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立て直し

 シグチーの腹は、オグナスがキツく布で縛り付けて応急処置とした。それからオグナスにはシグチーを連れて治療院に行かせ、俺達はハンゼン商会へと向かった。シグチーの腹の傷は相当だったが、自分で立って歩いて行ったので心配は無さそうだ。

 オークションはハンゼン商会の傘下の商会が運営している。そして1週間後のオークションには今から出品物を預ける事が出来る。そこで俺はロドリゲス男爵に指定された調度品一式を預ける事にした。アントナイトのインゴットも後から届けるつもりだ。

 ハンゼン商会の傘下の倉庫は流石のガイガー商会でも手出しが出来ない。ハンゼン商会は金貸しだけあって資金は潤沢で、防衛の為の武力も十分に持っている。ただの義理で俺やマルゴット婆さんのランマース商会に手を貸す事は無いが、自分の倉庫を攻められれば容赦はしないだろう。




「いやいやレンさん、昨日から随分お忙しかった様ですな。

 ほぉーっ、ほっ、ほっ。」


 俺達はオークションに出す品を全て預けると、ハンゼン商会の一室、エーレ商会の事務所に行った。事務所に入るとエーレ商会の会頭ヨアヒムとハンゼン商会のユルゲンが待っていた。


「ご無理を言って申し訳ありません。」


「いえいえ、オークションの品を預かるのも、

 オークションの代金を少々の間、預かるのも通常の手続きですから。


 ほぉーっ、ほっ、ほっ。

 それでレンさんはどちらへ。」


「しばらくエトガルに見つからない様、雲隠れしようかと。


 それでエーレ商会は西の貴族家へ投資を求めに行くのでしょう。

 よろしければ荷物持ちでもさせて頂けないかと。」


 俺はそう言ってユルゲンからヨアヒムへと視線を移す。


「ふむ、君には借りもある。


 私が君の貴族家への顔繫ぎをさせてやれれば、

 少しは借りも返せるというものか。


 よかろう。同行を認める。」


「ありがとうございます。」


 よし、これでいい。マニンガーの西を見て来るのも悪くないだろう。


「ほぉーっ、ほっ、ほっ。

 しかしエトガルがいる以上、時間が経ってもユーバシャールには戻れませんよ。」


「実はその件でもお話が。

 エトガルのガイガー商会が帝国のサンターナ商会と、

 どんな契約をしているか分かりましたか。」


「ほぉーっ、ほっ、ほっ。

 その話が聞きたいですか。聞きたいですよね。


 ガイガー商会は前年実績の三割増しの契約をしています。

 これが達成出来ないと大変な様ですね~。


 既に8割の小麦を確保している様ですが、

 残りの2割が、いやはや、ランマース商会を飲み込みでもしない限り、

 ざぁ~んねんな事になるでしょうね~。」


 なるほど、だからランマース商会を強引にでも取り込もうとしてたのか。


「それでまあ、例の手形の回収。

 ここらで始めようと思っているのですよ。

 ほぉーっ、ほっ、ほっ。」


「いえ、それは1週間待ってもらえませんか。」


「それはまた、何ででしょうかねぇ。」


 俺はエーレ商会で米の運搬用に買おうとしている奴隷の購入に待ったを掛けた。どのみち、ドレーゼ子爵からの投資があったとはいえ、予定の出資金はまだ集まっていないんだ。


「ガイガー商会と無理な契約をした行商に、米の運搬を依頼するんです。

 彼らにしても小麦が無理なら少しでも収入が欲しいでしょうし、

 ユーバシャールにいなければガイガー商会に売られる事も無いですからね。」


「でも、それが効いて来るまでには2週間は掛かりますよ。」


「ええ、それでオークションにエトガルを引っ張り出して欲しいんです。」


 エトガルなら帝国のサンターナ商会に金を出させたくないから、代わりに自分で落札すると言い出しかねない。落札に使った金も俺が相手なら、後からどうとでも取り返せると思うだろう。その辺、ユルゲンさんには上手く誘導して欲しい。

 オークションで無駄金を使わせ、行商人からの違約金は手に入らず、手形の返金でガイガー商会に止めをさせれば俺もユーバシャールに戻れるというものだ。

 ただ、ガイガー商会が潰れて小麦が入らないとなれば、サンターナ商会はガイガー商会側に付いてしまうだろう。サンターナ商会、ドミンゴさんには味方になってもらいたい。


「実はサンターナ商会もガイガー商会に不満を持っているのです。

 ガイガー商会が集められていない小麦の一部でもランマース商会に出してもらえれば。」


 長年、穀物を取り扱って来たランマース商会なら、不良行商人のイカサマにも何か対策するノウハウを持っているだろう。防げなかったのは、ガイガー商会がまだ食品を扱うのに経験不足だったと考えられる。


「その話は私もマルゴットさんも知っています。

 そこもタイミングを合わせてと言う事ですね。


 私も宝石蔵の小鼠を泣かせてみたいとは思っていたのですよ。

 ほぉーっ、ほっ、ほっ。」


「よろしくお願いします。」


 これで何とかなるか。まあ結局、人任せ、運任せだが、俺の営業経験なんて無いも同然だから、ベテランに任せるのが一番成功率が高い。


「それではレン君。

 出発は明日だが準備は間に合うかね。」


「間に合わせます。」


 失敗したら、ペルレまで逃げ帰ろう。

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