47階層を駆け抜けて
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──47階層を駆け抜けて
50階層までには着実に迫りつつある。
47階層、48階、49階層の3つの階層を抜ければ50階層だ。
「レラジェたちはエリアボスの場所でしくじったのかもしれない」
久隆がレヴィアたちに語る。
「ここまでレラジェたちの痕跡はなかった。血の跡もない。となると、レラジェはエリアボスを相手にして、気づかれた可能性がある。この先にレラジェたちの痕跡があるかは不明だが、この階層のようにアラクネとミノタウロスの階層を潜り抜けているのだから、可能性としてはやはりエリアボスだろう」
久隆が語るのをレヴィアたちは静かに聞いていた。
「そこで、だ。49階層までの階層をクリアにし、50階層への道をきり開いたら、一度40階層に戻る。レラジェたちほどの猛者を戦闘不能、行動不能にするほどの敵だ。準備不足で挑みたくはない」
「けど、レラジェたちが……」
「気持ちは分かる。俺もすぐに助けにいってやりたい。だが、俺たちまでやられたら、誰が全員を助けに来てくれるんだ?」
レヴィアが告げかけると久隆がそう告げた。
「それもそうなの……。レヴィアたちだけが最後の綱なのね」
「今はな。後続が育ってくれば数チームで捜索が行えるだろう。それまでは自分たちでどうにかするしかない。そして、エリアボスは対策を念入りに行ってから攻略したい。むやみやたらに突っ込んで全滅するのはなしだ」
50階層のエリアボスが何なのか。
まずはそれを把握することだ。しかし、レラジェたちはそれを行おうとして失敗した節がある。正体を確認するのも危険な魔物というのは30階層のグリフォンとヒポグリフレベルだ。そして、実力は恐らくそれ以上。
「確実に敵の正体を確認してから仕掛ける。万全の準備とコンディションで。そして、確実にエリアボスを仕留める」
久隆が全員にそう告げ、全員が頷いた。
「よろしい。では、次は47階層だ。フルフルたちに負担を強いる事になるが、まだ大丈夫そうか?」
「まだ大丈夫です。行けます」
「ダメなときは正直にダメと言えよ。部下のコンディション把握も上官の仕事だ」
久隆たちはそう告げて47階層に降りる。
そして、索敵。
「ミノタウロス14体。アラクネがおよそ15体」
「配分が滅茶苦茶なのね。どうするの、久隆?」
「上層と同じだ。俺とサクラでミノタウロスを仕留めてくる。そして、レヴィアたちはアラクネを1体残らず、確実に殲滅してこい」
「けど、数が……」
「確かに数が多い。だが、やれないことはない」
「流石は久隆なのね。勇敢なの」
レヴィアがコクコクと頷く。
「勇敢と蛮勇は違いますよ……。本当にその数を相手にして勝機はあるのですか?」
「ある。お前たちが確実にアラクネを押さえてくれれば、俺とサクラがミノタウロスをぶっ潰してくる。任務は果たす」
フルフルにそう告げながら久隆は無人地上車両を展開した。
無人地上車両は地図を作成しながらアラクネとミノタウロスの位置を把握する。アラクネは東側に、ミノタウロスは西側に。ミノタウロスの武装は長剣に盾。
「これで敵とこの階層の地形についてはある程度分かった」
久隆が無人地上車両が把握した地形をノートに書き込む。
それから敵の位置を記し、全員で情報を共有する。
「それは、始めよう。フルフル、頼む」
「分かりました……。『賢きものよ、より多くの叡智を極め、力を得よ。賢者に力を』『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士さらなる力を』」
フルフルがそう詠唱する。
「準備完了です」
「よし。行ってくる、お前たちもしっかりとな」
「ええ」
