アラクネクイーン討伐に向けて
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──アラクネクイーン討伐に向けて
これで全フロアが使用可能になった。
「レヴィアとマルコシアは魔法を放ったら、別のフロアに移れ! サクラとフルフルは先に次のフロアへ! 俺とフォルネウスが殿だ!」
ここからの打ち合わせは既に済ませてある。
久隆たちが囮となり、アラクネクイーンをとにかく誘導し、フロアからフロアに移る固定された瞬間を狙ってレヴィアとマルコシアがアラクネクイーンの頭に魔法を叩き込む。それをずっと繰り返す。サクラは補助、フルフルはレヴィアたちの付呪が切れた場合にすぐにかけれる位置に。
これをフロアを通過するごとに繰り返し、アラクネクイーンを屠る。
既に物理攻撃は失敗した。魔法にかけるしかない。
レヴィアたちが次のフロアに移動し、久隆とフォルネウスがアラクネクイーンの攻撃を回避しながら、アラクネクイーンを誘導する。
アラクネクイーンは激昂しており、猪突猛進で突っ込んでくる。
そしてフロアからフロアに続く狭い出入口。
「『斬り裂け、氷の刃!』」
「『爆散せよ、炎の花!』」
アラクネクイーンの頭部を二重の魔法が直撃する。
アラクネクイーンはよろめきながらも前進する。
「レヴィアたちは次のフロアへ! サクラ! 発炎筒付きの矢を頭部に!」
「了解」
サクラは発炎筒付きの矢をアラクネクイーンの頭部に突き立てた。
これで目標は狙いやすくなった。
「フォルネウス、捕まるなよ。助けてはやれんかもしれないからな」
「分かってます!」
アラクネクイーンは引き続き久隆たちを追い続ける。
「『沼に嵌りて、その足に重荷を! 枷を嵌めたまえ!』」
そこでフルフルがアラクネクイーンに対して、付呪をかけた。速度低下の付呪だ。
「助かった、フルフル!」
「気を付けてください!」
レヴィアの二度に渡る凍結魔法。フルフルの付呪。これでアラクネクイーンの速度は酷く低下した。もはや、久隆たちを追いかけることで精一杯という速度だ。
それでも糸を吐きながら、アラクネクイーンは久隆たちを追跡し続ける。
「レヴィア! マルコシア!」
久隆が次のフロアに移ったと同時に脇に避けて叫ぶ。
「『斬り裂け、氷の刃!』」
「『爆散せよ、炎の花!』」
アラクネクイーンの頭部が激しく揺さぶられ、引きちぎれんばかりに揺れる。
それでもなお、アラクネクイーンは健在だ。
「畜生。長期戦になりそうだな」
「久隆さん。重ね掛けを!」
「大丈夫なのか?」
「ええ。やって見せます!」
久隆が渋い表情を浮かべていたところにフルフルがそう告げる。
「分かった。次のフロアでもこいつが生きてたら頼む!」
「了解!」
レヴィアたちが次のフロアに移動していく。
久隆たちはアラクネクイーンを十分に引き寄せてから走る。
「やれ、レヴィア、マルコシア!」
そして、先ほどと同じように魔法が叩き込まれる。
アラクネクイーンはまだ倒れない。
不死身かと思わされるほどの耐久力である。
「クソッタレ。フルフル、付呪の重ね掛けを!」
「はい! 『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士にさらなる力を!』」
「よし。その首叩き落としてやる」
久隆は凄まじい速度でアラクネクイーンに突撃した。
アラクネクイーンがそれを迎撃しようとしても、フルフルの付呪とレヴィアの魔法で動きが鈍ったアラクネクイーンには不可能だった。
久隆の斧がアラクネクイーンの頭に深々と突き刺さる。
そこでアラクネクイーンは痙攣し、ついに動かなくなった。
「やった、よな……?」
久隆は死体が消えないことに怪訝そうな思いを抱いていた。
カサカサとアラクネクイーンの中で何かが這いまわる音がし始めたとき、疑問は確信に変わった。アラクネクイーンの中にアラクネが潜んでいる、と。
「畜生。嬉しくないサプライズだ!」
久隆はアラクネクイーンの死体から湧き出してきたアラクネたちを叩き切りながら、後退していく。
「レヴィア、マルコシア! 纏めて吹き飛ばせ!」
「了解!」
マルコシアが前方に結界を展開する。
「『吹き荒れろ、氷の嵐!』」
「『焼き尽くせ、炎の旋風!』」
広範囲魔法攻撃を受けて、アラクネたちが倒れていく。
「今度こそ、やったな」
全てのアラクネの死体が金貨と宝石になって消える。アラクネクイーンの死体も消えた。50階層でもう動いている魔物は1体足りもいない。
「勝利だ。俺たちは勝利した。そして、生存者を救えた」
「やったの!」
レヴィアがぴょんぴょんと跳ねて拳を突き上げる。
「やりましたね、久隆様」
「ああ。やったな」
マルコシアが告げるのに久隆が頷く。
「フルフル。勝利だ」
「ええ。勝ちました」
「お前の勇気のおかげだ」
「私は私にできることをしただけです」
そう告げてフルフルは小さく微笑んだ。
「そうだな。それぞれがやれることをやった」
久隆は頷き、49階層に上る階段を目指す。
「どうでした?久隆様?」
「勝った。アラクネクイーンは排除された。もう大丈夫だぞ」
「おおっ!」
仲間を救出した魔族たちが歓声を上げる。
「アラクネクイーンが撃破されたぞ!」
「おお! ついに50階層以降に!」
魔族たちは沸き立っている。
それもそうだろう。
地下に向かえば、向かうほど、ダンジョンコアが近づく。
そうすることでべリアにも近づく。それはダンジョンコアをコントロールして、元の世界に戻るという手段を手に入れられる可能性があるのだ。
希望が生まれる。故郷に戻るという希望が生まれる。
そう、故郷だ。
ここにいる魔族たちには帰るべき故郷がある。帰るべき家庭がある。再び会う家族がいる。どうやってもこのダンジョンから、地球から戻らなければならないのだ。
彼らも故郷を懐かしんでいるはずだ。
久隆は彼らに休養や食料、水を与えられても、故郷は与えられない。彼らが故郷に戻るためにはダンジョンコアを制御するしかないのである。
その道のりをまた一歩進んだ。
ゴールに向けて着々と。
「久隆様。助かりました」
「レラジェ。体調は大丈夫か?」
「はい。おかげさまで。後少しでも遅かったら不味いところでした」
レラジェはそう告げて髪についたアラクネクイーンの糸を払う。
「本当に死ぬかと思いました。久隆様に助けていただけて感謝しています」
「後続の偵察部隊はどうだった?」
「無事です。先に巻き込まれていた魔族の何名かも無事です」
「そうか。戦力がまた増えたな」
暫くは朱門に任せることになるだろうが、救出した魔族たちも戦力になるだろう。戦力は着実に増えている。物資は必要になってくるが、戦力があれば、50階層から上の定期的な掃討にはそれなり以上の戦力が必要になってくる。
物資は調達できるが、戦力が調達できない以上、ダンジョン内の生存者は可能な限り救出しておくべきである。
「救助した魔族は朱門に任せよう。地上へ運ぶ。手伝ってくれ」
「了解」
ぐったりとした魔族たちが仲間たちの背中に背負われる。
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