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30階層攻略戦

本日1回目の更新です。

……………………


 ──30階層攻略戦



「では、行くぞ。静かに、静かにな」


「了解」


「それからここから指揮はサクラが執る。サクラに従え」


 久隆たちは30階層の巨大な螺旋階段を下り始めた。


 音を立てぬよう、敵に気づかれぬよう、久隆たちは慎重に螺旋階段を降りていく。


 久隆は先頭を進み、ポイントマン(斥候)を務める。久隆が一番この階層に詳しいので当然の判断だ。久隆は螺旋階段をぐるぐると下に向けて降りていく。時折、近くを巨大な物体がはばたく音がしてぞっとするが、それでも緊張を抑え、下り続ける。


 そして、ようやく久隆たちは地面に到達した。


「フルフルさんは付呪を。レヴィアさん、マルコシアさんはまだ魔法は撃たないで。久隆さん、フォルネウスさん、目標をライトで照らしてください。矢を叩き込みます」


「了解」


 サクラが早速指揮を執り始める。


「『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』」


 まずはフルフルが久隆たちに付呪をかける。


「フォルネウス。位置は分かるか?」


「概ねですが、分かります」


「よし。3、2、1で同時に照らすぞ」


「はい」


 久隆たちはそれぞれグリフォンとヒポグリフの羽音を聞き、しっかりと狙いを定めて、ライトのスイッチを入れた。


 暗闇の中でグリフォンとヒポグリフの姿がライトの光で浮かび上がる。


 いきなり照らし出されたことでグリフォンとヒポグリフは混乱したようだが、すぐにそれは怒りへと変わり、他の魔物と同様に侵入者の排除に移った。


 だが、彼らは手痛いしっぺ返しを受けることになる。


 サクラが発炎筒付きの矢を放ち、それがグリフォンの胴体に突き刺さったのだ。グリフォンは悲鳴を上げて、のたうちながらバランスを崩し、落下しかける。だが、間一髪のところで落下を止め、サクラから離れるように飛行を始める。


 ヒポグリフにも矢が叩き込まれた。


 発炎筒の炎がヒポグリフを照らし出し、彼らはもう暗闇に隠れられない。


「よし。いいぞ。今だ! 降りてこい!」


 久隆はグリフォンとヒポグリフを十二分に引き付けたと判断すると、螺旋階段の上層に向けて叫ぶ。


 魔族たちが一斉に地面に向けて螺旋階段を降り始める。


「気を引き続けなければいけませんね」


「レヴィアも戦っていい?」


「いいですよ。明かりに向けて攻撃を叩き込んでください。マルコシアさんも」


 サクラはそう告げて暗闇の中で発炎筒の光でマーキングされたグリフォンとヒポグリフを狙って矢を放つ。


「魔法攻撃を行われるのならば私が付呪を。『賢きものよ、より多くの叡智を極め、力を得よ。賢者に力を』」


 フルフルがレヴィアたちに付呪をかける。


「『斬り裂け、氷の刃!』」


「『焼き尽くせ、炎の旋風!』」


 グリフォンとヒポグリフを氷と炎が襲う。


 それでもグリフォンもヒポグリフもタフだ。そう簡単にやられはしない。だが、彼らの攻撃目標は完全に久隆たちに定められた。


 グリフォンが急降下して、レヴィアを狙う。


「レヴィア! 走れ!」


 久隆はレヴィアとグリフォンの間に割って入り、急降下してきたグリフォンの前足を斧で弾き飛ばす。グリフォンは雄叫びを上げて、再び空に舞い上がる。


「走れ、走れ! 連中、反撃してくるぞ!」


 当然だが、グリフォンもヒポグリフもやられてばかりではない。反撃を試みてくる。そして、その目標は久隆たちに完全に定まっていた。


 だが、ここで予想外の場所から反撃が来る。


「撃て!」


 これまで身を隠していたレラジェの偵察部隊がクロスボウでグリフォンを攻撃した。グリフォンは突如として敵が増えたことに混乱し、反撃の手が鈍る。


 それでもヒポグリフの方は猛攻を仕掛けてくる。


 サクラが矢を放ちながら指示を出し、レヴィアとマルコシアが応じながら魔法をヒポグリフに叩き込む。それらを振り切ってヒポグリフは空中を突撃してくる。


「させない!」


 今度はフォルネウスが間に入り、ヒポグリフの突撃を受け止める。久隆のように弾き飛ばすことはできなかったが、フォルネウスは刀身を炎上させ、炎によってヒポグリフを追い払った。野生の生き物は炎を恐れるが、それはヒポグリフも同じだったようだ。


「この調子だ。この調子だ。もうすぐ魔族たちが配置に就く」


 魔族たちは確実に螺旋階段を降りて地上に降り立ち、気づかれぬように陣形を組んでいる。もう少しで魔族たちの全部隊が配置に就く。


「そろそろもう一発発炎筒を」


 サクラは適切に戦闘を繰り広げながら、自分の役割も果たす。


 発炎筒付きの矢を再びグリフォンとヒポグリフに叩き込み、位置を知らせる。


「全部隊、配置完了です、久隆様!」


「よし! 全部隊、魔法をグリフォン及びヒポグリフに叩き込め!」


 魔族たちの合図と同時に久隆が指示を出す。


 次の瞬間、炎が、雷が、氷が、水がグリフォンとヒポグリフを一斉に襲った。


「グリフォンは避けやがったか」


 グリフォンは魔法攻撃を避けて、レヴィアたちを再び攻撃する。


 今度は久隆が攻撃を受け止める番だ。彼はグリフォンの突撃を弾き返し、同時に斧でグリフォンの胸を裂く。グリフォンは怒りの雄叫びを上げて、空中に舞い上がる。


「ヒポグリフが落ちたぞ!」


「全員攻撃しろ! 畳みかけろ!」


 ヒポグリフは魔法攻撃を浴びすぎて、地上に落下していった。


 そこに近衛騎士団が突撃する。


 彼らは斧で、槍で、剣でヒポグリフを攻撃する。ヒポグリフは暴れまわりながら、攻撃を受け止めるが、攻撃を完全に阻止はできていない。騎士を1人吹き飛ばしても3人が斬りかかってくるのだから、とてもではないが無傷ではいられない。


 それでも近衛騎士団の損害は無視できなかった。今のところ、死人はいないが前線離脱した兵士たちが発生している。


 早く片を付けなければ死人が出る。


「マルコシア! 次の魔法攻撃は!」


「リキャストに1分かかります! 1分待ってください!」


「分かった!」


 たった1分。されど1分。


 永遠に思えるような時間がかかり、その間近衛騎士団は必死にヒポグリフを攻撃し、久隆とフォルネウスはグリフォンの猛攻を受け止め続ける。


 久隆はまだ余裕があるが、フォルネウスの方はギリギリだ。


 早期にヒポグリフを片づけて、グリフォンに攻撃の矛先を移さなければ。


「魔法、撃てます!」


「近衛騎士団は一時撤退! 宮廷魔術師団はヒポグリフに魔法を叩き込め!」


 久隆の指示で宮廷魔術師団が一斉に魔法をヒポグリフに叩き込む。


 ヒポグリフはその一撃でついに倒れた。死骸は消滅し、大量の金貨と宝石になる。


「よし。いいぞ。マルコシア、後何発ぐらい魔法は撃てる」


「10発は余裕です」


「上等」


 久隆はにっと笑った。


……………………

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[一言] 戦いは数だよ兄貴。
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