23階層
本日2回目の更新です。
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──23階層
久隆たちは掃討されたダンジョンの中を進み、20階層に到着する。
今回は久隆たちはアガレスから情報を聞き、27階層のモンスターハウスを撃破して、可能ならば30階層のエリアボスについて把握してきたかった。
少なくとも27階層のモンスターハウスの撃破は行いたい。そのために今日はダンジョンで寝泊まりするための準備も整えてきている。
「アガレス。昨日偵察部隊に少しばかり会って話をしたが、詳細な25階層以降の情報がほしい。頼めるか?」
「もちろんだ、久隆殿。これが詳細な報告書となる。おい、翻訳魔法を頼む」
アガレスがそう告げ、魔法使いが報告書に魔法をかける。
「ゴブリンロードが26階層から出没。ゴブリンの数、増大傾向にあり。重装オークについては防御に隙はなし。完全に全身を覆っている。しかしながら、重装オーガ、鎧ジャイアントオーガの数は減少傾向にあり」
ダンジョンはもはや的でしかない鎧ジャイアントオーガの数を減らしたらしい。
「しかしながら、重装オークとゴブリンたちが連携している節が見られる、と。あまりいい話ではないな……」
これまでは乱戦になる前にゴブリンたちを仕留めていたのが、重装オークという大型ユニットとともにゴブリンたちが行動しているのは厄介だ。重装オークを盾にして、ゴブリンシャーマンが魔法を使ってきても面倒だし、ゴブリン長弓兵が矢を浴びせてきても面倒だ。乱戦は避けたいが、それは難しいと報告書にはある。
乱戦が面倒なのは経験的に分かっている。
乱戦と言っても要は諸兵科連合の攻撃だ。砲兵、騎兵、歩兵などの連携攻撃。
久隆の戦った東南アジアの戦争でも乱戦はたびたび起きた。
対空機銃を日曜大工的にマウントしたピックアップトラック──騎兵の突撃と、カラシニコフと対戦車ロケット弾で武装した歩兵の攻撃、どこの軍の武器庫からか流れてきた迫撃砲という砲兵の砲撃。
戦場とは常にそういうものだ。もちろん、装備の貧弱な弱小の民兵だったり、重装備を持ち込めない特殊作戦部隊のような部隊は諸兵科連合での行動は行えない。
今の久隆たちはどうかと言えば、ダンジョン内で騎兵が使えないことを除くとするならば、遠距離火力の砲兵と近接攻撃の歩兵が整ったバランスのいい部隊と言える。もっとも砲兵とは便宜上の呼び名であって、実際には砲兵とは呼べないだろうし、このダンジョンには迫撃砲すら持ち込めないだろう。
だが、今回は敵もバランスのいい部隊を揃えている。
近接攻撃に長けた歩兵である重装オーク。遠距離攻撃に特化した砲兵であるゴブリン長弓兵及びゴブリンシャーマン。そして、それらの戦力を増強するというゴブリンロード。乱戦は避けられないだろう。
敵の諸兵科連合をどうやって打ち破るのか。
正面から叩くのでは能がない。それに数は間違いなく向こうの方が多いし、ゴブリンたちならば狭い廊下にでも多く展開できる。
となれば、敵の兵科をひとつずつ各個撃破していくしかない。
敵が諸兵科連合を組んでいるのにそれは可能かと言えば不可能ではない。
砲兵は対砲兵射撃で敵の砲兵を潰す。歩兵は白兵戦で敵の歩兵を潰す。どちらかひとつでも達成できれば敵の諸兵科連合が崩れる。
もっとも、不意打ちでもしなければ、完全に連合した敵をそのように倒すのは困難だろう。どうあっても先手を打つ必要がある。
特殊作戦部隊では破壊工作と近接航空支援で敵の諸兵科連合を叩く。ほとんどの場合、それは奇襲である。数に勝る敵と正面から戦っても勝ち目はない。敵の脅威について事前に報告し、近接航空支援でそれを叩き、さらには破壊工作によって打撃を与える。全ては奇襲によってなされる。
奇襲は重要だ。ダンジョンにおいても。
そして、幸いなことに敵が意図して連携することはほとんどないと思われる。何せパニックになると友軍すらも攻撃するような連中だ。魔物に知性はない。ただ、ひたすらにダンジョンを守るために侵入者を殺そうとするだけである。
「よし。分かった。こちらは27階層のモンスターハウスを制圧するつもりでいる。27階層までの地図を写させてもらってもいいか?」
「もちろんだ。しかし、27階層のモンスターハウスはこれまでのものよりさらに危険だと思われるが大丈夫なのか?」
「突破しないと味方を探せないだろう?」
「それはそうなのだが」
「安心しろ。レヴィアのことはなんとしても守る。他の連中も」
「すまん」
アガレスはそう告げて深々と頭を下げた。
「では、まずは23階層に向かう。今は偵察部隊は?」
「出していない。上層の掃討に回している」
「分かった。では、こちらが潜っている間は友軍は送らないでくれ。巻き込む恐れがあるからな。用心はするが」
久隆はそう告げてレヴィアたちの下に戻った。
「23階層に潜るぞ」
「23階層ですか。25階層以降の情報はどうでした?」
久隆が告げるのにマルコシアが尋ねる。
「厄介なことになりそうではある。だが、それでもやらなければならん」
「そうですね」
マルコシアたちは表情を引き締めた。
「まずは23階層だ。一歩ずつ、確実に進んでいこう。今の俺たちならば不可能なことではない。ダンジョンを踏破し、仲間を救い、ダンジョンコアまで辿り着くぞ」
「おー!」
最後にレヴィアが気合を入れて、久隆たちは23階層に潜った。
23階層に降りてすぐに久隆が索敵を行う。
「ジャイアントオーガ3体、オーガ2体、オーク4体、ゴブリン14体。ゴブリンが増えていっているな。あまりよくない傾向だ」
25階層から劇的な変化が起きるのではなく、変化はじわじわと起きていくわけだ。
「ゴブリンたちは厄介な敵になっているの。でも、レヴィアの魔法で一撃なのね」
「ああ。レヴィア、お前には期待しているからな」
敵の砲兵には自軍の砲兵をぶつける。対砲兵射撃は現役の戦術であり、対砲兵レーダーが開発されてからはさらに砲兵は厳しい環境に置かれた。砲兵は敵の対砲兵射撃を避けるために装甲化したり、自走化したり、レーダーに捉えられないように砲撃する術を生み出したりと工夫を凝らした。
だが、ここはダンジョンの中。
ここで行われるのは小さな戦争。砲兵はひとりの魔法使いであり、弓兵だ。
「ゴブリンから潰しに行く。こっちだ」
やはりゴブリンは2グループに分かれている。
そして、恐らくはそれぞれにゴブリンシャーマンがいるだろう。ゴブリン長弓兵もいるはずだ。片方は隠密で片付けなければ、面倒な乱戦を早々に体験することになる。
「ゴブリン長弓兵を視認」
手鏡で久隆がゴブリン長弓兵を確認する。
視認できた数は4体。だが、ゴブリンシャーマンと残り2体いるはずのゴブリン長弓兵の姿が見えない。
「畜生。奇襲は無理かもしれない」
「どうするの?」
「できる限り隠密でやる。それ以降は出たとこ勝負だ」
久隆はそう答えた。
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本日の更新はこれで終了です。
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