30階層以降
本日2回目の更新です。
……………………
──30階層以降
久隆たちは泊まり込みの準備をして、ダンジョンに向かった。
「留守番、頼むぞ」
「土産に期待してる」
朱門と模擬人形に留守を任せて、久隆たちはダンジョンに向かった。
それからは一気に30階層まで降りる。
「こいつは……」
「グリフォンとヒポグリフがいなくなったからダンジョンが再構成されたのね」
30階層は天井は普通の高さになり、螺旋階段も普通の階段になり、そして明るく照らされていた。グリフォンと戦った時とは大違いだ。
「ふうむ。階層の高さまで弄るだなんて、俺の裏山の地盤はどうなってるんだ?」
「ダンジョンは異空間なの。現実の空間を無視して、ダンジョンはできているの。だから、いくらでも深いダンジョンが作れるし、周りに地下水路がある場所でもダンジョンは出現するの。そういうものなのよ」
「なるほどな。今さら驚いてはいられないな」
久隆はレヴィアの説明に頷くとアガレスを探した。
「アガレス。30階層以降の偵察は始まったか?」
「ああ。始まっている。今も偵察部隊が潜っているところだ。ここからはさらに魔物も凶悪化するだろう。緊張感をもってことに当たらなければな」
「べリアは大丈夫なのか?」
「彼女は魔法についてはヴェンディダードでもっとも優れている。人間の魔法使い1個連隊を相手にしても、彼女が勝つだろう。だが、不安がないわけではない。ダンジョンでは彼女の火力が十分に発揮できるか分からないし、遭遇戦となるとどうなるか」
「そうか」
これはいよいよ以て大急ぎで攻略しなければならないなと久隆は思った。
「偵察部隊はいつごろ戻りそうだ?」
「3時間ほどと見積もっているが、ダンジョンの構造次第ではもっと長時間になるかもしれない。逆に短くなることもあり得る。今の我々は待つしかない」
「いや。俺たちも同時に潜る。確かに30階層以降の状況が分からないのは不安要素ではあるが、その方が偵察部隊を無事に帰還させることができる。ダンジョン内で偵察部隊と合流したら直接彼らから情報を得る」
「そこまでいうのであれば。合言葉は決めてある。この階層ともあると魔族の声を真似する魔物も出たりするのでな。合言葉は『ネクター』に対して『アルケミスト』だ」
「分かった。覚えておく」
アガレスとはそこで別れ、久隆はレヴィアたちの方に戻った。
「偵察部隊の迎えに行く。30階層以降のことはまだ全く分かっていない。それぞれ油断しないように頼む。新しい魔物や既存の魔物の上位互換が出てくる可能性もある」
「了解なの!」
「よし。では、行くぞ」
久隆たちは31階層に続く階段の周りに集まる。
そして、ゆっくりと階段を降りていく。
そして、すぐさま索敵を開始する。
「ジャイアントオーガ2体、ゴブリンが12体、よく分からないサイズのものが4体。結構な大きさだが、これはなんだ……? オーガよりも大きく、ジャイアントオーガより小さい。速度はそれなりだ」
「うーん。分かりませんね」
フルフルたちもお手上げだった。
「まあ、いい。今回はそう言うこともあろうかと新装備を導入したんだ」
久隆はバックパックを下ろすと、そこから小さな機械とタブレット端末を取り出した。その機械はゴム製の無限軌道があり、Webカメラを装着することができるUSBポートが存在している。そして、既にWebカメラは装着されていた。
「ああ。もしかして……」
「そうだ。東南アジアの戦争で使っていた奴の民生版。頑丈さに不安が残るが、静粛性と機動性には問題ない」
久隆が取り出したのは無限軌道で地上を進む無人機だった。
無人地上車両。実用的な軍事目的の無人地上車両の歴史は2001年のアフガニスタン戦争や2003年のイラク戦にまで遡る。
タリバン政権崩壊後、フセイン政権崩壊後、ゲリラになった武装勢力が即席爆発装置を取り入れて、有志連合に対する攻撃に使用するようになってから爆発物処理班は端役から主役の地位に躍り出た。
だが、爆発物処理は危険な任務であり、ただでさえ戦争が長期化し、犠牲者が増え続けている戦争でこれ以上犠牲は増やせなかった。
そこで出てくるのが無人地上車両だ。
アイザック・アシモフの有名な小説から社名を取った自動掃除機で有名な会社が作ったちゃちな無人地上車両が戦争に登場する。
彼らは危険な爆発物処理の仕事を人間に代わって行い──実際は人間がゲーム機と同じコントローラーで動かしているので結局人間がやっているのだが──活躍した。路地に埋められた榴弾を束ねたような即席爆発装置から自動車に爆弾を詰め込んだ車両爆弾などを解体するのが彼らの仕事だった。
それから時代はロボットの時代になる。
アジアの戦争では大量のロボットが投入された。
無人地上車両はもはや歩兵分隊に必須のアイテムとなった。窓から投げ込んでも平気で動き、中の様子を探る無人地上車両。M249機関銃をマウントし、偵察と同時に攻撃を行う無人地上車両。物資を指定された場所に的確に届けるトラックサイズの無人地上車両。
ロボット、ロボット、ロボット。
戦場の3つのD。Dangerous。Dirty。Dull。それらの仕事はロボットがやってくれるようになった。兵士たちはより安全な戦場を戦った。
軍用ロボットは進化を続け、強力な人工筋肉でできた足を有し、山岳地帯で荷物を輸送するドンキーと呼ばれる輸送型無人地上車両。AIとセンサーによって狙撃手や対戦車ロケットを有する兵士、即席爆発装置の操作を行っていると思われる人物の位置を即座に割り出し、狙いを定め、攻撃を行うかどうかを聞いてくる戦車に搭載された無人銃架。
もう今は2040年代だ。防弾性があるのは当たり前だし、AIは脅威を自動的に判別できるし、モーターはより強力にロボットを動かす。40年前のちゃちな玩具で遊んでいた時代とは大きく異なるのである。
久隆たちも東南アジアの戦争ではこの手の無人地上車両を使っていた。これもドローンと同じく電子妨害によって機能不能になるが、ドローンと違って地上を密かに進むので目立つことが少ない。この手の無人地上車両をポイントマンが装備し、そのポイントマンの網膜投影型モニターで映像を見ながら戦闘を進めれば、狭い船内でも、建物内でも待ち伏せによる攻撃を防げるし、偶発的な遭遇戦にも応じられる時間が与えられる。
流石に軍用の無人地上車両は手に入らなかったので、今回はタブレット端末にリンクしたWebカメラを搭載している民生品を使用することになる。
……………………
本日の更新はこれで終了です。
では、面白いと思っていただけたらブクマ・評価・励ましの感想などお願いします!