久隆たちはミノタウロスの方に向かい、レヴィアたちはアラクネの方向に向かう。
「そろそろだぞ、サクラ」
「ええ。準備はできています」
久隆たちはダンジョン内を駆け抜けると、ミノタウロスの前面に出た。
ミノタウロスたちは既に久隆たちに気づいており、やる気満々だ。
「悪いが、ここで全滅してもらうぞ」
久隆はそう告げて1体目のミノタウロスめがけて突撃する。
ミノタウロスは盾を構え、長剣を振りかざし久隆の突撃に応じる。
だが、久隆が突撃の勢いをつけて放った蹴りで盾は破壊され、ミノタウロスの姿勢も崩れる。そして、すかさず久隆が追撃する。
ミノタウロスの首を刎ね飛ばし、撃破。
もう1体のミノタウロスは自分たちの首が狙われていると理解したのか、そうではなくただ単なる防御の姿勢のひとつか、防御態勢を取りつつも久隆に向けて長剣を突き出す。久隆は突き出された長剣を回転するように躱し、その勢いで回し蹴りを長剣に叩き込む。ミノタウロスは長剣を思わず手放してしまった。
それが命取りとなった。
武器を手放したミノタウロスは盾で必死に自分を守ったが、盾ごと頭を叩き割られた。ミノタウロスの体がゆっくりと地面に倒れていく。
「サクラ!」
「了解」
そして、次のミノタウロスが久隆を襲おうとした瞬間、その眼球から脳までが矢に貫かれ、地面に向けて倒れていく。
久隆はそのミノタウロスの長剣を奪うと、別のミノタウロスめがけて投げつけた。
長剣はミノタウロスの喉を貫き、絶命させる。
「まだまだ先は長いな」
「確実に潰していきましょう」
「ああ」
久隆は自身の中で暴れまわる暴力への渇望と自身の力に振り回されそうになりながら、それでもなお作戦目標と行うべき戦術を頭と臓腑に刻み込み、体を正確にコントロールする。力は押さえつけない。ベクトルを間違わないだけだ。
久隆はミノタウロスに襲い掛かる。
武器を蹴り飛ばし、盾を破壊し、ミノタウロスの首を刎ね飛ばし、頭を叩き割る。
ミノタウロスたちは猛々しく久隆に襲い掛かる。剣を突き出し、剣を振り下ろし、剣を薙ぎ、とにかく久隆を押さえ込もうとする。
だが、久隆は止まらない。
突き出された長剣は奪われ、振り下ろした長剣は回し蹴りを食らって吹き飛び、薙いだ剣は斧で防がれて弾き飛ばされる。
その上、後方からはサクラがどこまでも正確な射撃で久隆を援護する。
その弓矢の威力も半端ではない。眼球を貫き、脳を貫き、完全に相手を仕留める。盾で防御しようとしたミノタウロスは盾を破壊され、その衝撃に揺さぶられている間に、久隆の斧を首に受けて息絶えた。
それもそうだろう。フルフルの付呪は生きている武器であるサクラのコンパウンドボウにもかけられていたのである。サクラのコンパウンドボウはより強力な威力を発揮するようになり、ミノタウロスを次々に射抜いていた。
斧で恐れを知らずにミノタウロスを次々に血祭りにあげる久隆。後方から正確な狙撃で相手を撃ち抜くサクラ。
もはやどっちが怪物に襲われているのか分かったものではない。
ミノタウロスに恐怖という感情があれば、彼らはわき目もふらずに逃げ出しただろう。だが、ダンジョンコアの生み出した怪物たちに撤退という手段は与えられていなかった。ただひたすらに目の前の侵入者に攻撃を仕掛けるのみ。
1体、また1体とやられてもミノタウロスは果敢に久隆たちを攻撃する。
久隆はその挑戦に応じ、ミノタウロスの首を刎ね、頭を潰し、腕を切り落とし、武器を奪い、首を裂き、首を貫き、確実にミノタウロスの数を減少させる。それに加えてサクラも援護射撃を加え、ミノタウロスを屠る。
ミノタウロスが壊滅したのは戦闘開始から15分後のことだった。
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