか。今は上にいき、下にいきしている。そのどこかで負傷する可能性が皆無というわけではないのだ。


「まあ、こっちも粘れるだけこっちにいる。可能な限りな。だが、期待はしすぎるなよ。400階層もあるダンジョンには付き合えないからな」


「分かっている。その場合はこちらでどうにかする」


「頼むぞ。あそこがお宝の山なのは分かっているが、俺も完全なフリーランスというわけじゃないんだ。新聞を見る限り、警察のマフィアとヤクザ摘発は激化しているようだし、連中が最後の手段として抗争に訴える可能性は無きにしも非ずだ」


「そうだな。どうにかしないとな……」


 久隆は空になったウィスキーのグラスを揺らしてそう呟いた。


……………………

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