今後の計画
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──今後の計画
「引き続き、俺たちが偵察部隊から情報を得たら、地下に潜る。その方針でいいだろうか? 正直、ダンジョンでは大規模戦闘は困難だし、今の捜索班でもやっていける」
「だが、久隆殿たちも疲労しているだろう。フルフルも一度倒れている。ここは我々にも仕事を任せてはもらえないだろうか?」
「そちらで地下に潜ると?」
久隆としてはあまり嬉しくない申し出だった。
下手に犠牲を出されればそれを負担するのは久隆たちだ。魔族たちが死んだ場合、地下59階層までの掃討戦を久隆たちが行わなければならないようになるかもしれない。それはあまり望ましくなかった。
「ちょっとした手助けだ。騎士たちも、魔法使いたちも、これまでの戦闘でレベルが上がっている。掃討しきるとまではいかずとも、ある程度階層の魔物を減らせるかもしれない。敵は少ない方が久隆殿たちもやりやすいだろう?」
「それはあるが、まずは偵察報告を聞いてから判断したい。新しい戦術が必要になるような敵であれば、俺たちが新しい戦術を開発してから潜ってもらった方が安全だし、犠牲も抑えられる」
久隆が告げる。
「俺の捜索班のレベルはこういうのもなんだが、他の捜索班より秀でていると確信している。日本海軍で経験豊富な士官と准士官がいて、これまでの激戦を潜り抜けてきた魔族たちがいる。魔族たちのレベルも高い」
「確かに。久隆殿の捜索班は我々の中では最高だ。だからこそ、我々はそなたらを安全な任務にと思っているのだ。貴重な戦力が失われるのは避けなければならない」
久隆はここでアガレスと自分の間に意見の食い違いが起きていることに気づいた。
久隆は最高の捜索班だからこそ、自分たちが道を切り開くべきだと考えている。他の魔族の犠牲は抑え、自分たちが安全に道を作ることこそが必要だと思っている。
だが、アガレスは違う。
アガレスは久隆たちの戦力を切り札として取っておくことを選んでいる。他の魔族の犠牲があったとしても、久隆たちが最後まで生き延びていれば道は開かれると思っているのである。
それはアガレスは事実上のダンジョン内の戦力のまとめ役であるということから導き出されたものだろう。自分たちが掃討や偵察以外の何もせず、ただただ久隆たちが道を開いてくれるのを待っているというのは、ある意味では部下の士気に関わる。
アガレスも彼の部下も、自分たちが戦えるということを示したいのだ。
だが、久隆にとってこの話は美味しくない。
アガレスの部下にこそ、ここぞという時に動いてほしいのだ。グリフォンとヒポグリフを討伐したときや、アラクネクイーン戦の際の救出任務のためにこそ動いてほしい。下手に動いて犠牲を出してほしくはない。
戦力は限られているのだ。外部から助っ人は呼べない。今ある戦力で回していなかなければならない。そうであるならば、アガレスの部下たちは温存しておくべきだ。50階層から地上までの掃討任務ですら、危険はあるのだから。
「アガレス。錆びた剣で相手と戦うのと、研ぎ澄まされた剣で相手と戦うののどちらが犠牲が少なくて済むと思う?」
「それは当然研ぎ澄まされた剣だ。……だが、我々も錆びた剣ではない。戦えるのだ。そのことを久隆殿たちに示したい。我々は戦える。我々も戦えるということを」
「それは既に示されている。40階層から地上までの掃討戦でそちらは力を示した。ミノタウロスを相手に戦えたのだ。そちらの実力は分かっている。だが、そこまでいうのならば、俺たちを助けるための方法がある」
「どのような?」
「援軍を呼びたいときに呼べるようにしておくことだ」
久隆はそう告げてサクラを呼んだ。
「なんですか、久隆さん」
「アガレスに無線機を」
「分かりました」
サクラはアガレスに無線機を渡し、使い方を教える。
「こちら久隆。聞こえるか」
「おお。この魔道具より音がする!」
「これが無線機というものだ。それをもう2台ほど購入してレラジェの偵察部隊とそちらに預けておく。我々が危機的な状況にあるときや、レラジェたちがまた危機に陥った時には連絡をする。その時は助けに来てくれ」
「分かった。その役割、引き受けよう」
これでアガレスの申し出には上手く対応できたと久隆は思う。
アガレスたちが戦いたがっているのは分かっている。地下から上層へではなく、ゴールである地下に向けて潜りたがっているのは分かってる。久隆は自分がアガレスと同じ立場でも何かしらの貢献を果たすことを求めただろうから。
しかし、ダンジョンもここまで地下深くなると、重傷を負った時などに、朱門の手当てが受けられるのは時間がかかるだろう。となると、アガレスの部下の回復魔法使いが頼りになるが、その時キャパシティーオーバーになっていることは望ましくない。
だから、アガレスたちにはなるべく戦闘は控えてもらいたい。戦闘するにしても下層から上層へという戦術が確立され、負傷のリスクが少ない戦いをしてもらいたい。
そうであるが故に、久隆がアガレスに手助けを求めるのは最後の手段となるだろう。本当にどうしようもなくなったときに、捜索班の全滅を避けるために呼ぶことになる。
それでも久隆は恐らくアガレスの助けを求めることはないだろうと考えた。
やはり彼らには上層までの退却路を確保してもらいたいし、負傷して回復魔法使いのキャパシティーを埋めたくないし、貴重な戦力である彼らを失いたくない。
「ところで、戦力が強化されてきたと聞いたが」
「そうだ。下層から上層までの戦いを何度も経験して、騎士も魔法使いもレベルが上がった。今では全員がレベル9かそれに近い。頼もしい戦力になるだろう」
「回復魔法使いやレラジェたちのような戦闘を経験しない職種は?」
「上がっている。何も戦闘だけがレベルを上げるのではない。回復魔法使いは回復魔法を使うことでレベルが上がるし、偵察部隊のような隠密行動を行う部隊は隠密行動を行うことでレベルが上がる」
「なるほど。ちなみに回復魔法使いとレラジェたちのレベルは?」
「回復魔法使いは今は3人だが、3名ともレベル8。レラジェたちはレベル9だ」
「頼もしいな」
「ああ。彼らは頼りになる戦力だ」
レヴィアやフルフルの例から見て、レベルアップすれば使用できる魔力も増えるし、魔法の威力も強くなる。回復魔法使いは回復魔法の効果が高くなるだろう。
「確認しておきたいんだが、回復魔法はどの程度なら回復させられるんだ?」
「死んでさえいなければ、ほとんどの場合、再生できる。手足が千切れていても元に戻せるし、はらわたが溢れ出ていても元通りだ。生きてさえいれば時間をかけることで、元通りに戻すことができる」
「感染症などは? 例えば、破傷風だ」
「元通りだ。全て治癒する。もっとも、そこまでの回復魔法となると魔力を大変に使用する。そして、魔力を使用し過ぎると、この間のフルフルのように倒れてしまう。そうなると回復魔法使いという貴重な人材が一時的に行動不能になってしまう」
「やはり、そう上手くはいかないか」
回復魔法使いは朱門を上回るポテンシャルを持っているが、やはり魔法使いの定めである魔力量に管理されているようだ。そう簡単に負傷はできないなと久隆は思う。
「では、50階層で衰弱していたものたちはこちらで治療する」
「すまない、久隆殿。任せる」
久隆は衰弱した魔族たちとともに地上を目指す。
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