ダンジョンから日常へ
本日2回目の更新です。
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──ダンジョンから日常へ
久隆たちが地上に出たらまだ昼間だった。
時差ぼけでどうにかなりそうな気分に気合を入れながら久隆たちは自宅に向かう。
「おう。今回は早かったな。偵察だけか?」
「がっつり攻略してきた」
やはり入ってからの時間と外の時間はずれているらしく、朱門はあまりに早く帰ってきた久隆を見て、少し驚いたような顔をしている。
「療養中の患者の方はどうだ?」
「まだ休み始めたばかりだ。医者としてはダンジョンというのは戦場並みにストレスがかかる場所だと言わざるを得ない。休息をしっかり取らせてから返した方が、兵士としても役に立つようになると思うぞ」
「そうか」
「ああ。昼飯はもう食わせておいた。お前たちはどうするんだ?」
「今日は流石に疲れた。モンスターハウスというものがダンジョン内にはあって、70体以上もの魔物を相手にすることになる。今日はそれを含めて攻略してきたところだ。こうも疲れるのは久しぶりだ」
「お前がそこまで言うならそれなり以上のものだったんだろうな」
「ああ。今日は蕎麦屋にでも行ってさっぱりしたもので済ませる。晩飯も弁当だ。朱門、お前の分も弁当を買って来ようか?」
「なら、頼むか。俺は肉にしてくれ。それから療養中の患者は消化器に異常はない。肉をしっかり食わせてやって、スタミナをつけさせるといいだろう」
「分かった。なら、出かけてくる」
久隆は少しばかり室内で涼むと立ち上がった。
「おーい。昼飯、というかとにかく飯を食いに行くぞ」
「了解なの」
それから久隆たちはショッピングモール内の蕎麦屋でざるそばを味わった。
マルコシアとフォルネウスはパスタを啜るということに疑問を抱いていたが、食べ始めてみるととても美味しかったので文句は出なかった。だが、流石に全員疲れているのか、ざるそばだけでお腹いっぱいであった。
蕎麦屋には定番の天ぷらやかつ丼、カレーなどもあったのだが、そこまで食欲を発揮するのはレヴィアでも無理であった。
「弁当を買って帰ろう。今日は遅めの夕食だ」
それから弁当を購入する。
皆があっさりとしたものを選ぶ中、レヴィアとフォルネウスだけががっつりと肉をメインにしたものを選んでいた。まあ、彼らは体を動かすし、まだまだ若い。
久隆は流石に徹夜明けに油っこいものは無理であった。
あれから誰かに監視されるとか、怪しまれるとかいうことがないかと思ったが、郊外の人間も正常性バイアスが働いており、誰ひとり声すらかけてこない。出入口で警備員に呼び止められることすらなかった。
日本は本当に他人に無関心な国になったのだなと思いつつ、久隆は無人レジで決済を済ませてしまう。久隆の手元には朱門が現金化した金貨と宝石の資金があるが、今はまだ使わないでおいた。
個人の商取引が監視されていることはないが、あまり金遣いが荒くなると税務署に睨まれる恐れがあった。資金は口座には収めず、地下の金庫にしまってある。いざという場合はそれを使うことになるだろうが、今は必要ない。
「さ、帰るぞ」
「もうちょっと見て回りたいの」
「ダメだ。今日はみんな疲れている。お前も帰ったら休むんだ」
本当なら今頃は晩飯を食べて、風呂に入り、寝る支度をする時間帯である。
外が明るいので時間感覚がおかしくなるが、しっかり休むべき時に休んでおくべきだ。久隆もアメリカでの合同訓練などで時差ぼけを体験したことがあるが、あのときもちょっと仮眠するだけでかなり現地の時刻に合わせられた。
今回のも時差ぼけのようなものだ。休むべき時に少しでも仮眠を取っておかないと、後々で苦しむことになる。
そうやって久隆たちはショッピングモールから自宅に戻った。
「飯食ったら2時間ほど寝ておけ。眠りにくかったら風呂を沸かすから湯につかってからでもいいぞ。遠慮はするな」
「ふわあ。そう言われると眠くなるのね」
朱門にそう言われてレヴィアは布団を出しに向かっていった。
「私も少し疲れたので休みます」
「あたしも休んでおきます」
フルフルとマルコシアも布団に向かった。
「では、自分もいつでも戦えるように休んでおきます」
「ああ。休める時に休むのも兵士の仕事だ」
フォルネウスもレヴィアたちとは別室の寝床に向かった。
「さて、俺たちも休むか」
「そうですね。アメリカでの演習を思い出します。あの時も時差ぼけに苦しんだものです。正直、船で移動すればもっとマシだったんじゃないかと思うほどです」
「そうかもしれんな。どうせ本国から装甲車や戦車、アーマードスーツを運んでいたんだしな。ついでに乗せてもらえばよかったんだ」
アメリカでの演習は陸海空軍の統合演習で敵地への着上陸などを訓練した。
日本国内では多連装ロケット砲や新型自走榴弾砲の射撃が行えないために、アメリカの広大な演習地を借りる、というわけである。アメリカも海兵隊を始めとする部隊が参加し、いざという場合の意思疎通が取れるように訓練を重ねた。
「東南アジアからの帰国は船だったな」
「ええ。ベトナム戦争での苦い経験からですよ。戦場の緊迫した空気からいきなり平和な日本に放り込むと兵士が適応できないことは分かっていましたから。攻撃型ドローンの遠隔パイロットもすぐに帰宅させることをやめて、一息置かせるそうです。敵とは言え人を対戦車ミサイルで吹き飛ばしたすぐ後に家族と会うのは辛い、と」
「移動手段は高速化したが、人間は対応できてないわけか」
久隆も日光のせいでセロトニンの分泌が行われていながらも、27階層までの戦いで疲弊した体が休息を求めているのが分かった。
「休みましょうか」
「ああ。休もう」
久隆たちも寝床に向かう。
久隆たちはそれぞれの寝床に就き、夏の明るい日差しを遮るカーテンをしてタイマーを2時間にセットし、眠りに落ちたのだった。
そして、2時間後。電子音で目が覚める。
心なしか疲労が取れた気がするが、まだまだしっかり眠ったわけではない。さっきまでの眠りは時差ぼけの時刻合わせのようなものだ。久隆はそう思い、完全に眠る前にちゃんと食事を取っておかなくてはと寝床を出た。
時刻は18時。夕食を食べるには丁度いい時間帯だ。
久隆はまずはレヴィアたちを起こしに行く。
「起きろ。本格的に寝るのは飯を食ってからだ」
「ふわあ。そうなのね。ちょっと疲れたからもう少し休みたかったけど」
昼は軽く蕎麦を食べただけだ。あれだけでは翌日のスタミナに影響する。
「いただきますなの」
「いただきます」
6人の賑やかな食卓。
このチームならばきっとあのダンジョンを攻略できる。
久隆はそう信じていた。
そして、レヴィアたちも気合十分で、27階層を突破した今、目指すのは30階層だと思っている。だが、30階層のエリアボスはなんだ?
10階層はマンティコア。20階層はバイコーン。30階層ではさらに危険な敵を相手にすることになるだろう。油断はできない。
だが、希望はある。もうレヴィアたちは魔族だけで戦わなくていいのだから。
「さて、洗い物は流しに置いておけ」
久隆はそう告げ、彼のすべきことを考え始めた。
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本日の更新はこれで終了です。
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