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20階層以降

本日1回目の更新です。

……………………


 ──20階層以降



 久隆は20階層より下に潜るに当たってアガレスから情報提供を受けた。


「これが25階層までで判明していることだ」


「ふむ」


 この前と同じように資料に翻訳魔法をかけてもらい、久隆は資料を開く。


「ふむ。鎧ジャイアントオーガと重装オーガはそのまま。ゴブリン長弓兵が新たに出現。それからゴブリンシャーマン?」


 シャーマンと言われると戦車の方が思い浮かんでしまうが、久隆はすぐに祈祷師の方のシャーマンであると理解した。


「魔物も魔法を使ってくるということか?」


「そういうことだ。そもそもダンジョンの魔物は魔力で構成されている。魔法を使ってもなんら不思議はないのだよ」


「ふうむ。ちとばかり面倒だな」


 魔法は自分たちが使っている分には便利だ。


 だが、その反面、敵に使われた時が面倒なことになる。


 レヴィアやマルコシアのような攻撃魔法。フルフルのような付呪。


 どちらも敵に使われるとなると面倒だ。ゴブリン弓兵もアップグレードされているようだし、遠距離火力が順次敵の側に充実していくのを久隆は感じる。


 久隆たちはサクラが加わってレヴィアやマルコシアに頼らない遠距離攻撃手段を手に入れたが、それとは明らかにバランスが合っていない。ダンジョンとはかくも理不尽なものかと久隆は思ったのだった。


「ゴブリンシャーマンは具体的にどのような魔法を?」


「階層によってことなるが、中程度の攻撃魔法を使うと考えられている。付呪については我々でも取得が難しいぐらいなので敵は使ってこない」


「なるほど」


 これはゴブリンシャーマンは見つけ次第、攻撃の機会を与えることなく撃破しなければならないなと久隆は確信した。


 レヴィアやマルコシアのような魔法を使われてきたのでは、威力が中程度でも致命的だ。魔物たちとは違って目はゴーグルで守り、防弾チョッキを身に着けているにせよ、炎で焼かれたり、つららが降り注ぐようなことになっては。


「他に注意すべき点は?」


「今現在、モンスターハウスの特定とエリアボスの特定のために偵察部隊を送り込んでいる。3名の小部隊だ。彼らにはもしかすると久隆殿たちが潜るかもしれないということを伝えてある。もし、彼らと遭遇したら友軍識別を。手を4回叩くのが合図だ」


「分かった。気をつけよう」


 偵察部隊は先行して情報を手に入れてきてくれる貴重な存在だ。


「私からは特にないが、久隆殿は他に何か?」


「いいや。大丈夫だ。実戦で試してみないと分からないこともある。やってみるさ」


 久隆はアガレスに礼を言うと資料をそのまま持って、レヴィアたちの下に向かった。


「レヴィア、フルフル、マルコシア、フォルネウス、サクラ。潜るぞ。だが、今回はそこまで深層には潜らないだろう。ダンジョン魔物も戦力強化してきている。そう簡単にはダンジョンも深層には潜られまいとしているようだ」


「レヴィアも頑張るの!」


「おう。頼りにしているぞ。これから遠距離戦が激化しそうだからな」


 こうなるとマルコシアとサクラの運用は柔軟に行わなければならないだろう。遠距離火力同士の撃ち合いに斧を持って斬り込むのは上策とは言えない。もちろん、敵が動けない状況ならば遠距離火力ユニットの懐に飛び込み、打撃を加えることは有用だろうが。


 いずれにせよ、不意を突くことだ。敵に気づかれることなく先手を打てれば、敵を混乱に陥れることは容易であり、混乱した敵を叩くことはそう難しくはない。


 これまで以上に隠密行動と遠距離火力が重要になってくるダンジョン20階層より下で久隆たちは戦えるのかを試さなければならない。


「では、潜るぞ」


 久隆は先陣を切って21階層に進む。


「ジャイアントオーガ3体、オーガ4体、オーク4体、ゴブリン10体」


「楽勝なのね」


「そうはいかん。ゴブリンは2か所に分かれている。そして、この階層からゴブリンたちは魔法を使うように聞いている。ゴブリン長弓兵なども出てくる。面倒な戦いになるぞ。まずはゴブリンの掃討だ」


 久隆たちは息を殺し、慎重にゴブリンたちのいる地点にまで向かう。


「確認した。確かに長弓兵だ。数は4体。面倒なことになりそうなゴブリンシャーマンらしき連中はいないようだが」


「どうするの?」


「なるべく騒ぎを起こさず片付けたい。フォルネウス、サクラ。来てくれ」


 久隆はふたりを呼ぶ。


「隠密で片付けたい。一度ここまで敵の集団を誘導し、各個撃破する。魔法はなしだ。できるか?」


「できます」


「よし。実行しよう」


 そこでサクラは軍用ナイフを抜きながら少し考え込んだ。


「久隆さん。無線は使わないんですか?」


「注文してある。使えなかった場合に備え手ごろな価格帯のものを。海軍のときのようにはいかないぞ。生体インカムは便利だが、民生用はない」


「そうですね。あれは軍のためだけの製品でしたから」


 サクラが獲物を見据える。


「どうやります?」


「音で誘き出す。騒ぎ立てないほどの音で」


 久隆はそう告げてダンジョン内の小石を拾うと、ゴブリン長弓兵に向けて軽く投げた。コンッと小さな音がし、ゴブリン長弓兵はすぐに気づき周囲を見回すと2体が久隆たちの方に向かってきた。


「用意」


 久隆たちが武器を構えて息をひそめる。


 2体のゴブリン長弓兵が曲がり角を曲がった瞬間、斧と軍用ナイフがゴブリン長弓兵を襲い、彼らは悲鳴を上げる暇もなく、息絶えて消えていった。


 他の3名のゴブリン長弓兵はまだ周りを索敵している。久隆は石を拾い、ゴブリン長弓兵に向けてもう一度投げる。


 今度は3名のゴブリン長弓兵が久隆たちの方に用心しながらやってきた。


 だが、その用心も無駄なものとして終わる。ゴブリン長弓兵の頭と喉を斧、短剣、軍用ナイフが切り裂き、彼らを絶命させた。


「よし。周りの連中が気づいている様子はない。この調子だ」


 隠密で敵を消すのは特殊作戦部隊で重要視されることだ。


 特殊作戦部隊はどうしても少人数で大勢を相手にすることになる。奇襲と隠密の重要性はそこからやってくる。敵がまともな訓練を受けていない民兵だろうと、大勢に囲まれれば火力で負ける。火力で負けるのは大きな敗因だ。米軍特殊作戦部隊もモガディシオで数の暴力に負けている。


「次の目標に移る。こっちだ」


 恐らくサクラならば久隆と同等か、久隆以上に索敵できるだろう。実際に彼女は最後尾で周囲に気を配っている。これで不意を打たれる可能性は大きく減ったと言っていい。


「ゴブリン長弓兵5体、それから杖を持った装飾品を身に着けているゴブリンが1体。あれがゴブリンシャーマンか?」


「間違いないのね。ゴブリンシャーマンは面倒なの。けど、確かに深層に向かっている証拠でもあるの」


「よし。では、片付けよう。隠密はなしだ。殴り込む。フルフル、付呪を。レヴィアはいつも通り魔法を」


「了解なの」


 久隆たちは戦闘準備に入る。


……………………

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