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ランチパニック

 マルゴットの菓子店にクルトを置いて出て来た俺達は、その後ユーバシャールの表通りをぶらついてから食堂の一つに入って夕食にした。ここは米が食べられる様で、俺はリゾットと米の入ったスープを注文した。マルゴットの店で見た物もそうだったが、米は日本で俺が食べた物より少し大きいものの短めの粒のジャポニカ種の様だ。


「ご、ご主人様。

 本当にそれは食べられるのですか。


 何だが(うじ)が沢山入っている様な、あいたっ。」


 俺のリゾットを見てとんでもない事を言い出したヴァルブルガの頭を(はた)く。


「馬鹿。

 これから食べようとしてるのに、気分が悪くなるだろう。」


 食べてみると、米はほとんど水を含まずにバターで炒めているので、日本の炊いたご飯とはだいぶ違う食感になっていた。具には魚介とキノコも入っていてちょっと贅沢感もある。やっぱり公都の表通りの店は、旅宿の飯より美味い。

 スープの方も米は炊かれているのではなく、茹でられている。久しぶりの米だが懐かしいといった感じは無く、別物だ。今度米を買って炊いてみよう。

 カウマンス王国やラウエンシュタイン王国の人間には、米の食感に慣れなくて苦手な者も多いらしい。俺は散々 米を(けな)してくれたヴァルに、米春巻きを頼んでやった。まあ、正確には春巻きではないのだろうが、米を薄いクレープ生地?の様な物で巻いて揚げたヤツだ。


「おい、ヴァル。これを食べてみろ。」


「おお、ご主人様ありがとう。

 …おぅぼぇうぉおぁ。」


 気付かずに食べたヴァルは、ひと齧りして中からこぼれ出した米に焦ってパニくりやがった。ざまあ見ろ。なお、ニクラスは一人で魚介のパスタを悠々と食べてやがった。くそ、一人勝ちされた気分だぜ。




 宿屋『黄金戦艦』まで戻って来た俺だが、部屋でこれからどうするか考えた。雰囲気的にマルゴットが帝国商人を紹介してくれそうだが、その気になってダメだった時が痛い。やっぱり、自分達でも帝国商人に売り込めないか試した方がいいだろう。

 帝国商人と取引する為には、賃貸でも小さくてもいいから根無し草の行商人よりも店舗を持っていた方がいいだろう。それも裏通りではなく、馬車の止められる表通りである必要がある。だが中心街は地価が高いだろうから手が届かない可能性が高い。

 何にしろ明日からは帝国商人や市場の調査をしながら店舗を探すのがいいだろう。俺がそんな事を考えている内に、知った人間達が宿に入って来るのを探知スキルが教えてくれた。どうやらカリーナ達が宿に帰って来た様だ。




 しばらくすると、レオナが俺の部屋に向かって来ているのが分かる。カリーナ達には報告は明日の朝食でと言ってあるので、帰宅の挨拶ではなくいつも通り誘惑に来るのだろう。別に俺に惚れてるわけではなく、俺に取り入る為に枕営業というわけだ。

 もうユリウスさんの従妹じゃないってバレているので、抱いても問題ない。ただ本当の年齢が18歳とはいえ、12歳ぐらいのロリに偽装しているレオナに手を付けると俺の評判に関わるだろう。

 そういうわけでヴァルに追い返させる。


「レンお兄ちゃん、レオナ寂しいから添い寝して。」


「ご主人様は既にお休みだ。御用は明日にしろ。」


「え~っ、まだ寝る時間じゃないよぉ~。」


 扉の前で話し声が聞こえるが、さっさと寝る事にしよう。




「はい。帝国の商船は全部で4艘。

 サンターナ商会のリコ・アコンチャが交易の責任者で、

 他に帝国貴族のシリアコ・ロドリゲス男爵が乗って来た様です。」


 翌朝、カリーナが昨日の成果を報告してくれた。帝国商船は2ヶ月ほど停泊して小麦や鉄のインゴット等などを集めて帰国するらしい。

 アロイジア公女が言っていた公国と軍事協定を結びに来た貴族というのがロドリゲス男爵の事だろうが、まあこちらは俺とは関係が無い。

 俺にとって重要なのはリコ・アコンチャで、アントナイトの売り先として大本命だから、彼か彼の周辺人物に接触できるよう情報を集めなくては。




 あれから3日、俺達は情報収集を続けてペルレに持ち帰る物の当たりは付けたが、貸し店舗の目途やリコ・アコンチャとの面会の約束は取れていなかった。まあ、そんなにすんなり行くわけもないか。


 そこで俺は気分転換も兼ねて、昼前から噂になっている競技会の観戦に来た。これに関しては仕事が煮詰まり気味だったので、今朝急に決めた事で全くと言っていいほど下調べはしていない。精々午後2時頃から本命の男子の競技が始まり、その前は前座的に女子の競技があるくらいか。

 まあ、ラノベの様な華奢なのに大の男より力持ちの美少女とかいない、体格=パワーな世界なので、体格に劣る女性は男子よりも迫力に劣るのかもしれない。

 ちなみにメンバーは俺と俺の護衛のヴァルブルガとニクラス、それにカリーナとレオナ、その護衛として『(アイロン)(シールド)』のリーダー・イアンと槍使いエルマーだ。カリーナ達はもともと連れて行くつもりは無かったが、どうしてもと粘られて仕方なく連れて行くことにした。他のメンバはまあ、荷物の見張りを交代でしてもらってそれ以外は休暇にしてある。


 そうして俺がユーバシャールで初めて見た競技は、女子の徒競走だったのだが。




 あれ?おかしいな。俺には選手の着ている服が見えないぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 古代ローマ式か・・・
[良い点] 全裸徒競走! [一言] 古代オリンピックは全裸がデフォだから当然かもしれない?
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