表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/107

31.恥ずかしいからやめて

第二章スタート!

 小さな窓から差し込む月明り。

 暗い夜の部屋に明かりはなく、近くにある物以外はハッキリ見えない。

 すぐ見える距離に彼女がいる。

 人間の体温が高いことを、俺は実感していた。


「寒くないか?」

「ううん、あったかいよ」


 アレクシアは嬉しそうにほほ笑んでいる。

 そんな彼女の笑顔を見ていると、こっちまで嬉しくなる。

 と同時に、罪悪感を感じないわけではなかった。

 本当に良かったのかと、今さら考えてしまう。

 男らしくないのだろうとわかっているけど、一度考えてしまったらもうそれまで。


「アレクシア」

「なに?」

「その……後悔したりとか――」

「えいっ」


 話の途中で、アレクシアが俺のおでこをピンと叩いた。


「いてっ」

「するわけないよ」


 そしてハッキリと答えた。

 真剣な表情で、言い終わった後にニコリと微笑む。


「大好き」

「アレクシア……」

「嘘じゃないよ? 嘘みたいって自分でも思ったけど、やっぱり嘘じゃなかった。エイト君が傍にいるだけで……もう、胸がいっぱいになるから」


 そう言いながら、アレクシアは俺の手をギュッと握る。

 温かく、優しく握って、自分の胸に当てる。


「ドキドキしてるよ。ずっと……エイト君は?」

「……ああ」


 自分の胸に手を当てる。

 なんて確認をしなくてもわかるくらい、心臓の鼓動が激しい。


「俺もだよ」

「そっか……嬉しい」


 死線を共に潜り、助け合い生き残った。

 互いの命を預け合えばおのずと信頼は培われる。

 ただ、それだけでは終わらないこともあったらしい。

 少なくとも俺たちの場合は、それ以上のものを受け取っていた。


 幸せだと、心から思った。

 誰かと繋がるということが、幸福なことだと理解した。

 激しい戦いに赴く前に、これを知れてよかったと思う。


 そう思った翌日……


「……」

「知ってるかい? エイト君の部屋の左右には僕たちがいたんだよ」

「……そうでしたね」

「あの壁結構薄いんだ。耳なんて当てなくても、静かにしてれば聞こえるくらいにはね」

「……そうだったんですね」


 ニヤニヤしながら俺のことを見ているユーレアスさん。

 こんなことを言いたくないが、腹が立つからその顔を止めてほしいと思った。 


「えっと……どこから聞こえてましたか?」

「最初からだよ?」

「うっ……」

「アレクシアの甘い言葉も魅力的だったね~ あんなこと言えるとは思わなかったよ」


 アレクシアは顔を真っ赤にする。

 昨晩のことを思い出したのだろう。

 口にしている時はともかく、あとから他人に言われると、誰だって堪えるものはある。


「おいユーレアス、もうやめてやれよ」

「そうね。二人とも蒸発しそうよ」


 特にアレクシアは今にも走って逃げだしそうな雰囲気だ。

 それでもユーレアスさんは面白がって続ける。


「良いじゃないか目出たいことなんだよ! 冒険に恋はつきもの! これからは僕が温かく見守ってあげるからね!」

「お前の場合は生温かくだろ」

「良いこと言うね。さすがアスラン」

「褒めてねぇから。ったく……エイト、アレクシア」

「「はい!」」

「まぁあれだ。別に止めやしねぇから、周りは確認しとけよ? こういう変態に聞かれると面倒だからな」

「肝に銘じておきます」


 アスランさんはちょっと怖い見た目だけど、この中で一番優しいのではないか?

 と思った瞬間だった。


「変態とは失礼だな~ 僕はただそういうことには目がないだけだよ」


 それと同時に、ユーレアスさんに対するイメージもだいぶ変わった。

 宴会の時は女性陣に囲まれデレデレしていたし、今も正直ちょっとうざいし。

 だから反撃の意味も込めて俺は尋ねる。


「ユーレアスさんはそういうのなかったんですか?」

「ん? 何がだい?」

「いやほら、ユーレアスさん女の人が大好きじゃないですか」

「うん」


 そこは否定しないんだな。

 清々しく答えた。


「だったら、このパーティーの女性陣は綺麗な人ばかりじゃないですか。ユーレアスさんなら毎日大喜びしてそうなのに」

「あらエイト、貴方なかなか見る目があるわね」

「ふふっ、ありがとうございます」


 レナさんとフレミアさんが反応した。

 自分で言っておいて申し訳ないけど、めちゃくちゃ恥ずかしい。

 ユーレアスさんの反応を窺う。


「はっはは! 僕だって見る眼はあるよ」

「じゃあ」


 ユーレアスさんが俺の肩にトンと手をおく。

 悟ったような表情で……


「いくら僕でも、彼女たちに手を出す度胸はないさ。まだ死にたくないからね」

「……ああ、なるほど」


 女性陣がユーレアスさんを見ながらニコニコ笑っている。

 笑顔を心から怖いと思ったのは、これが初めてだったかもしれない。


「まぁとにかく良いことだ。これで僕たちが戦う理由も増えたことだし」

「戦う理由ですか?」

「ああ。幸せを掴み取るために、僕たちは旅を続けるんだよ」


 どうしてこのタイミングで良いセリフを口にするのか。

 でも確かに、その通りだと思った。

 俺にとっても戦う理由は増えたと思う。

 守りたいものが近くにある。

 それはとても、強い力を与えてくれるだろうと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://book1.adouzi.eu.org/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
[良い点] 最初のパーティと今の勇者パーティ 人材が地獄と天国だな
[良い点] 読みやすい文章と的確なワード 据え膳が勇者だろうが食いつく主人公 読んでてすっきりします
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