41階層の戦い
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──41階層の戦い
41階層に降りた久隆たち。
久隆たちは静かに、静かにオークジェネラルとオークロードとやらに接近する。
久隆が手鏡で確認すると、通りを曲がった先にオークをがっしりと鍛え上げたような魔物がいた。重装オークと同等の鎧を身に付けている。
「あれがオークジェネラルで間違いないか?」
「間違いなしです。オークジェネラルです。オークロードではないですね」
「よし。一斉に叩こう」
相手の数は6体。一斉攻撃で何体倒せるか。
「フルフル、付呪を。レヴィアたちは攻撃準備」
「はい。『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』」
フルフルが久隆とフォルネウス、サクラに付呪をかける。
「3カウントだ」
3──2──1──。
「今!」
「『吹き荒れろ、氷の嵐!』」
「『爆散せよ、炎の花!』」
「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」
レヴィア、マルコシア、フルフルが同時に詠唱する。
効果は絶大だった。1体のオークジェネラルが死亡し、残る5体も顔面などに重傷を負った。後は久隆たちが殴りつけるのみ。
「手前の仕留めます」
サクラの放った矢が手前のオークジェネラルの頭を貫き、オークジェネラルが絶命する。死体は倒れて金貨と宝石に変わる。
久隆たちは真っすぐ敵に突っ込んだ。
久隆はオークジェネラルの首を刎ねとばし、フォルネウスはオークジェネラルの首に短剣を突き立てて炎上させる。
これで既に4体のオークジェネラルが倒れた。
ここで追い打ちをかける。
久隆がオークジェネラルの頭を叩き割り、サクラが矢を放って敵の目を潰し、フォルネウスがトドメを刺す。
「さあ、お客さんだ。どうやら挟み撃ちにしようという脳みそはないらしいな。前方から一斉に押しかけてきている」
久隆はそう告げて斧を握りなおす。
オークジェネラルの大群が前方から押し寄せてきた。
久隆はしっかりとオークジェネラルを見据える。
「久隆様! オークロードが混じっています! オークロードはゴブリンロードと同じように周辺のオークの能力を強化するので気を付けてください!」
「上等」
久隆は押し寄せるオークたちの中でもひときわ大きく、飾りのついた兜を被ったオークを見据えた。
「サクラ! 射線を確保する! オークロードを撃ち抜け!」
「了解!」
まずはレヴィアとマルコシアの魔法攻撃が叩き込まれ、それから久隆たちが攻撃を仕掛ける。久隆はオークロードまでの射線を妨害しているオークジェネラルを切り捨て、サクラのために道を作る。
オークジェネラルたちはハルバードで抵抗してくる。確かにオークの上位互換だ。動きは素早いし、一撃一撃が重い。だが、それだけだ。
「サクラ! やれ!」
サクラの位置からオークロードまでの距離は約450メートル。
それでもサクラは迷わず矢を放った。
放たれた矢はオークジェネラルたちの間をすり抜けていき、オークロードの眼球を抉り、脳を貫いた。その一撃でオークロードは絶命し、後ろに倒れていき、金貨と宝石を残して消えた。
それと同時に、オークジェネラルたちの勢いが衰える。
「畳め!」
久隆が号令を発し、残るオークジェネラルを相手に大乱闘が繰り広げられる。
魔法が吹き荒れ、斧が振るわれ、短剣が燃え上がり、矢が獲物をしとめる。
最後の1体までオークジェネラルとオークロードが殲滅されたのは20分後のことだった。派手な戦闘になったが、疲労はさほどでもない。
「手応え的には上層のミノタウロスの方が面倒だな。感触はオークがちょっと強化されたぐらいに過ぎない。オークロードが傍にいるとちょっと面倒だったが」
所詮はオークである。
上層のミノタウロスは筋肉の塊である強力な攻撃力と機動力、守備力を持つ魔物だったが、オークはオークジェネラルだろうがオークロードだろうが、さほど違いはない。それに加えて、この階層にはやっかいなゴブリンもいない。
レラジェたちがここで苦戦して壊滅したとは思えない。
ミノタウロスだらけのモンスターハウスすら突破し、それでいて不可能であると判断すれば撤退するだけの判断力がある彼らがここで壊滅したとは思えなかった。
ならば、彼らは何にやられた?
「下層に潜ると魔物の生態が変わるのかもしれません」
「そうだな。俺たちが知っているのは41階層の情報だけだ。42階層以降の情報はない」
そこで久隆がコンパウンドボウを弄っているサクラに気づいた。
「サクラ。さっきはいいショットだった。あの距離で当ててくれるとは」
「そうですよ。最近のパラアスリート界隈でも的に当てられる距離は360メートル前後が世界記録何ですから。それにしても、この弓、なんだか丈夫になったような……。フルフルさんの加護を受けて思いっきり引いても壊れませんし」
「炭素鋼でできてるんだろう? そう簡単には壊れないだろう?」
「ええ。持ち手の部分は装甲車にも使われている複合素材です。けど、リムは人工筋肉なんですよ。だから、いつか破断するんじゃないかと心配になってったんですけど」
「人工筋肉が使われているのか?」
「最近のスポーツ用品は多いですよ。柔軟性があってタフな素材ですから」
「……確かにな。たが、ちょっと嫌な予感がする」
久隆はそう告げてレヴィアの方を見た。
「レヴィア。サクラの弓のレベルを見てもらえるか?」
「弓のレベルを?」
「そうだ」
久隆は少しばかり思い当たることがあった。
「レベル……。ん!? レベルがあるの! ステータスもあるの!」
「やはりか」
久隆はレヴィアの言葉に頷いた。
「ど、どういうことですか? 普通、武具にレベルなど付きませんよ? それを身に付ける魔族や人間のレベルはあっても! はっ! ま、まさか、この武具はそれそのものが生きているとでも……?」
「そうだな。この弓には生きた生物の部位が使用されている。俺やサクラの義肢と同じ、海洋哺乳類を遺伝子組み換えした人工生物の筋肉だ。それを加工して人工筋肉として利用している。つまりこの弓は部分的には生きている」
「まさか、そんな技術が……」
恐らく遺伝子組み換え云々の話は伝わらなかっただろうが、この弓が未だに“生きている”ことについては伝わっただろう。
サクラがコンパウンドボウのメンテナンスをしていたのは他のパーツの交換もあるだろうが、人工筋肉に対する栄養補給とナノマシンの調整もあったと思われる。人工筋肉はある程度の必須栄養素を定期補給してやるだけで、ほぼ永遠に使える。遺伝子のコピーミスなどはナノマシンが修繕して防ぐため、老化という現象は存在しない。
あくまで便利な工業素材のひとつ。それが人工筋肉であった。
今までは。
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