48階層のミノタウロス戦について
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──48階層のミノタウロス戦について
久隆たちは2時間ほどゆっくりと休んだ。
「そろそろ動けるか?」
久隆がレヴィアたちに尋ねる。
「いつでもいけるの!」
「は、はい。もう大丈夫です」
フルフルも元気を取り戻していた。
「残り48階層と49階層だ。そこまでは突破しておきたい。もうひと頑張りだ。それから補給と休息のために40階層に戻る。敵によって装備を変更しなければならないなら、それを取りに地上まで戻る。何はともあれ、進むのは49階層までだ」
「了解」
50階層のエリアボスに挑むつもりは久隆にはなかった。
50階層のエリアボスの情報は少なすぎるし、今日はかなりの強行軍だった。これ以上の消耗は敗北に繋がる。ここら辺で一度引き上げておくべきだ。そう久隆は考えていた。
「では、いつものように慎重にな」
久隆たちはゆっくりと階段を降りていく。
「ミノタウロス16体。アラクネおよそ10体。いつも通りの方法で行くぞ」
「しかし……」
「安心しろ。しくじる気はない。そっちにも期待している」
マルコシアが何か言いかけるのに久隆がそう告げた。
「まずは偵察だ」
久隆は無人地上車両を走らせる。
無人地上車両は地形を把握し、アラクネの位置とミノタウロスの位置を把握して、久隆たちの下に戻ってきたのだった。
これでこの階層については把握できた。
「フルフル。付呪を頼む」
「……分かりました。『賢きものよ、より多くの叡智を極め、力を得よ。賢者に力を』『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士さらなる力を』」
そこでフルフルがややよろめいた。
「大丈夫か、フルフル。無理をさせたか?」
「だ、大丈夫です。ただ、ちょっとだけ体力が……」
「49階層まで持ちそうか?」
「あ、安心してください。大丈夫です」
49階層はいつものように魔物が少ない階層だろう。フルフルの付呪の重ね掛けはここまでで終わりにして置くべきかもしれない。
「では、行くぞ。各個撃破だ」
「分かったの」
久隆たちは二手に分かれて、49階層を進んでいく。
そして、久隆はミノタウロスの眼前に現れた。
「勝負だ。デカブツども」
久隆の宣言にミノタウロスたちが雄叫びを上げた。
そして、久隆を目指して突撃してくる。
「甘い」
ミノタウロスの得物はハルバード。
久隆はハルバードが振り下ろされるのに、ハルバードを弾きつつ、ミノタウロスの股間めがけて斧を振り上げた。ミノタウロスは叫び、暴れまわる。それによって味方のミノタウロスが巻き込まれ、結果として2体のミノタウロスがやられた。
久隆は用の済んだミノタウロスを首を刎ねて始末すると、残りのミノタウロスに立ち向かう。ミノタウロスたちは血気盛んに突撃しては、攻撃を繰り広げる。
久隆は攻撃を躱し、弾きつつ、攻撃のタイミングを窺う。
ミノタウロスが大きく斧を振り上げた。チャンスだ。
久隆は一気にミノタウロスの懐に飛び込むと、ハルバードの狙いが大きくずれたミノタウロスの頭を叩き割った。
そのミノタウロスもろとも叩き切ってやろうとする別のミノタウロスの動きをサクラが阻止。矢が飛び、ミノタウロスが倒れる。相変わらずの精密さとタイミングの良さだ。久隆とは息がぴったりである。
そして、また牛頭の怪物が押し寄せる。
久隆は敵が攻撃態勢に入る前にミノタウロスの手の腱を切断。ミノタウロスを攻撃不能にする。そして、そのままの勢いで攻撃を継続した。手の腱が切り落とされたミノタウロスからハルバードを奪い、思いっきり振り回す。これによって手の腱を斬られたミノタウロスと別のミノタウロスの2体が撃破された。
さらに迫るミノタウロス。
久隆とサクラはあらん限りの力を以てして戦った。
ミノタウロスの頭を斧で叩き割り、ミノタウロス頭を叩き割り、ミノタウロスの頭を射抜く。ミノタウロスは急激に数を減らしていき、恐怖のひとつでも生じてよさそうなものだが、相変わらずのダンジョンコアの人形だった。
「サクラ! まだいけるか!」
「大丈夫ですよ!」
「よし。もうひと踏ん張りだ」
ミノタウロス残り6体。
久隆もミノタウロスとの連戦には流石にひやりとするところが多かった。彼は大胆に戦っているように見えるが、それは違う。彼は小心者だ。英雄じゃない。生き残ることを、任務を全うすることだけを考えている。
だから、彼は命の危機に常にさらされ続ける状態にあって、大胆に振る舞わざるを得なかったのだ。思い切ってやらなければ、逆に命の危険が生じる。ならば、この与えられた力をフルに使って、敵を攻撃しなければ、と。
暴力のベクトルは定まっている。冷静に制御されている。力に振り回されるようなことにはなっていない。久隆は何度もの付呪の重ね掛けを経て、力を制御する術を完全に身に付けていたのだった。
今の久隆ならばこのフルフルから与えられた力を完全に使いこなせる。
それを証明するように再びミノタウロスの頭が刎ね飛ばされた。もう1体のミノタウロスにはサクラが矢を叩き込む。
「残り4体」
久隆がじっとミノタウロスたちを睨みつける。
ミノタウロスは恐怖を感じることなく突撃を続ける。1体、また1体と突っ込んでくる。ダンジョンの壁すら破壊するような怪物が迫ってくる。
今は久隆が楽々と倒しているように見えるのでミノタウロスの戦力を誤りそうだが、実際のミノタウロスはとても恐ろしい怪物である。ダンジョンの壁や天井すらも破壊する力、音がすればすぐにやってくる俊敏さ、筋肉に覆われた主力戦車。
だが、それも今の久隆を前にしては無意味なものである。
彼はミノタウロスを上回る攻撃力と俊敏さを持ち合わせている。防御力こそないものの、それは俊敏さで補っている。
ミノタウロスの攻撃を前にしては防弾チョッキだろうが無意味だ。重機が猛スピードで突っ込んでくるのが防弾チョッキ程度でどうにかなるはずがない。
それぐらいミノタウロスは危険で、久隆は今も命がけの綱渡りをしているのだ。
しかし、それでも久隆は恐怖を殺して、ミノタウロスに立ち向かう。
ハルバードの一撃が振るわれる。久隆はそれをステップを踏んで回避し、振るわれたハルバードにかかと落としを決める。ハルバードに響いた衝撃がミノタウロスに伝わり、ミノタウロスの腕がしびれる。
そして、隙が生じたミノタウロスはあっという間に殺される。
隙を見せれば死ぬ。それはどちらにも対等なルールだった。
サクラは久隆の隙を埋めるためにミノタウロスを狙撃し、仕留める。久隆がこれだけの数のミノタウロスを相手に勝てて来たのはサクラのおかげだろう。
「残り2体」
久隆はミノタウロスと対峙する。
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