カッパか、ハッ
『フォルカー酒場』に行ってディルクと会った俺とヴァルブルガだったが、大した収穫は無かった。ディルクはアントナイト採掘の探索に一日銀貨20枚(2万円)で同行する事に同意したが、これは彼の媚びた様子から既定路線だった。
彼とは3日後の朝に『迷宮門』で待ち合わせとした。まあ、中止になったらその時に『酔いどれ狸亭』に言いに行けばいいだろう。彼の定宿も聞いたが裏路地の奥の奥で辿り付けそうな気はしなかった。
約束通り『フォルカー酒場』特製の黒パン(ほとんどカビていない)とスープ(肉くずがほんのちょっぴり入っている)、さらにエール(俺とヴァルも飲んだが温くて苦かった)の1杯をディルクを奢ってやって(それ以上呑んだ分は自腹)、その日は別れて『幸運のブーツ亭』に戻った。
翌日から荷運び手段を探し始める。ラノベに良くある亜空間に荷物を仕舞えるアイテムボックス等のスキルや、同じ効果の魔法鞄等は持っていないので、現実的な手段を考える必要がある。ダンジョンは思った以上にアップダウンが激しく、馬やロバ、荷車等は使えそうも無い。
すぐに思いつくのは人に運ばせる事だが、現代日本成人男性が登山で背負う荷物が30㎏程度だっただろうか。街中でこの世界のプロの人足なら100㎏位いけるかもしれないが、ダンジョンの凹凸と進行速度や逃走を考えるとやっぱり20~30kgが妥当だろうか。敵から逃走する時は荷物を捨てるしかないかもしれない。
後は何か山岳の様なアップダウンも平気で、荷運びに使える様なファンタジー動物がいないかも調べておきたい。馬の様な蜥蜴とか鼠とかだろうか。ただ、そんな便利な動物がこのダンジョン都市で売ってたら皆使おうとするだろうから、見た事無いと言う事はいないか高いんだろうな。
「ん~~~、ダンジョンでの荷運びとなるとやっぱり人足ですね。
当ギルドで斡旋出来ますよ。
6区までなら1日銀貨10~20枚、7区以降なら1日銀貨30~40枚が相場です。
こちらの木簡1枚で掲示板の使用料は1日銀貨1枚です。
ん~~~、後は荷運び用の魔物とかでしょうか。
ヴァルヒ商会で扱ってるかもしれませんが、
レアで高価なので普通の人が買うのは無理ですね。
こちらは直接商会で問い合わせ下さい。」
まず冒険者ギルドに来た俺達は、お団子ヘアの職員ベティーナさんに相談してみた。と言っても彼女の説明は以上終了である。もう終わりましたよね、という顔をしている。そんなに働きたくないか。神経質男フロレンツ君や来るなオーラ美人イルメラさんは論外として、狸中年ゲルルフさんが寝ていたので残りはボーっとした彼女に声を掛けるしかなった。
そして人足を雇うのに口利き屋の様な存在があるかとも思ったが、よく考えなくてもそれを担っているのが冒険者ギルドだった。それにしても人足1人に1日銀貨30枚払うと、3日間の探索で1人銀貨90枚掛かってしまう。鉱石は20㎏で銀貨100枚想定だから、護衛の費用も考えると人足一人に40㎏以上は背負って貰わないと採算が取れないか。う~ん、もうちょっと人件費を下げるか、運搬量を何とかしなきゃならないな。
「カッパか、ハッ!
いや、すいません。それでこれがカウ・ゲッコーですか。」
「カッパ? 何ですか?
ええ、そうです。
これを扱っているのは、ペルゥゥゥレッ一のヴァルゥゥゥヒッ商会だけでしょうけどね。
まあ、何と行ってもペルゥゥゥレッ一ですからね。」
ダメもとでヴァルヒ商会を訪ねた俺達だった。今、動物小屋に案内してくれた商会の男は少し額が後退しており、さらに肩までの長さの髪が頭の真ん中で左右に分かれているのでカッパかガイコツの様に見える。思わず口を突いて出てしまったが、意味が通じなくて良かったぜ。
ヴァルヒ商会はペルレの大手で、主に農村から作物を集めて街に下ろしている。多数の馬車や馬を持っており、街で必要とされる家畜等も作物と一緒に農村から連れて来る。街で最大の厩や家畜小屋を持っており、珍獣の類もヴァルヒ商会で扱っている。行ってみると門前払いされそうになったが、王都の布問屋ヴィルマーさんの下請けだと言うとダンジョンで使える大蜥蜴を見せてくれた。
体高1.5m、背の高さが馬くらいあり、頭から長い尻尾の先まで4mはある。体色は茶色っぽくて地味な見た目だ。これで平地なら100㎏以上、ダンジョン内でも60㎏は積めるらしい。お値段金貨60枚(600万円)。うん、無理だね。ちなみにダンジョン内でも200㎏を運べる大蜘蛛もいるが今は在庫が無く、あっても金貨400枚(4000万円)というさらに無理めな話だった。
翌日、俺とヴァルブルガはヴァルヒ商会のカッパ、いやイーヴォさんと一緒にペルレの郊外の農園に向かっていた。メリーさんに牽かせた荷馬車には奴隷を載せて。




