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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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91.洗礼

 不逞領域に突入した俺たちを襲ったのはドラゴンの群れだった。

 インディクスが用意した魔王城の迎撃装置で何とか切り抜けたが、その先にはスカルドラゴンが待ち構えていた。

 スカルドラゴンには魔法が効きにくい。

 ただし、俺の言霊なら別だった。


 落ちろの一言で、スカルドラゴンが落下していく。


「本当に落とせた」


 自分でも驚きだった。

 スカルドラゴンが強力なモンスターだということは間違いない。

 言霊は、相手が強いほど効きにくく、魔力の消耗も激しい。

 にもかかわらず、今の一言で消費した魔力はごく少量だった。


「喉の調子も……うん、悪くない」


 やっぱりルリアナの力が覚醒してくれたお陰かな。

 俺の中にある先代魔王の力も、同時に強化されている。

 これなら現魔王……リブラルカにも通じるか。


「っと、そろそろ戻らないと」


 いつまでも暴風雨の中にいたら、そのうち風邪をひくかもしれない。

 魔王の力が宿っていても、身体は人間なんだから。


「戻ったよ」

「おっかえりー!」


 制御室に戻ると、アレクシアが一番に出迎えてくれた。

 

「すごかったね! 一瞬でドラゴンが落ちたよ!」

「俺も自分でビックリしたよ」

「エイト、喉の調子は?」

「全然大丈夫。心配してくれてたんだね、レナ」

 

 俺はわかりきった質問を彼女に投げかけた。

 するとレナは、ムスッとした顔で言う。


「当たり前でしょ」

 

 知っていたことだけど、彼女の反応を見て安心する。

 続けてルリアナが腰に手を当てて賛辞をくれる。

 

「よくやったぞエイト! さすが妾の弟じゃな!」

「ありがとう。ん、え? 弟?」


 何の話?


「お前さんは先代から力を継いでるだろ? だから姉弟みたいなもんなんだと」

「ああ、でも何で俺が弟なんですかね?」

「それはオレも疑問だったんだが~」

「自分のほうが魔王だから! って言っていたわよ」


 そう言う話を、アスランさんとフレミアさんは修行の時にしていたらしい。

 なるほど、と彼女らしさを感じて。

 とりあえず納得しておくことにした。

 でも俺としては、兄妹ならルリアナが妹って感じだけど。


 穏やかに話す俺たちを横目に、インディクスは大きなため息をこぼす。


「まったく、緊張感の欠片らもないな」

「良いじゃないか。緊張しすぎているよりマシさ」


 それを隣で聞いていたユーレアスさんが答える。

 彼の言葉を聞いてから、インディクスはもう一度大きくため息をこぼす。


「気を抜きすぎだと言っているんだよ。ここはもう、半分奴らの領域だ。さっきのスカルドラゴンも、魔王の差し金かもしれないのだぞ」

「それはまぁ……そうだね。だとしたらルートを変えるべきかな?」

「どうだろうね。どのルートでも結果は同じだと思うが?」

「じゃあこのまま直行で!」

「短絡的だな」


 呆れるインディクスに、ユーレアスさんは胸を張って言う。


「大丈夫さ! また襲ってきてもエイト君に落としてもらおう!」

「他力本願がすぎるぞ」

「他人を頼る前に、マスターも働いてください」

「え? 何でまた説教されてるの?」


 やれやれ。

 あっちはあっちで緊張感がないな。

 魔王城へ向かっている最中だというのに、普段通り過ぎる。

 でもそうか。

 これから決戦……強大な敵と戦うのに、怖くないんだ。

 皆が一緒にいれば、何だって出来るがして。


「エイト君何で笑ってるの?」

「ん? いや、何でも」

「またエッチなことでも考えていたんでしょ」

「えぇ~」

「ち、ちがうから! というかまたって何だ」


 こういう時、何気なく冗談が言えるのことも……強さの一つなのかもしれないな。

 ただ、さすがにそろそろ気を引き締めるべきだ。

 僅かにだけど確実に、近づいている実感がある。

 俺たちの宿敵に。


「皆さま、じきに見えてきます」


 セルスさんがそう言う。

 真面目で低い声が、俺たちの気を引き締める。

 不逞領域の嵐が治まってきていた。

 近づいている。

 どんどん……決戦の地へ。


 そして遂に――


 不逞領域を抜けた。

 その先に見えたのは、漆黒の城。

 薄暗い世界にそびえる巨大な城に、紫色の怪しい光が点々と灯っている。


「あれが……現魔王の城」


 先代魔王の城から、何となくイメージしていた。

 それを超える禍々しさを感じる。

 見た目に大きな差はない。

 王国にあるような城にも近い。

 なのに……城の黒さが、怪しさが際立って、見るだけで不安を煽る。


「あそこに魔王が……」


 ん?

 何だ今、城の上部が光って――


「まずい」


 インディクスが何かに気付いた。

 焦った声で叫ぶ。


「衝撃に備えろ!」


 次の瞬間、魔王城から高エネルギーの砲弾が放たれた。

 わずかに見えた光は、魔道装置発動の合図だったらしい。

 強力な攻撃に晒され、結界が破壊される。


「ぐっ……」


 各々柱や壁に掴まり、衝撃に耐える。

 インディクスは操作を続けているが、明らかに城の高度が落ちていた。


「ねぇインディクス、これって」

「ああ、察しの通り……今ので飛行装置が壊れたな」

「やっぱりか」


 インディクスとユーレアスさん。

 二人の淡々とした会話が聞こえたその後で、俺たちの城は墜落した。


予定よりちょっと早い?ですが、第四章(最終章)ぼちぼち更新していきます!

ちなみに書籍版は5/1発売予定!

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