28階層の戦いの終結と反省
本日1回目の更新です。
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──28階層の戦いの終結と反省
「目標視認! ゴブリン長弓兵9体、ゴブリンシャーマン1体!」
ゴブリンたちは既に戦闘の音が聞こえるフォルネウスとオークが戦闘している場所に向かうのか。それとも先ほど物音がした場所に向かうのかで、迷っている様子だった。
「叩き潰すぞ。レヴィア、魔法を叩き込め」
「『吹き荒れろ、氷の嵐!』」
氷の嵐が吹き荒れ、ゴブリンたちが引き裂かれる。視覚を失ったものが、でたらめに矢を放つが嵐の影響をもあって当たる様子は微塵もない。
「突撃だ。続け」
「了解!」
久隆が先陣を切って突撃し、レラジェたちが後に続く。
久隆はまずはゴブリンシャーマンの頭を叩き割り、続いてゴブリン長弓兵の首を刎ね飛ばす。レラジェたちも二振りの短剣でゴブリンたちを次々に始末していき、ゴブリンたちはものの十数秒で壊滅した。
「よし。これでいい。フォルネウスのところに支援に向かう。挟み撃ちだ」
そう告げて久隆はこういう時のために準備していた道具を手にした。
「こちら久隆。サクラ、これから支援に向かう。友軍誤射に警戒。そちらは持ちそうか?」
『こちらサクラ。問題ありません。援軍がなくてもいいぐらいですよ』
「分かった。可能な限り迅速に向かう」
久隆たちが手にしたアイテムは無線機だ。
ダンジョン内で使えるか試してみたが使えたために、こういう場合に備えて久隆とサクラの2名が装備している。当然ながら民生品であるからにして、軍用無線機よりも性能は落ちる。音声補正もないし、生体電気で充電されたりもしない。
それでも今はこれで十分だ。
「向こうは大丈夫だと言っているが、できる限り急ぐぞ。友軍を見捨てたとは思われたくないだろう?」
「ええ。急ぎましょう」
ゴブリンとの戦闘が終わってすぐに久隆たちはオークと戦っているフォルネウスたちの方を目指す。進路的には挟み撃ちにできるルートを選んでいる。回り込み、挟み込み、久隆たちはフォルネウスと戦闘中の重装オークたちの背中を取った。
「援軍だ! 誤射に注意しろ!」
「分かりました!」
久隆が叫ぶのにフォルネウスからの返事があった。
「フルフル。付呪を」
「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」
フルフルの詠唱で重装オークたちの鎧が急速に劣化を始める。
「殴り込むぞ。レヴィアは合図があるまで魔法は待機だ」
久隆はそう告げて重装オークの背中から切りかかった。
久隆の一撃は重装オークの兜ごと頭を叩き潰し、レラジェたちも久隆の戦闘報告書にあったように重装オークの頭部と顔面を狙って攻撃を繰り出す。
既に重装オークの数は6体にまで減っている。もう少しだ。
「フォルネウス! 一回離れろ! そして、魔法を叩き込め!」
久隆はそう告げて一時的に重装オークから距離を取る。
「レヴィア!」
「『降り注げ、氷の槍!』」
レヴィアの発生させた氷の槍が重装オークたちを貫いていく中、フォルネウスの側にいた魔法使いたちも魔法をどんどんオークたちに叩き込む。
これで残り4体。
久隆たちは残り4体の混乱した重装オークに飛びかかり、殲滅した。
「戦闘終了。負傷者は?」
「いません!」
どうやら全員無事に乗り越えたらしい。
「よし。満点とは言わないが、合格点の出来栄えだ。全員、よく戦ったな」
久隆はそう告げて全員を集める。
「今回の反省点だ。隠密は重要だが失敗したらすぐに頭を切り替えろ。今回は味方の数が多かったから二手に分かれて攻撃したが、人数が足りなければ一度撤退することも案のひとつだ。隠密に拘り過ぎて、失敗を恐れてはならない」
