ワーム討伐
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──ワーム討伐
久隆は斧で盾を叩きながらワームを誘導する。
ワームは怒り狂ったかのように身をのたうたせながら、着実に久隆たちを追いかける。久隆たちはワームが火炎放射を行う前に曲がり角を曲がり、ダンジョンの中を走り回ってはワームを目的地まで誘導し続ける。
炎が放たれ、後方が燃える音がする。フォルネウスは額に汗を滲ませている。久隆も叫び出したくなったが、プロとしての意識がそれを抑え込んでいた。久隆たちは廊下を曲がり、曲がり、曲がり、火炎放射を背後で感じながら、ワームを誘導し続ける。
「そろそろ目的地だ! 盾を構える準備をしろ!」
「は、はい!」
久隆たちが最終的なゴールとする廊下は直線だ。曲がり角のような逃げ道はない。久隆たちは盾を構え、ワームの進んでくる方向を向き、じりじりと後退する。
やがて曲がり角からワームが姿を見せ、火炎放射を久隆たちに浴びせる。
久隆たちは盾で火炎放射を防ぎ、ワームが突撃してくることに備えながらワームを最終的な誘導地点まで引き寄せる。
そして──。
「こちら久隆! ワームは位置についた!」
久隆はワームを完全に廊下に誘い込み終えた。後は後方を塞げば、ワームに逃げ場はない。鱗という装甲が剥がれるまで魔法で殴りまくればいいだけだ。
「久隆! いくの!」
「おう! やれ!」
レヴィアたちは飛び出し、ワームの頭部に向けて魔法を叩き込む。
「『降り注げ、氷の槍!』」
「『爆散せよ、炎の花!』」
氷の槍がワームの頭上に降り注ぎ、爆発がワームの頭を弾く。
「『賢きものよ、より多くの叡智を極め、力を得よ。賢者に力を!』」
さらにフルフルの付呪が加わり、魔法攻撃は威力を増す。
ワームは暴れ狂っていた。
突破口を開こうと前方の久隆たちに向けて炎を浴びせ、体当たりする。久隆たちはなんとかそれに耐えていた。ワームも完全に封じ込められて、勢いが付けられないので、威力の少ない体当たりしかできない。
炎の熱は鋼板を赤く染めることもあるが、握っていられない熱さではない。それよりも盾の間から漏れてくる炎が体を掠めて行く方が辛いぐらいだ。
「フルフル! 付呪をこっちにも頼む!」
「わ、分かりました! では、『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」
「いいぞ!」
久隆はワームの突撃を抑え込むだけではなく、ワームを盾で殴り始めた。
ガンガンガンとワームの顔面が殴りつけられて、ワームは火炎放射すら行えなくなる。魔法は今も降り注いでおり、既にワームの鱗は半分ほど剥げている。
「フォルネウス! 絶対に通すなよ!」
「了解!」
久隆たちはワームの顔面を殴り続けながらも、時折放たれる火炎放射に耐える。火炎放射は久隆たちの盾を焼き、久隆たちの体を掠める。火傷ができているのが分かるが、まだ耐えられる。それに主に火を浴びる足は義肢だ。痛みはほとんどない。
「くたばれなのー!」
レヴィアの魔法がついにワームの装甲を剥がしきった。
「いけーっ!」
すかさずマルコシアが魔法を叩き込む。ワームの頭部付近が爆ぜ、ワームが地面に叩きつけられる。だが、ワームはまだ消滅していない。
「こいつ、まさか」
ワームは久隆がそう呟いた瞬間、久隆たちの構える盾を這い上り、方向転換した。
ワームの頭部がレヴィアたちを捉える。
「退避して!」
サクラが叫びレヴィア、フルフル、マルコシア、イポスを退避させ、矢を番えたコンパウンドボウをワームに向ける。
そして、ワームが火炎放射を渦まかせた瞬間、矢が放たれた。
矢はワームの眼球を抉り、ワームが叫び声のような声を上げる。
「上等」
久隆は盾を投げ捨てると斧を抜いた。
そして、サクラたちを追撃しようとするワームの鱗が剥がれた頭部に斧を突き下ろす。一度では止まらない。ならば、もう一度。徹底的に久隆が斧でワームの頭部を叩く。
そして、ワームは動かなくなり、大量の金貨と宝石を残すと消え去った。
「やったぞ」
久隆は額の汗を拭ってそう告げた。
「やったの! ワームに勝ったの!」
「ああ。レヴィア、お前たちが今回のMVPだ」
レヴィアたちがワームの強固な装甲を剥がせていなければ、久隆がトドメを刺すことも不可能だっただろう。
久隆とフォルネウスが壁を作り、レヴィアたちが魔法を打ち込み、フルフルが戦力を増強させ、サクラが射抜き、久隆がトドメを刺した。
文字通り、全員が一致団結して戦ったからこそ、勝利できたのだ。
「よかったです、勝てて。これで40階層以降に潜れますね」
「ああ。まずは一度地上に戻ろう。レラジェたちの偵察結果を聞きたい」
久隆は盾に火炎放射を浴び続けたせいで熱され、汗まみれになっていた。
「久隆さん、お疲れさまでした」
「ああ。フルフルもな。全員がお疲れ様だ。チームワークの勝利だな」
フルフルが告げるのに久隆が頷く。
「……フルフル。最近、久隆様と距離近くない?」
「そ、そ、そんなことはないですよ! 普通です、普通!」
「ほんとー? 抜け駆けしようとしてない?」
「するわけないじゃないですかっ! も、もう!」
フルフルは耳まで真っ赤にしてそっぽを向いた。
「久隆様、盾はどうします?」
「また何かに使うかもしれない。その際にまたイポスの手を借りるのも申し訳ない。一度30階層まで運びあげておこう。40階層に拠点ができたら、一緒に下ろすとしようか」
「了解」
久隆はフォルネウスにそう告げてイポスの方を向いた。
「イポス。今回は助かった。おかげで無事にワームを討伐できた。お前のおかげだ」
「いえいえ。皆さんの団結力の勝利ですよ」
「情報があったから団結できたんだ」
イポスのワームの攻略情報は貴重な情報だった。
これからダンジョンを潜るにつれて魔物が凶悪化していくなら、これからも経験者の言葉を聞くことになるだろう。
「さあ、凱旋だ。30階層にいるみんなに勝利を知らせよう。俺たちは勝利し、そして次の階層に挑む準備はできていると。べリアを助け出し、ダンジョンコアを制御し、元の世界に戻る支度は着々と進んでいると」
「おー!」
久隆たちは30階層に凱旋する。
あとはアガレスの部下たちが40階層に拠点を構え、レラジェの偵察部隊が40階層より下の情報を持ち帰ってくれるのを待つばかりである。
そして、情報が入手出来たら40階層より下に挑む。
正直なところ、30階層から40階層では一部事前情報なしで突入したが、危険だった。それが40階層より下となるとどのような魔物が出るのか判断もつかない。どのような脅威があり、どのように対処するべきか分かっていなければ、迂闊に踏み込むべきではない。
今回は完全にレラジェたちの帰りを待つことになる。
それでも着実に進んでいる。久隆はそう思った。
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