戦闘一時終結と小休止
本日2回目の更新です。
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──戦闘一時終結と小休止
ひたすらな戦闘に次ぐ、戦闘。
ミノタウロスを正面だけで相手するのはよかったものの、ミノタウロスの剛腕には久隆たちも息を上げるほどであり、そのミノタウロスがハルバードを振り回す度に久隆は寿命が縮まるような思いをした。
以前、一撃を凌いだことがあるが、あれは重機関銃の50口径ライフル弾を浴びたときに匹敵する威力だった。あれが弾き返せたのが不思議でならない。ステータスの上昇──というよりも人工筋肉の異常な成長がそれをなしたのか。
いずれにせよ、迂闊に食らえば吹っ飛ばされるでは済まないだろう。上半身と下半身を千切り飛ばされる。防弾チョッキはライフル弾に耐えるが、だがそれはライフル弾が体に突き刺さるのを阻止するだけであり、かつ今の防弾チョッキでは50口径のライフル弾に耐えられる性能はない。
当たれば死ぬ。
故に久隆は慎重だった。攻撃のチャンスが生まれるまで決して無意味に斬り込まない。相手と楽しくダンスを踊り、相手がミスをした瞬間に命を刈り取る。それだけを狙って攻撃のチャンスを待ち続ける。
慎重な久隆の動きに影響されて、フォルネウスもかなり安定して戦えるようになった。彼も攻撃のタイミングが来るまではハルバードと踊り続ける。
戦闘は30分以上続き、ようやく最後の2体となった。
最後の2体は久隆とサクラが仕留めた。久隆がミノタウロスの首を刎ね飛ばし、サクラがミノタウロスの眼球を射抜く。それで戦闘は終結した。
「なんとかやれたな……」
「や、やれましたね……」
久隆とフォルネウスが息を吐きながら告げる。
「疲れたのー……」
「流石にこれは……」
レヴィアとマルコシアも息が上がっている。
「だ、大丈夫ですか?」
戦闘中にレヴィアたちにも付呪をかけていたフルフルは比較的疲労が少ない。
「小休止しませんか?」
サクラは汗ひとつかいていない。だが、彼女の緊張感もそれなり以上だっただろう。何せ、フォルネウスに矢を当てないようにしつつ、ミノタウロスを射抜くのだ。それも彼女の援護が失敗したらフォルネウスは死んでしまう。
「よし。小休止だ。しかし、これより下に潜れるものか……」
こんなに疲労がたまるのではこれ以上下層に潜っても大丈夫なのかという疑問が生まれる。久隆たちは確かに今日はダンジョンで一夜を明かして、そして潜り続けるという選択肢を選んだものの、ミノタウロス相手に連戦は辛い。
「小休止とは言うが、しっかり休んでおけ。チョコレートもあるぞ」
「チョコレート!」
レヴィアが喜んでチョコレートに飛びついた。
「しかし、どう思う? これ以上潜り続けるか、疲労をしっかり回復してから挑むか。どちらが適切だと思う? 意見を聞かせてくれ。全員の体調を管理しなければならない」
こればかりは意見を聞かなければ分からない。
ここにいるメンバーはサクラを除いて均一の訓練を受けているとは言えない。フォルネウスの受けた訓練も、レヴィアたちの受けた訓練も、全く異なるものだと思われる。
兵士の質は均一であることが望ましいのだが、今の状況ではそれは望めない。
故にコンディション管理も難しくなってくる。
「レヴィアは少し休みたいのね……。魔力回復ポーションはあるけれど、緊張し過ぎて疲れたのね……」
「同感でーす……」
レヴィアとマルコシアは魔力を相当に消耗したので疲れ果てている。
「わ、私も無理な探索は厳禁かと思います」
フルフルは魔力に余裕があるが彼女だけ余裕があってもしょうがない。
「フォルネウス。お前も疲れているだろう」
「そうですね……。死ぬかもしれないと思うと余計に疲れて……。訓練と実戦は大きく違うというのが本当に分かった気がします。しかし、これも経験です。きっとレベルも上がったことでしょう!」
