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金狼

 翌日、まずは金細工師エゴンさんの店に行って鉱石を60㎏を売り、金貨2枚と銀貨75枚を受け取った。そして、そこで20代と思われる切れ者系の青年、ダーミッシュ商会のユリウスさんを紹介された。何と彼はダーミッシュ商会の会頭の次男で、秘書か何かと思われる男と護衛2名を引き連れていた。


 ユリウスさんは残りを買い取る事を約してくれ、宿に荷馬車を出して引き取りに来てくれた。俺は一旦宿に戻り、鉱石を引き取りに来たダーミッシュ商会の荷馬車と一緒に商会に行ってそこで取引を行った。それとなく、とは()(づら)いくらい他に何か採掘されなかったか聞かれたが、現時点では通常のアントナイト全てを引き渡してそれで全部です、と言っておいた。

 200㎏以上の鉱石の引き渡しとその品質チェックでその日は暮れた。鉱石は全部で金貨8枚(80万円)、(おおよ)そエゴンさんの店の8割で売る事になった。まあ直売じゃないし、金細工師への流通を考えるとそれでもいい方か。お昼は豪華ではないが、『幸運のブーツ亭』と遜色ないお昼をご馳走になったし。




 ダーミッシュ商会を出た俺とヴァルは、その足でヴァルヒ商会を訪れ1本銀貨20枚(2万円)くらいする酒を買った。それを持ってアリス達トップ冒険者 集団(パーティー)財宝犬(トレジャードッグ)』の宿、『金狼亭(ゴールド・ウルフ)』を訪れた俺達は、『財宝犬』のフルメンバの食事中に突撃する事になった。席の端ではアリスがニコニコ笑いながら手を振っている。

 初コンタクトの感触は悪くない。俺達はペルレに来る途中でアリスに助けられただけだが、あちらは道に迷っていたアリスの世話をしてここに連れて来たという解釈をしてくれている。


「君達も迷宮に潜っているんだろう。

 何故、アリスちゃんを勧誘しなかったんだい。」


「力の差があり過ぎますので。

 彼女を雇うにしても資金が続きませんよ。」


 俺がそう答えると、リーダーらしいマッチョ戦士のマルセルさんは満足げに(うなず)いた。『財宝犬』としてもアリスの戦力は望外の幸運だったらしく、遠慮して彼女を手放した判断も俺の株を上げる事になったらしい。




 『財宝犬』のメンバはマッチョ戦士が二人、細マッチョ斥候が1人、元紅1点の治癒魔術師に魔法剣士のアリスを加えた5人である。事前にアリスに聞いた話では、アリスが入る前は上品な色気を持つ長身巨乳美女治癒魔術師クーニグンデさんの逆ハーレムで、男性陣の好みは彼女の様な大人の女なのでロリ寄りのアリスはマスコット扱いだそうだ。いや、聞いて無いがな。

 クーニグンデさんはフリーダ並みのボンキュッボン美女な上に笑顔があるんだよな。そりゃモテるだろう。フリーダも、もうちょっと笑顔があれば。いや、フリーダは笑顔無くてもモテるか。いや、そんな事よりいい感じで場が盛り上がって来たので、本題を切り出す。


「ところでコルドゥラさんがミスリル銀の素晴らしい剣をお持ちだと聞いたのですが。


 酒の席で不躾(ぶしつけ)だとは思いますが、

 商人として後学の為どうしても至極の逸品を拝見したく、何とか見せて頂けないでしょうか。」


 そう言って深く頭を下げた俺に、コルドゥラさんは満面の笑みを浮かべる。


「Ha Ha Ha Ha ! そんなに(かしこ)まる事は無いぞ。

 良く頼まれるし、隠してる物でもないからな。

 まあ、見てくれ。凄いだろう?」


 コルドゥラさんは身長190cmを超えるマッチョの30男だが、目のクリクリした子供の様な顔をしている。凄いだろうなんて言う自慢にも嫌味がない。多分、貴族の家を継げない三男とかなんだろう。くそ、金も才能もあって苦労してないから性格もいいのか。

 日本ならスルッと東大入った上に、親の会社の子会社の社長にスルッとなる傍ら、趣味にも充実した日常を送っている感じか。そんな余裕のある男コルドゥラさんは初対面のしがない商人でしかない俺にも微笑みながら、頼みを快諾してくれる。戦いもせずに負けた気分だ。


 そうして見せてもらった剣は色としては銀色に見えるが、よく見ると青み掛かり、しかも僅かに発光している様にすら見える。ただし、刃先だけでそれ以外は鉄なのか黒銀色をしている。ミスリルは固いが軽いから、重さの必要な剣は刃先だけで刀身は鉄なのだろうか。

 何にしろ、俺の背負い袋の奥底の鉱石に良く似ていた。目利きに自信の無い俺だが、これは間違いないように思える。つまり、あの鉱石の取り扱いはさらに気を付ける必要が出て来たという訳だ。俺が隣のヴァルを見ると、彼女もこちらを見たので互いに頷いた。彼女にも同じ鉱石に見えたのだろう。

 俺は心の中でゴクリと喉を鳴らし、礼を言ってまた元の何気ない話に戻ってその場をやり過ごした。そうしていい頃に暇乞(いとまご)いをすると、それまで直接話をしなかった細マッチョ斥候リーヌスさんが、


「君らも大変そうだね。頑張れよ。」


 と言って来た。まさか俺がミスリル銀を持っているのがバレたのか。背筋が凍ったが、何がとは聞かずに曖昧な礼を返してその場を立ち去る事にした。




 『金狼亭』を出た俺とヴァルは、いい時間なので真っ直ぐ『幸運のブーツ亭』に戻った。『幸運のブーツ亭』の夕食はキャンセルしておいたが、野菜スープに黒パンぐらいだった様なので別段損した気にはならなかった。

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