偵察部隊の行方
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──偵察部隊の行方
「頼めるか、久隆殿」
「その前に分かっていることを教えておいてもらいたい。敵の種類や規模については41階層だけでもいいので、教えてくれるか?」
「うむ。41階層にはオークジェネラルとオークロードが出没する。オークの上位互換だ。鎧を纏っており、規模は1階層だけで20体前後と見られている」
「オークの上位互換か。そんなものにレラジェがやられるとも思えないのだが」
「ああ。レラジェたちはさらに地下に潜っている。地下に何かあるのかもしれない」
「気を付けてかかろう」
久隆は頷くと、レヴィアたちを集めに戻った。
「じゃあ、レラジェたちは帰ってきていないの?」
「ええ。そうなのです。救援隊もどうなっているか分からず、我々としては救援に向かいたいのですが、隠密装備を持ったふたつの部隊が両方動けないとなると」
「それは問題なのね……」
レヴィアたちは他の魔族からレラジェたちのことについて聞いているところだった。
「レヴィア。レラジェたちの救援に向かうことになった。準備してくれるか?」
「おおー! 流石は久隆なのね! もちろん、いつでも準備はできてるの!」
「じゃあ、飯を食ったら出発だ」
久隆は同じ魔法使いたちからレラジェたちの様子を聞いていたフルフルたちと合流すると、重箱を開き、弁当を広げた。
「何があったと思う?」
「レラジェの偵察部隊は近衛騎士団の中で随一のものでした。それが行方不明となると、敵が相当危険なのか、何かの罠に引っかかってしまったか……」
「やはり罠はあるのか?」
「いえ。テンタクルなどのモンスターのことです。それからダンジョン内の固有植物。その中には花粉に幻覚作用を伴うものもあります」
「面倒だな」
フォルネウスの話を聞いて、久隆はガスマスクは必要だろうかと考えた。
民生品のガスマスクも販売されている。巡航ミサイルによる本土爆撃の折に生物化学兵器が使用される可能性があったので、ホームセンターでも未だに販売されている。今後の様子を見て、購入を検討するべきだろう。
「けど、レラジェさんたちがそんな古典的なトラップに引っかかる? テンタクルの出没する壁は経験があれば見分けられるし、ダンジョンの固有植物には近づかないのが鉄則でしょう? あたしは何か別の問題だと思うな」
「では、どのような?」
「そうだね。『姿隠しの外套』を無力化するような敵とか?」
「不可視が見えると?」
「一部の魔物は見えるらしいよ」
久隆は『姿隠しの外套』がどれほどの性能を持っているのか分からなかったので何とも言えなかった。日本国防四軍が採用しているような熱光学迷彩のように完全に姿を消してしまえるものなのか、それとも熱源は探知されるのか。
日本国防四軍が採用している富士先端技術研究所製熱光学迷彩は完全に姿を消す。雨には弱いが、敵がサーマルセンサーを使っても自分たちが探知されることはない。纏っていれば、まず発見されることはない。砂漠の中でも、市街地でも、ジャングルでも。
しかも、生体電気で発電し、流した汗などを分解してエネルギーに変えるので、いつまでも使用し続けることが可能だ。
果たして『姿隠しの外套』にそこまでの性能があるのか。
魔力がなければ動かせないと聞いていたので、魔力切れを起こすと使用不可能になるのは明白だ。だが、戦闘を避けていれば魔力はそう減らない。
熱源については情報不足だ。熱源を感知する魔物が存在するなら、その魔物に探知されて攻撃を受けたということも考えられる。
「レラジェたちは訓練を受けた兵士たちだった。そのことに間違いはないだろう。それを上回る何かがいるのか、あるは別のトラブルか。いずれにせよ、ここで考えていても分かりそうにない。まずは潜ってみるべきだろう。最大限の注意を払って、41階層から50階層まで。今回は絶対に油断できない。俺たちまで未帰還になったらいよいよ終わりだ」
久隆は力強くそう告げる。
「この中で一番魔物に詳しいのは?」
「あたしだと思います。魔物学も受けていたので」
「なら、マルコシア。これから出没する魔物についてはお前に識別を頼む。危険なものであれば早期に警報を発してくれ」
「了解!」
オークの上位互換だけならば、レラジェたちがどうこうなるとは思えない。
何か別のものが潜んでいる。そんな危険を感じた。
「では、昼飯を済ませたら潜るぞ。殲滅しながら、各階層をくまなく捜索する」
久隆はそう告げておにぎりに食らいついた。
和やかな昼食という風にはならず、ピリピリした昼食となった。
サクラも不安の色が見える。敵の正体が分からないのが不安なのだろう。
海軍の任務でも敵の規模や種類が分からないのは常に不安材料だった。情報戦はほぼ日本情報軍が行うため、情報は日本情報軍から提供されるものになる。
日本情報軍のやり方はともかくとして、彼らの情報収集能力は優秀だった。空軍から分捕った戦術級中型ドローンから戦略級大型ドローン、現地におけるヒューミント、ターゲット周辺の携帯電話やパソコンのアクセス記録と言った電子情報の収集。
それでもなお敵の規模や練度などが分からない場合もあった。そういう時に限って、作戦は酷くタイトなものになるのである。
「全員で生きて帰るぞ。いいな?」
「おー!」
レヴィアだけが暢気にしているせいか、他のものたちの緊張も少しほどけた。
「久隆さん。もっと詳細な情報収集は?」
「いや。べリアの場合と違って、こっちは捜索地域が限定されているし、命の危機に関わる状況であると分析している。なるべく捜索を急ぎたい」
「そうですね。ですが、慎重に行きましょう」
「ああ。もちろんだ」
久隆はサクラの意見に頷いて見せた。
「全員、少しでも異常を感じたら、即座に報告しろ。その報告のおかげで友軍が救われることもある。細かなことだろうと気にせず報告してくれ」
「了解です」
「では、潜るぞ」
41階層以降。
レラジェともうひとつの偵察部隊が行方不明になった階層。
久隆たちは無事に通過できるだろうか? 久隆たちは無事にレラジェたちを救出できるだろうか? それが今まさに試されようとしていた。
久隆は慎重に41階層に降りる。
そして、すぐに索敵を行う。
「オーガ並みの重量はあるが、オーガとは異なるものが18体。うち1体はより重い」
「オークジェネラルとオークロードですね。間違いないですよ」
「ああ。アガレスもそう言っていた。ここまでで異常と見做せるものはない、と」
オークの上位互換程度に後れを取ったりしないだろう。
交戦して見れば分かる。
交戦の際は油断はするな。相手はまだ知らない敵だ。何が起きるかは分からない。
「こっちだ。こっちに小さな群れがある。こっちから叩いて、それから他を相手にしよう。隠密はギリギリまで保つ。いいな?」
「了解」
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