久隆がレラジェたちのミスについてそう告げる。
これで彼女たちもミスをリカバーするということの意味を知っただろう。戦闘計画は重要だが、それに拘り過ぎて柔軟な思考ができなくなるのはいけない。
「フォルネウス。部隊を指揮してみてどうだった?」
「恥ずかしながら戦闘中には指揮のことが頭から抜け落ちます。目の前の敵を倒すことで頭がいっぱいになってしまい……」
「そういう時は一歩下がれ。そして、部下を使え。戦闘を行うのはお前ひとりじゃないし、他のものたちも指揮官の命令を待って戦闘に参加しようと思っている。自分だけで戦おうと思うな。人を上手く使ってこその指揮官だ」
「了解!」
久隆は他に隠密行動の際の相手の殺し方についていくつかレクチャーし、28階層での戦闘を締めくくった。
彼らはこれから有能な兵士に育っていくことだろう。そうでなければ久隆のやったことはまるで意味がないことになる。
「さて、29階層だ。救出を待っている仲間たちがいる。向かおう」
久隆はそう告げて29階層への階段を下った。
下ってすぐに久隆は索敵を行う。
「魔物はいない。魔族だけだ」
「ええ。我々が来た時も既に生存者が魔物を壊滅させていました」
「そうか。いつ29階層が掃除されたのか分からないのは困るが、とりあえず生存者の救出に向かおう。これから先は偵察だけだ。偵察部隊と俺たち以外は20階層に戻ってくれていい。どれだけ衰弱しているかにもよるが、歩けるようなら歩いてもらおう」
レラジェと久隆はそう言葉を交わすと生存者に呼びかけながら、ダンジョンを進んだ。久隆たちの呼び声に反応したのか、生存者たちが向かってくる音がする。
「助けが来たぞ!」
「おーい! 俺たちはこっちだ!」
生存者の喜びの声が響いてくる。
「助けに来た!」
「待ってい──」
久隆が姿を見せると魔族たちが固まった。
「に、人間だ! 人間が来たぞ!」
「どういうことだ!? 魔族が助けに来てくれたんじゃないのか!?」
生存者たちに動揺が走る。
「落ち着くの」
そこで声を発したのがレヴィアだった。
「レヴィア陛下!」
「久隆はレヴィアたちの味方なの。今、このダンジョンは異世界に通じていて、そこにいる人間たちは魔族を敵視していないの。だから安心するの! 20階層にくれば食べものもあるし、水もあるの。傷を負ったものも手当てが受けられるの」
「異世界……」
魔族たちは呆然としている。
「そういうことだ。俺は敵じゃない。それよりもどれくらい衰弱している?」
「……4日間は魔法ゴケで過ごした」
「そうか。なら、最初はおかゆがいいな。全部で何人だ?」
「13名」
「13名分か。足りるな」
レトルトがゆはあれから需要があると久隆は睨んで、30個ほど準備しておいた。本来はレンジで温めるものだが、湯煎でも調理できる。ダンジョン内でも今は水も火もあるので、湯煎で温めて食べさせればいいだろう。
「べリアはここにいる?」
「……べリア様はダンジョンコアの暴走に気づかれ、それを止めるために部下を2名だけ連れて、これより下に潜られました。まだお戻りではありません」
「そうだったの……。もうちょっと早く、レヴィアたちが着いていれば」
「いいえ。べリア様が出発されたのは7日前です。どうあっても間に合わなかったでしょう。それにべリア様ほどのお方ならば大丈夫なはずです。我々も手元にある魔力回復ポーション全てを託しましたから」
「そうだといいのだけれど……」
レヴィアは不安そうだった。
「レヴィア。まだ追いつける。そう悲観するな」
「うん。もっと前向きに考えるの! レヴィアたちとべリアたちの進んでいる方向は同じだって!」
「そうだ。その意気だ」
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