フォルネウスは前向きに疲れていた。
「ここらでひとつ。全員がどれほどのレベルになったか、確かめてみるか?」
「いいですね。モチベーションにも繋がりますよ」
久隆の提案にフルフルがコクコクと頷く。
「では、レヴィアがレベルを見てあげるの」
レヴィアはそう告げて人差し指と親指で円を作ってそれぞれを見る。
「フルフルはレベル10! マルコシアもレベル10! フォルネウスはレベル7。サクラはレベル3。久隆はレベル6なのね。でも、サクラも久隆もステータスが異常に高いの。久隆はもう信じられない数字だし、サクラもかなりの数字なの!」
「レヴィア陛下はレベル11ですよ! 限界突破です!」
「やったのね!」
通常はレベル10までで成長は止まると聞いていたが、どうやらレヴィアはその成長限界を突破したようである。フルフルとマルコシアはレベル限界かもしれない。久隆とサクラは相変わらずのレベルの値に似合わないステータスをしている。
「よし。全員、満遍なく強くなったな。だが、ある程度の休養を挟んでから35階層には降りる。35階層もまたミノタウロスラッシュだ。体力を相当消耗する。戦闘中にひとりでもばてたら、この捜索班は全滅するぞ」
「せ、責任重大ですね……」
「ああ。それぞれがベストを尽くしてこそ生き残れる」
フルフルが震えると久隆がそう告げた。
「ベストを尽くすために今は休め。今夜はどうせダンジョンで過ごす。36階層のモンスターハウスにはまだ挑まないが、そこまでのルートは開拓しておきたい」
久隆はそう告げてバックパックを下ろしマットを広げた。
「1時間後に出発だ。それまで休め」
「物資のやり取りも今のうちに済ませましょう」
レヴィアたちは使用した魔力回復ポーションの消耗を分配することで均等にする。
それが済むとレヴィアはフルフルに膝枕してもらって眠りについた。
流石のフォルネウスとマルコシアも今日は疲れ果てて眠っている。
起きているのは久隆とフルフル、そしてサクラだけだ。
サクラは黙々とコンパウンドボウの整備を行っており、フルフルはというと久隆の方を窺うようにして見ていた。
「あの、ちょっといいですか?」
「ん? なんだ?」
「付呪ですけど、実験になりますが重ね掛けができるかもしれません」
「本当か?」
フルフルの付呪は強力だ。
久隆は体感で身体能力が2倍ほど上昇したことを感じるほどだ。実際にどの程度強化されているかは朱門に頼んで人工筋肉の出力を調べなければ分からないだろうが、それでも顕著な強化が施されることは勘違いなどではない。
それが重ね掛けできるとすれば、ミノタウロスを相手に遥かに楽に戦える。
「ま、まだ分かりませんよ……。けど、可能性としてはできるはずなんです。魔力を大幅に消耗しますが、身体能力も魔力も両方ブーストできるはずなんです。ただ、そこまで身体能力や魔力を上げてしまうと、その反動がどうなるか分からなくて」
「そうか。確かに身体能力が上がればいいものじゃない。それをコントロールする技術が必要だ。そして、人間はそこまで適応力の高い生き物でもない」
戦車の主砲だけを大きくしても意味はない。それは弾薬携行数を減らすことになるし、乗員を訓練していなければ扱えないし、射撃統制システムが適切でなければ命中率は低くなるので意味がない。
そして、何よりあまりに巨大な砲を載せた反動で車体が壊れるようでは話にならないということである。巨砲には巨砲に似合った車体が必要とされるのである。第二次世界大戦のドイツ軍戦車のうち128ミリ砲を搭載したヤークトティーガーや、38センチ砲を搭載したシュトルムティーガーが、重戦車であるティーガーやティーガーIIの車体をベースにしているのはそういうことなのである。
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