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グリフォンにトドメを

本日2回目の更新です。

……………………


 ──グリフォンにトドメを



 倒れたヒポグリフ。残るはグリフォンのみ。


「サクラ! グリフォンを引きはがせ!」


「了解!」


 捜索班と偵察部隊の指揮はサクラに任せているが、サクラに任せているのはその内側の指揮であり、部隊単位で動かす分には久隆が口出ししても指揮系統は乱れない。


「マルコシア! 次の魔法も1分後か!?」


「1分後です! それまでにグリフォンを引きはがさないと巻き込まれます!」


「よし。一撃食らわせて撤退に追い込むぞ」


 久隆はグッと斧を握った。


「フォルネウス! 叩き込め!」


「了解!」


 フォルネウスが刀身を燃やして、グリフォンを威嚇するが、グリフォンは既にその炎に自分を殺す能力はないと学習している。引く様子は見せない。


「よくやった、フォルネウス」


 だが、そのフォルネウスを飛び越えて久隆が斧を振りかざして現れたのには、流石のグリフォンも動揺していた。だが、久隆はその動揺を恐怖に変えるつもりだった。振り上げた斧を逃げようとするグリフォンの胸に叩き込み、大きく肉を抉った。


 グリフォンは恐怖を覚え、撤退していった。


 だが、それが命取りとなる。


「魔法! 叩き込め!」


 宮廷魔術師団の魔法が逃げようとするグリフォンに叩き込まれた。


 強烈な魔術を受けてグリフォンが地面に落下する。


「今だ! 叩け!」


 久隆は命令を下しながらも自身も突撃する。


 狙いはひとつ。明確な弱点であるグリフォンの頭部。


 そこに向けて斧を振り下ろした。グリフォンの頑丈な頭蓋骨に亀裂が生じる。


 さらにもう一撃。グリフォンの頭蓋骨は完璧に割れ、斧の刃がグリフォンの頭を貫き、グリフォンを死に追い込んだ。


 グリフォンの体は消えていき、金貨と宝石が残される。


「やったぞ……」


 久隆は安堵の息を吐く。


「やった! やったぞ!」


「勝利したんだ!」


 魔族たちも歓声に沸く。


「30階層攻略……」


 フォルネウスはそう告げながら震える手で短剣を鞘に納めた。


「くーっ! 勝ったの! レヴィアたちの勝ちなの!」


「やりました! やりましたよ、陛下!」


 レヴィアとフルフルも歓喜に沸いている。


「やりましたね、久隆様!」


「ああ。やったな」


 久隆は安堵だけで勝利の高揚感はなかった。


 この下にも恐らくダンジョンは続いているのだ。安易に歓喜することはできない。


 だが、自分たちは勝利した。それは明確な事実だ。


 30階層は攻略されたのだ。


「みんな、よくやってくれた。今日は祝ってくれ。だが、油断はしないでくれ。俺たちはまだダンジョンコアには達していない」


「はい!」


 勝って兜の緒を締めよ、だ。勝利で浮かれてばかりいるわけにはいかない。


「それから俺たちは20階層でアガレスに報告してくる。レヴィア、戻るぞ」


「久隆。魔族の死体があるの……」


 ああ。気づいてしまったかと久隆は表情を濁らせる。


「そうだな。先にグリフォンとヒポグリフに挑んで死んでしまったものたちだ」


「そうなのね……。でも、彼らの無念は晴らした。グリフォンもヒポグリフもレヴィアたちがやっつけてやったの。彼らは喜ぶと思う?」


「喜ぶに決まっている。自分たちを殺した憎い敵をお前たちはやっつけたんだ」


「うん。きっとそうなの。彼らのためにレヴィアたちは連中をぶっ倒してやったの。だから、だから、どうか安らかに眠ってほしいの……」


 レヴィアはそう告げながら涙を流していた。


「泣くな、レヴィア。俺たちは勝利したんだ。堂々としていていい」


「泣いてないもん。ちょっと目にゴミが入っただけだもん」


「そうか」


 強い子供だと久隆は思った。普通の子供ならもっと泣きじゃくっていただろうに。


「後でアガレスたちが供養してくれる。そうしたら、祈りに来よう」


「うん」


 久隆はレヴィアの手を引いて、死体から離れた。


 久隆たちは戦闘で負傷した兵士たちを並べ、軽傷のものは20階層で朱門の治療を受けさせることになった。負傷者の内訳は重傷者3名、軽傷者4名だ。あのヒポグリフを相手には少ない損害だと言えた。


 そして、死人は出ていない。幸いなことに。


 魔族たちは応急処置キットで負傷者の傷口を洗浄し、包帯を巻く。十分な物資があれば、彼らもちゃんとした応急処置が行えるようだ。それとも朱門から応急処置について教わったためだろうか。


 いずれにせよ応急処置がちゃんとしていれば、その後の治療における生存率は上がる。朱門が治療するにせよ、魔法使いたちが治療するにせよ。


「我々はここで拠点づくりを開始します。久隆様、アガレス閣下への報告はお任せします。勝利の知らせを閣下に届けてください」


「分かった。確かに届けてくる」


 久隆はそう引き受けて、20階層を目指した。


 負傷者を連れているので遅い足取りとなるが、久隆たちは確実に階段を登っていく。


 足取りは遅いが、勇ましい。勝利したという気持ちが足取りを自然と勇ましいものにしていた。自分たちは勝利した。グリフォンとヒポグリフという強敵を相手に勝利した。状況は自分たちにとって圧倒的に不利であったのに勝利したのだ。


 このことはいくつかの事実を示している。


 もう既に近衛騎士団と宮廷魔術師団の連携は不可能ではないこと。ダンジョンの掃討班は近衛騎士と宮廷魔術師で構成されているそうなので、それを拡大して運用することによって大規模戦闘でも戦えるということ。


 もうひとつはダンジョンの広さ次第では大規模な兵力を展開した戦闘が可能であること。むしろ、そうしなければいけない場面が生じてくるということ。ダンジョンコアが魔物に見合った階層を与えているならば、今後もあのような構造はあり得る。


 その場合は、今回のように大規模な戦力を投入して戦うのがいいのかもしれない。


 最後に今回のような寄せ集めの部隊でも指揮系統がはっきりしていれば、戦えるということ。久隆は大規模な部隊の投入は犠牲者を増やすだけだと思っていたが、今回は違った。それぞれに部隊が連携し、久隆の指揮の下で戦った。


 次回からは大規模な兵力を投入するというオプションを最初から除外することのないようにしなければならないと久隆は思う。


 何にせよ、作戦は成功し、勝利した。後はアガレスに報告して拠点を30階層へ移すことだ。30階層は拠点にするには薄暗いが、下層に、より下層に拠点を移していくことでこのダンジョンを攻略するという当初の方針は変わっていない。


 潜れ、潜れ、地下に潜れ。


 その先にダンジョンコアがあり、べリアがいる。


 勝利のためには攻撃を続けろ。主導権を握れ。ダンジョンにおいてもその原則は変わることはない。


……………………

本日の更新はこれで終了です。


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