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アラクネクイーン戦作戦会議

……………………


 ──アラクネクイーン戦作戦会議



「あの娘、もう完全に大丈夫だぞ」


 フルフルが運び込まれてから3日目に朱門が久隆にそう告げた。


「戦闘に耐えられるのか?」


「それはあの娘次第だ。今までの体力で耐えてきたなら耐えられるだろう。とにかく、今はベストコンディションだ。療養の必要はない」


「そうか」


 フルフルはしっかりと休めただろうかと久隆は考える。


 医者である朱門が言っているのだから間違いはないだろう。


「精神的にはどうだ?」


「戦いたくてうずうずしている様子だったぞ。自分だけ休んでるのが気になるらしい」


 まあ、俺は精神科医ではないがと朱門は告げる。


「精神的な面を気にしているなら余計にあのまま療養させておくのはよくないぞ。悪いことばかり考えるようになってしまう。とにかく、働かせておけば目の前のことに集中するし、気も晴れるというものだ。言っておくが、これは精神学的な見地からのアドバイスではなく、よく言われている方法について語っただけだからな?」


「それでもそのアドバイスは助かる」


 久隆はそう告げて立ち上がると、フルフルの部屋に向かった。


「フルフル。戦えるか?」


「戦えます」


「よし。行くぞ」


「はい」


 これからフルフルには重要な役割を果たしてもらわなければならない。


「レヴィア、マルコシア、フォルネウス、サクラ。40階層に向かうぞ」


「了解」


 レヴィアたちがダイニングのテーブルから立ち上がる。


「ついにアラクネクイーンに挑むのね」


「そうだ。アラクネクイーンを討伐する。なんとしても」


 もっとも最初の目的はアラクネクイーンの討伐ではなく、生存者の救出なのだがと久隆は思った。生存者を生きて上層に脱出させなければ、アラクネクイーンと本格的に刃を交えることはでえきない。


 久隆はそう思いつつも弁当を持って40階層まで下った。


「アガレス」


「久隆殿。フルフルはもう大丈夫のようだな」


「ああ。もう戦えるはずだ」


 アガレスが決意に満ちた瞳を見せるフルフルを見て、感心したように告げる。


「それで、アガレス。50階層のアラクネクイーン討伐戦だ」


「我々も力になれるか?」


「もちろんだ。むしろ、そっちの戦力に期待している。アラクネクイーンのいる50階層にはレラジェたちが囚われている。それを救出するのに力を借りたい。アラクネの巣を溶かせるかは分からないが、蜘蛛の巣を溶かす道具を持ってきた。これを使ってくれ」


「助かる。久隆殿。しかし、アラクネクイーンはどうやって押さえ込んでおくのだ?」


「ドローンを使う。生命のない鳥だと思ってもらえばいい。それを何機も飛ばして、アラクネクイーンの糸にわざと引っかからせる。獲物が引っかかったと思ったアラクネクイーンがどたばたやっている隙に生存者を上層に連れだす。数は10名だ」


「分かった。猶予は?」


「15分がギリギリだ。それ以上は怪しくなる」


「ふうむ。賭けになるが挑まなければ勝利はない。久隆殿を信じて挑もうではないか」


「よし。では、具体的な作戦について指示する」


 久隆は最優先で救助するべき魔族の位置とアラクネクイーンの予想進路を打ち合わせる。アガレスたちはこの手の任務に向いている力仕事が得意な騎士たちを動員することで、久隆の求めに応じる。


「この作戦、久隆殿が直接アラクネクイーンの首を取りに行くのではダメなのか?」


「リスクが大きい。暴走したアラクネクイーンが何をするか分からない。そして、相手が人質を取っている限り、魔法はフルフルの付呪しか使えない」


「ううむ。なんとも綱渡りな作戦だな……」


「それはこちらでも承知している。だから、早急にこのフロアの人質を救助してもらいたい。アラクネクイーンが救助作業を妨害する動きを見せたら、このフロアで戦闘を行う。人質さえいなければ、魔法も大々的に使える」


 久隆が指さしたのは最初からあまり人質のいないフロアだった。


「ここを押さえることで非常事態に備える。人質の救出はこのフロアから最優先だ」


「なるほど。考えておられる。しかし、このフロアだけで戦えますか?」


「そればかりはやってみないことには分からん。可能かもしれないし、不可能かもしれない。いずれにせよ、戦うならばここだし、本格的に戦うならば全員の救助が済んでからだ。お互いやれることをやろう」


「うむ。それで構わない」


 久隆の作戦内容にアガレスが頷いた。


「そちらの士気は?」


「上々だ。全員、仲間を助けるのに必死になっている。一刻も早く行動したいと思っている。コンディションも万全だ。任せておいてもらいたい。しかし、少しばかり焦りすぎだとは思われるが、それでもそれぐらいの方がいいだろう」


「そうだな。では、指揮系統を確認しておきたい。現場の指揮は俺が取るということで問題ないだろうか?」


「そなたに任せる。異論はない。他の魔族たちも同意するだろうし、文句は言わないだろう。そなたにならば誰もが任せるはずだ。現場の小部隊の指揮は?」


「そちらの指揮官たちに任せる。とにかく迅速に運び出すことを重視してもらいたい。戦闘は避ける。それが守れるならばどうだろうと構わない」


「言い聞かせておこう」


 作戦の第一目標は救出。それからアラクネクイーンの撃破。


「アラクネクイーンを攪乱し、人質を救出する。救出後は俺たちが敵を叩く」


「我々はアラクネクイーン戦には? 参戦しなくていいのか?」


「大人数で戦うような敵ではない。むしろ、大人数で戦うとまた人質を取られる可能性もある。それは望ましくない。適切な人数で確実に叩く方が向いている。それに広いフロアと言っても、グリフォンとヒポグリフと戦ったときほどの広さはない」


「それもそうだな。では、アラクネクイーンの討伐はそなたたちに任せよう」


 アガレスは大きく頷いた。


 魔族との共同作戦に支障はない。


 縄張り争いもないし、主導権争いもない。誰もが果たすべき役割を果たしている。


 これが東南アジアの戦争なら、主導権争いが起きていたであろう。日本海軍、現地政府軍、場合によっては民間軍事企業(PMC)が口を挟んでくる。失敗国家の立て直しには民間軍事企業(PMC)が深く関わっているのだ。日本海軍と同様に。


 ものによってはアメリカ海軍との合同作戦にもなるし、アメリカ海兵隊も出てくる。日本情報軍があれこれ指図してくることもあるし、国連からの横やりもある。誰もかれもが主導権を握りたがり、自分たちの損害を減らし、利益だけを得ようとする。


 だが、魔族との共同作戦にそういうものはない。


 久隆が従ってくれと頼めば、根回しなしでそれが通る。それがどれだけ素晴らしいことかは合同作戦を経験した将校ならば分かるだろう。


「アガレス。信頼に感謝する。必ず魔族たちを救出し、50階層を突破しよう」


 久隆はそう告げて確かに頷いたのだった。


……………………

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