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勝利の知らせを届けよう

……………………


 ──勝利の知らせを届けよう



 久隆たちがワームに勝利したという知らせは久隆たちが30階層に帰ってきてすぐに伝わった。レヴィアとマルコシア、イポスが語ったからだ。


「久隆殿! ワームにも勝利なされるとは。このアガレス、感服いたした」


「ありがとう。勝利を喜んでもらえて嬉しい。早速だが、40階層より下に偵察部隊を派遣してくれるか。出没する魔物の種類。規模。モンスターハウスの位置。エリアボスの種類。分かる限りのことを掌握してくれ。どれくらいかかる?」


「ふうむ。3日は見ておくべきかもしれない」


「そうか。では、任せる」


 レラジェたちの指揮権を握っているのは久隆ではない。アガレスだ。


 久隆は外部の人間として協力を要望することはできる。だが、命令はできないし、要請もできない。それも当然だろう。久隆はもはや軍人ではなく民間人だし、日本国とヴェンディダードに国交はない。


 今の状況がおかしいのだ。まるで災害派遣で協力しにやってきたアメリカ軍に現地の日本人ボランティアが兵士を借りて、指揮しているような状況なのだ。アメリカと日本は国交があるが、ヴェンディダードとは国交もないのだからこれより酷い。


 久隆にできるのは外部の人間として、協力を要望し、向こうの要望に応えるということぐらいなのである。命を懸けて戦っていようとなんだろうと、軍隊における指揮系統を乱すべきではない。アガレスが指揮官であり、久隆は外部の人間として彼の指揮下で戦う。少々のイレギュラーな立場だが、致し方ない。


 幸い、アガレスは理解のある人間なのでその辺を厳格にしようとは考えていないようだ。柔軟に協力を受け入れる。できた指揮官だ。軍の指揮官ならば、現地の民間人の協力を取り付けることもできなければならない。民間人を戦争に巻き込むのは犯罪的かもしれないが、友好的な関係を築いておくことは生き残る上で役に立つ。


 そんなわけで久隆の立場は受け入れられ、今こうして協力し合っている。


「上層の掃討はどうなってる?」


「定期的に行っている。安心して地上に帰ってもらいたい」


「助かる。では、偵察部隊の件、よろしく頼む」


 久隆はそう告げて立ち去ろうとして、思い出したことがあったので戻った。


「何か医療的な援助が必要な魔族はいるか?」


「ああ。上層の掃討で負傷した兵士が何名かいる。29階層の生存者の中に回復魔法が使える人間がいるのは幸運だったが、生存者たちはまだまだ疲弊している。よければ、何名か地上で治療してもらえるだろうか?」


「構わない」


 久隆たちは負傷兵のうち、自分で歩けるものたちを選び、地上を目指すことになった。負傷者たちは矢を受けていたり、切り傷を負っていたり様々な負傷をしているが、どれもまだ命に係わるものではない。


「それでね、それでね。ワームがそこでぐわーっとひっくり返って、レヴィアたちを襲ってきたの! でもサクラがワームの目を撃ち抜いて、久隆が斧で頭を叩き割ったのよ! それはもう凄い戦いだったの」


「おお。それは……。凄まじい……」


 レヴィアは魔族たちに40階層の戦いについて語っていた。


「レヴィア、帰るぞ。フルフルとマルコシア、フォルネウス、サクラを探さないとな」


「フルフルとマルコシアは魔力回復ポーションの補給中なの。フォルネウスはウァレフォルたちに連れていかれたの。サクラはレラジェと話していたの」


「そうか。順に回収していくか」


 久隆はそう告げるとまずはフルフルとマルコシアを探した。


「他の植物も試してみるべきかもしれませんね」


「そうだね。効率のいい植物がいるかも」


 フルフルたちは試験管に収められた魔力回復ポーションを眺めながら唸っていた。


「フルフル、マルコシア。地上に戻るぞ」


「は、はい。その、この植物を買った店にもう一度行けるでしょうか?」


「ホームセンターか? 構わないぞ」


「ありがとうございます。いろいろな植物を試してみたくて」


「役に立てることならなんなりと手を貸そう」


 魔力回復ポーションがより多くの魔力を回復させるようになるならば、久隆としても助かる話だ。フルフルたちの魔法は強力である。このダンジョンという空間で、かなり当てになる遠距離火力だった。


 それに今のフルフルには付呪の重ね掛けという技もある。


「次はフォルネウスだが……」


 何やら騒ぎになっている場所を久隆は見つけた。


「フォルネウス! お前ひとり上達してずるいぞ!」


「そうだ、そうだ! 久隆様にどんな訓練を受けさせていただいているんだ?」


 どうやら騒ぎの中心にはフォルネウスがいるようである。


 また絡まれてしまってと思いながら久隆が騒ぎの方向に向かう。


「べ、別にこれといって特別なことは……。だけど、久隆様は自分たちの意志を尊重してくださるよ。それでいて指揮は的確だ。最近、久隆様を見て、指揮について学べて来たんじゃないかって思うぐらいだ」


「お前もなかなかやるな。だが、俺たちもすぐに追いつくからな! 俺たちだって魔物の掃討で実力を磨いているんだ。久隆様のマニュアルのおかげであまり犠牲者を出さずに掃討できてる。あの人についていけば間違いない」


 魔族たちはうんうんと頷く。


「フォルネウス。そろそろ地上に戻るぞ」


 そこで久隆が声をかけた。


「久隆様だ!」


「お疲れ様です!」


「レヴィア陛下もいらっしゃるぞ!」


 近衛騎士たちは久隆とレヴィアに頭を下げる。


「こちらこそ、助かっている。ダンジョンの魔物を掃討してくれているおかげで、自由に行き来ができる。これからもよろしく頼む」


「はいっ!」


 近衛騎士は一斉にそう告げると、フォルネウスを前に押し出した。


「こいつのこと、これからもよろしくお願いします」


「ああ。任せておけ」


 こうしてフォルネウスを回収。


「最後はサクラだが……」


 久隆はダンジョンの中を見渡す。


 そこでようやくサクラの姿を見つけた。サクラは隅の方でレラジェたちと話している。どうやらレラジェがコンパウンドボウに興味を示しているらしい。


「サクラ。コンパウンドボウのレッスンか?」


「はい。魔族の方々は遠距離火力を魔法に頼りがちなので、弓もあったほうがと」


「確かにな」


 久隆たちもサクラが加わるまでは遠距離火力は魔法オンリーだった。敵はゴブリンですら弓矢を使ってきていたというのに。


「しかし、整備や取り扱いは難しいんじゃないか?」


「簡単にはいきませんね。実戦で使用するには訓練が必要です。なので今は見本を見てもらうだけに留めています。彼らが本格的に取り扱いを望むなら、訓練の方は私が協力するつもりです」


「その点は任せた」


 サクラは指揮官としても、教官としても、ちゃんとした技能がある。任せておいて間違いはないだろう。


「じゃあ、全員、地上に戻るぞ」


 久隆たちは負傷者を連れて地上に戻っていく。


……………………

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