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50階層に向けて

……………………


 ──50階層に向けて



 49階層に向けての戦い。


 久隆は48階層で残り2体のミノタウロスと対峙していた。


 ミノタウロスたちは機を窺うようなことはせず、でたらめに突っ込んでくる。それが彼らが彼らのポテンシャルを活かせない所以であった。


 もし、久隆たちが遭遇した稀少個体のようなミノタウロスがいれば、厄介だっただろう。だが、そういう個体は本当に数が少ないようだ。ほとんどは考えなしの突撃を繰り返すだけの代物である。


 もっともただの突撃でも重機が突っ込んでくるような突撃ではそれだけで脅威だ。


 ミノタウロスは駆けながら勢いをつけ、久隆に向けて斧を振り下ろす。


 だが、いくら俊敏と言えど重量のあるハルバードでは狙いを正確に定めるのは難しい。久隆はミノタウロスの渾身の一撃を軽く回避し、そのままハルバードの柄を伝って、ミノタウロスの懐に飛び込んだ。


 斬撃。


 ミノタウロスの首が刎ね飛ばされ、ミノタウロスが倒れていく。


 もう1体のミノタウロスもサクラから矢を受けて絶命した。


「片付きましたね」


「ああ。ミノタウロスの反応はない。アラクネの反応もない。レヴィアたちと合流することにしよう」


 サクラがほっと息を吐いて告げると久隆がそう告げてレヴィアたちの方に向かった。


「レヴィア! 無事か!」


「大丈夫なの! 全部やっつけたの!」


「よくやったな」


 久隆の言葉にレヴィアがそう告げて返してくる。


「しかし、アラクネが50階層までで終わりになってくれることを祈るのみだな。こんなのにしょっちゅう出て来られたらたまったものじゃない」


「全くなのね。久隆にも随分と無茶をさせているみたいだし……」


「気にするな。無茶をするのは大人の仕事だ」


 子供に無茶を強いるような大人にはなりたくない。それは東南アジアで子供兵を使っていた連中と本当に変わりなくなってしまう。そう久隆は思う。


「次で最後だが、どうだ? いけるか?」


「大丈夫です。任せてください」


 マルコシアはそう言いながらもフルフルの方を見つめた。


「フルフル。大丈夫なのか?」


「え、ええ。大丈夫です。ただ、宮廷魔術師は駆けまわったりするものではないので、そのせいで少し疲れが。それでも大丈夫ですよ」


「本当か? 無理な無理と言ってくれて構わない。責めることはしない」


「大丈夫です。レラジェさんたちを助けに行きましょう」


「分かった」


 フルフルは顔色も悪いし、明らかに疲労している。


 それでも久隆たちは49階層までの道のりを開き、久隆は50階層の偵察にいかなければならなかった。50階層に何が潜んでいるかによって、準備の必要な物も生じるからである。40階層で準備は足りるのか、それとも地上まで戻る必要があるのか。


「では、49階層だ。行くぞ」


 久隆たちは慎重に49階層への階段を下る。


 そして、すぐさま索敵。


「ミノタウロス2体。アラクネ、およそ3体。フルフルの付呪は必要ないだろう」


 ミノタウロス2体程度なら久隆たちでも楽勝──なお、命の危険が伴うことには変わりない──だし、アラクネ3体ならばレヴィアたちだけでも十二分に勝てる。


「今回もそれぞれ分担してかかろう。レヴィアたちはアラクネを。俺とサクラはミノタウロスを。それでは索敵を始める」


 久隆は無人地上車両(UGV)を走らせる。無人地上車両(UGV)はダンジョンの地形を把握し、アラクネの数と位置を把握し、ミノタウロスの武装と位置を把握してから戻ってくる。これがあるだけでも十二分にダンジョンの捜索は捗るものだと久隆は思った。


 ここには海軍時代のように無人地上車両(UGV)に電子攻撃を仕掛けてくる民兵などもいないので無人地上車両(UGV)は大活躍だ。


「索敵完了。アラクネはこの位置。ミノタウロスはこの位置だ。用心してかかれ」


「了解」


 全員が頷く。


「それでは始めよう」


 結果だけ述べると49階層の戦闘は戦闘にもならなかった。


 ミノタウロスはあっという間に久隆とサクラによって屠られ、アラクネはレヴィアたちに駆除された。かかった時間はせいぜい5分程度。


 そして、久隆たちはついに50階層に至る道のりを確保した。


「強行軍だったが、なんとか50階層だ」


「ここまでレラジェたちの痕跡はなかったの……」


「となると、やはりエリアボスか」


 もう捜索していないのは50階層だけである。


「俺とサクラで偵察を行う。レヴィアたちは待機していてくれ」


「分かったの」


 そこでレヴィアが久隆の作業着の裾を握った。


「久隆。戻ってきてね」


「ああ。当然だ。戻ってくる」


 久隆はそう告げてレヴィアの頭をポンポンと叩くと、50階層に潜り始めた。


「視界が悪いな」


「ええ。ですが、広い空間のようです」


 50階層の光はうすっらとしていて、内部の様子がよく見えない。


 だからと言ってここで迂闊にライトをつけるわけにはいかない。


「それから、この臭いは腐臭だ……」


 死体の腐った匂いがする。


 東南アジアで何度も嗅いできた嫌な臭いだ。


「何か巨大なものが動き回っている。一度戻って、無人地上車両(UGV)に偵察を任せよう。嫌な予感がする」


「私もです」


 久隆たちはそう告げ合って50階層の入り口に戻ろうとする。


 その時、久隆の足に何かが引っ付いた。


「糸……?」


「久隆さん。すぐにそれを切ってください。何かが向かってきます」


「分かった」


 久隆は斧で糸を叩き切ると、50階層の階段を目指してかけた。後方からは何か巨大な物が追いかけてきている。久隆たちは全速力で逃げる。


 逃げ続けて、ダンジョンの階段を上り切るころにはもう何かは追いかけてきていなかった。何とか逃げきれたのだ。


「何だったんだ。今のは」


「我々は音を立てていませんでした。ですが、久隆さんがあの糸に触れた瞬間、向かってきました。これは間違いなく蜘蛛の行動ですよ」


「蜘蛛か……」


 そういえばここまで唐突に非人型魔物としてアラクネが出没していた。


「今度は無人地上車両(UGV)で探ってみよう。俺たちはここに残る」


 久隆は階段から無人地上車両(UGV)を繰り出し、50階層の様子を探る。カメラを暗視モードに切り替え、薄暗いフロアがどうなっているかを探る。


「畜生。レヴィアは見ない方がいい」


 久隆はレヴィアをタブレット端末から遠ざけた。


 タブレット端末の映像には死体が映っていた。魔族の死体だ。糸に巻かれて、そのまま衰弱死したと思われる魔族の死体が映っていた。


 ダンジョンの構造はバイコーンのときの構造とほぼ同じだ。だが、広い。


「レラジェだ」


「生きてるの!?」


「生きてる。こっちに目配せして合図した。レラジェは生きているぞ。彼女の部隊は無事だ。全員が拘束されているが、生きている」


「やったのね!」


 久隆たちはついにレラジェたちを発見した。


……………………

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[良い点] おお!生存は絶望的と思ってたが生きてるのか!
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