ペロペロ
マニンガー公国へとペルレを出発する日の朝、俺はヴァルブルガ、クルト、ニクラスを連れダーミッシュ商会の前まで来た。そこには二台の四輪馬車が並んでおり、御者の男2人、傭兵団『鉄の盾』の4人と『貨幣の収穫』の2人、そして2人の女性を連れたユリウスさんがいた。
俺はユリウスさんに挨拶をすると、最後の確認事項について簡単に話した後、2人の女性を紹介された。1人は20歳くらいだろうか、金髪の髪を肩の高さで切り揃えた女性で、中肉中背ながら少し気の強そうな、ややつり目がちの美人だ。もう一人は、暗い茶色の髪を後ろで1本に揃えた少女で、背は低く痩せ気味で10代前半と言っても通じそうな可愛らしい見た目の少女である。
二人共、商会で働いている様な、質素ながらも清潔な服を着ているので、ダーミッシュ商会の使用人かもしれない。前者はツンと澄ました様な顔で俺を値踏みし、後者はクリクリした好奇心旺盛そうな目をして俺に微笑みかけている。何だろうかと思っていると、ユリウスさんから二人も今回のマニンガー公国行に同行すると言われた。
「ひょっとして、見張りですか?」
「いやいや、君の商売を見習わせる為だよ。
僕はこれでも君を高く評価していてね。
金髪の方がカリーナ、黒髪の方がレオナ。二人共僕の従妹なんだ。
二人共美人だろう。」
まあ美人、可愛い感じだが、ここでそうは思いませんと言う胆力は俺には無い。
っていうか姉妹なのか。似てないけど。
「ええ、そうですね。」
「商会の手伝いをさせていたのだけど、
ペルレの外に出た事が無いので少し外で経験を積ませたくてね。
二人もマニンガー公国には是非とも行きたいと言うので許可したんだ。
ちゃんと二人には君の言う事を聞く様に言ってあるから、存分に使ってくれ。」
え、何でも聞く?使ってくれ?いやいや、いやいや、何か怪しいな。
たぶん断るのは無理だと思うけど、一応軽くジャブを入れてみようか。
「ペルレの外に出た事が無いのに、いきなり外国は厳しいのではないですか。
長旅にもなりますし、野営とか色々と。」
「その時は君が面倒を見てくれるのだろう。
君なら安心だ。さあ、二人共レンさんに挨拶をするんだ。」
やっぱり駄目だったか。とにかく二人には気を付けよう。
「レオナ妹ちゃん、レンさんに挨拶するわよ。
私はカリーナ、旅の間ご面倒をお掛けしますが、よろしくお願いします。」
「はい、カリーナお姉ちゃん。
私はレオナ、レンさんからアレもコレもいっぱい勉強させてもらいます。
よろしくお願いします。」
「トルクヴァル商会のレンです。
今回は隊商のまとめ役をやらせてもらいます。
ダーミッシュ商会で勉強したお二人には拙く思える事もあると思いますが、
頑張らせて頂きます。」
「レオナ妹ちゃん、レンさんは謙虚な方の様よ。」
「カリーナお姉ちゃん、私は謙虚な方は好きよ。」
「レオナ妹ちゃん、私もレンさんは好きな方だと思うわ。」
うわっ、口を開くとより胡散臭さが増した。絶対『銀蟻群』の鉱石分配権を狙ったハニートラップですよね。っていうか姉妹で何でそんなにベトベト触ってるんですか。ユリなんですか。俺を落とす気あるんですか。
そんなこんなで俺達はペルレを出発した。ちなみにトルクヴァル商会というのは、最近立ち上げた俺の商会だ。個人の行商としてずっとやってきた俺だが、ミスリル銀の採掘事業までやる様になると、さすがに商会が必要になったのだ。
名前は何でも良かったが、ヴァルが『レン&ヴァルブルガ』商会はどうだと言い出した。自分の名前をあまり出したくなかった俺は、じゃあ『クルト&ヴァル』商会にしようかと言うと、ヴァルがクルトと夫婦みたいで嫌だと泣いて止めるので、ちょっとクルトを反転させて由来を推測されにくい『トルクヴァル』商会とした。
っていうかヴァル、お前俺と結婚する気だったのか。しかも絶対俺に惚れてとかじゃなくて、身分の安泰とかが理由だろう。なんで俺の周りって、待遇の為に俺に抱かれたい女とか、誰とでも寝る女とか、宗教活動資金の為とか、鉱石分配権狙いとか、そんなのばっかりなんだ。
俺ももっとスウィートでラブリーな恋がしたいぜ。ちなみに後でヴァルに聞いたが、カリーナはフリーダに、レオナはアリスに似た女を探したんじゃないかと言われた。まじか、そこまでは考えなかったというか、そんなに似てなくない。あえてどっち寄りかって言うと、ぐらいだろう。カリーナのおっぱいはフリーダより小さいし、レオナは痩せてる割にはあるけど。
だが、カリーナとレオナが本当にユリウスさんの従妹だろうが、街で探して来た娼婦だろうが、ユリウスさんの従妹という体がある限り手を出したが最後、ユリウスさんに骨までしゃぶられるんだろうな。
「どうしたのレンお兄ちゃん、一人でブツブツ言って。
どこかしゃぶって欲しいの?
レオナがペロペロしてあげようか。」
ごふっ、10代前半はアウトです。って言うかいつからお兄ちゃん呼びになった。俺は負けん、絶対に鉱石分配権を手放す事なくこの旅を終えるぞ。




