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最初の合同作戦のブリーフィング

本日1回目の更新です。

……………………


 ──最初の合同作戦のブリーフィング



「では、隠密での殺害手段について教えていただけるのですね?」


「ああ。静かに殺す方法を教える。どのタイミングで仕掛け、どのように殺すかを」


 久隆とサクラが作成した戦闘報告書は一度参加する全員で共有しておいてもらいたいものだ。あれにはゴブリンとオークの連合の倒し方について詳細に記してある。あれを読めば全員が一定の一致した行動を取ることが保証されるだろう。


「久隆様、アガレス閣下がお呼びです」


「分かった」


 魔族の伝令がやってくて告げるのに久隆はレヴィアとレラジェたちから離れ、アガレスの下に向かった。


「おお。来たか、久隆殿」


 アガレスは3人の魔族を伴って待っていた。


「今回、そなたに同行することになる魔族たちだ。存分に経験を積ませてやってほしい。負担だとは分かるが、こちらとしてもある程度戦える魔族を選んだ」


「近衛少尉のウァレフォルであります。よろしくお願いします!」


 やれやれある程度戦える人間が新米少尉なのかと久隆は思った。


 流石にフォルネウスを抱えたまま、別の新米少尉の士官教育まではできない。彼らには純粋に戦い方のみを学んでもらおうとそう久隆は考えた。


 ちなみにウァレフォルの身長はフォルネウスと同程度。やはり近衛騎士というからには戦闘以外にも儀仗任務があると思われ、容姿は整っている。赤毛の髪を短くポニーテイルにし、フォルネウスと同じような一角獣状の角が額から伸びている。装備もフォルネウスと同じようなものである。武器も短剣だ。


「久隆だ。まず言っておきたいのは、これから行われる戦いは隠密と闇討ちをメインにしたものとなる。この時点で拒絶するのであれば、こちらとしては受け入れられない」


「大丈夫です。生き残るためにはなんだろうとします」


 まずはこの案件をクリアにしておかなければ。闇討ちは騎士道に反するので拒否するなどと言われては、久隆としては彼らを戦力外と見なさざるを得ない。


「それから俺と一緒に戦ったら戦闘技術が上がるという噂があるようだが、俺はフォルネウスとともに戦っただけで、特に教練のようなことは行っていない。それでも構わなければ参加してくれ」


 少しばかり魔族たちは動揺したが最終的には全員が頷いた。


「まあ、これから先26階層から30階層の掃討をするときの参考になれば幸いだ。アガレス、あの資料をこいつらに見せたか?」


「まだだ。見せた方がいいか?」


「あれは全員が共有していることの方が望ましい。そのつもりで書いたものだからな」


 何もアガレスのためだけにあれは書かれたわけではない。


 これからダンジョンを行き来する魔族の兵士たちのために記されているのだ。


「では、出発前に資料を読み込むようにさせよう」


「頼む」


 こんなことなら、もっと多く印刷してくるんだったなと久隆は後悔した。


「あの、久隆様。フォルネウスは元気でやっていますか?」


「ああ。立派に戦っている。どうかしたのか?」


「いや。あいつとは同期でして。横並びに成長していっているつもりだったんですけど、フォルネウスが久隆様のところに向かってからずっと成長したみたいで」


 どうやらウァレフォルは友人が自分を置いていってしまったのではないかと心配していたようだ。同期と思っていたら、先に出世されたとあっては確かに自尊心が傷つくことだろう。久隆も海軍でそういう経験をした兵士を知っている。


「確かに成長はしただろう。だが、追いつくチャンスはまだまだある。これから掃討戦を繰り返していけば、そちらもかなりの戦闘技術を身に付けるはずだ。今回の作戦でも学べるところは自分から学んでいってくれ」


「了解!」


 どうやら久隆の答えでウァレフォルは安心したようだ。


「それでは資料をしっかり読み込んでくれ。それから読み終わったら偵察部隊に渡してくれ。彼女たちにも読んでもらう必要がある」


「はい」


 アガレスから資料を渡されたウァレフォルはしっかりとそれを読み始める。


 時に仲間と話し合いながら、ウァレフォルたちは資料をしっかりと読み込んだ。次は偵察部隊に資料が渡される。偵察部隊のレラジェも仲間と話し合い、ウァレフォルたちの意見も聞きつつ、久隆たちの作成した資料を読む。


 その間に久隆たちは昼食を済ませておいた。


「読み終えたか?」


「はい。とてもいい資料でした。ここまでダンジョン内の戦闘を効率的に描いた資料は初めてではないでしょうか。しかし、資料だけではやはり分からない部分もあり、実戦で試してみることが望まれます」


「そうだな。机上の理論より実戦の経験だ」


 ウァレフォルが告げるのに久隆が頷いた。


「では、参加するメンバーは全員集合。これより合同ブリーフィングを行う」


 レヴィアたち、レラジェたち、ウァレフォルたちが久隆の下に集まる。


「これから俺たちは30階層まで到達し、現地の偵察を行う。そのためには28階層と29階層を攻略しなければならない。29階層は例によってエリアボス手前の魔物が少ない階層であるし、生存者もいる。彼らを救出することも今回の目標だ」


 久隆は偵察部隊が作成した地図を広げる。


「28階層では戦闘が予想される。28階層では偵察部隊が斥候として先行し、それに俺たちが続き、最後尾をウァレフォルたちに続いてもらう。基本的に隠密で進めたいが、それが不可能になった場合には部隊をふたつに分ける。ひとつは偵察部隊と俺、レヴィア、フルフルのゴブリン掃討チーム。ひとつはサクラ、マルコシア、フォルネウス、そしてウァレフォルたちのオーク掃討チームだ」


 久隆が続ける。


「この付近の攻略で重要なのはいかにゴブリンとオークを連携させないかにある。ゴブリンは遠距離戦闘に特化しており、そこを突けば脆弱な目標になる。もっともゴブリンシャーマンの魔法は付呪でなければ防げないだろうが」


 ゴブリンとオークが連携しなければこの付近の階層の掃討は楽になる。そのことは戦闘報告書にも記載されていたので全員が納得している。


「重装オークだが、報告書にある通り顔面を狙った攻撃が有効だ。視界を潰すことも考えておくといい。ウァレフォルの班には何名の魔法使いがいる?」


「1名です」


「結構。重装オークは遠距離攻撃手段を持たない。近接戦部隊が接敵する前に魔法で可能な限り叩け。俺たちはゴブリンをそちらに合流させないようにする」


 久隆はそう告げて全員の反応を見る。


 全員が納得しているようだ。異論が出る様子はない。


「よし。最初は隠密だ。魔物が騒ぎ出すまで隠密を維持する。物音を立てたり、派手な魔法を放ったりするのは隠密が失敗してからだ。奇襲は数の不利を覆す手段だ。そして、ダンジョンにおいて我々は少数勢力だ。隠密による奇襲は重要だ」


 久隆はそう説明し、ブリーフィングを終えた。


 敵の配置は現地に到着してからでなければ分からない。だが、どのようなことがあろうと陣形を維持し、隠密に徹して奇襲することは忘れない。魔法や剣で派手にやるのは隠密に失敗してからだ。


 以上のことが全員の頭にしっかりと入ったことを確認してから、久隆たちは28階層を目指して潜っていった。


……………………

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