千里眼の大魔導士マルティーン
大丈夫?おっぱい揉む?だとぉ。
ここまでエラと距離を縮める様なイベントは一切なかったが、この洞窟の暗闇がエロい事を催すのか。ビッチだしな。
屈み込むエラは、麻のシャツの胸元を心持ち引っ張り見せ付けて来る。エラのシャツは襟ぐりが無駄に広く、屈むと見えそうになるその大きな胸を振るわせている。揉むか。ちょっとくらい。
『探知スキル』で見ても周りに敵はいない。インゴ達とは若干距離があるし周りは暗い、エラ自身の陰になっていて揉むだけなら見えないか。
いや、声でも上げられてインゴ達と揉めても面倒だな。だが、きっぱり断るのも惜しいか。
「まあ、後でな。」
ちょっと勿体ないが、クールに答えておいた。
「うん。今夜、行くね。」
来るのか。まあ、いいか。とりあえず、ヴァルブルガの頬を軽く叩いて起こす。
「ぶっ、ご主人様?」
「さっさと、撤退するぞ。」
俺はヴァルの小さな悲鳴を無視して、インゴ達に撤退を指示した。
俺達は『亜人の顎』から離れ、横穴を大空洞に向けて下って行く。コボルトと争った所からしばらく離れた頃、ヨーナスが不平を言い出した。
「おい、危険は無いんじゃなかったのかよ。」
「第1区から出てはいない。約束通りだ。
それに俺の指示通りにしていれば、大して危険は無かったろ。」
思い当たる所があったのか、黙り込むヨーナス。そこで、行きとは逆にヨーナスよりも覇気の無い声でインゴが声を上げた。
「なあ、レンさんよ。
さっき20人死ぬとか言ってたけど、何で分かるんだ。」
行きでは『お前』呼びだったのが変わったな。
「コボルトの増援が来た時、『赤い守護熊』側は円陣を組む者と、その外にいる奴がいるのは分かったか?」
「え?
ゴチャゴチャ動いていたが、そんなだったか?」
「前者は統率が取れてたから、恐らく『赤い守護熊』の本団員。
後者は『命知らずの狂牛団』の様な臨時団員だろう。
それぞれ30人と20人ぐらいだったが、外にいた連中はコボルトに囲まれて死んだ。」
「マジか。良く見えたな。」
松明が大量に撒かれていたとはいえ、暗闇も多い洞窟の中で肉眼だけで見分けるのは難しいだろう。俺は『探知スキル』のお陰で把握できたが。
「全てを目で見た訳じゃあない。
全体の動きと、打ち合う音や怒声、その他の気配から予測出来る事だ。」
それっぽく解説したが、本当は『探知スキル』の能力だ。だが、どうやらこれがヴァルブルガの琴線に触れてしまった。
「ご主人様、凄い!
大魔導士マルティーン様の千里眼みたいだな。
私は『輝ける太陽の翼』の物語で、マルティーン様が千里眼で黒騎士の魔術を見破る件が大好きなんだ。」
誰、そのマルティーン様って。って言うか『輝ける太陽の翼』って前にも聞いたな。ヴァルの故郷に伝わる英雄譚だったか。いつも黙って藪睨み気味のヴァルが、嬉々としてマシンガントークを始めたからインゴ達が引いている。
「ヴァル、静かにしろ。敵が集まるだろ。
それに俺にそんな超能力か魔法の様な力はないぞ。」
「すっ、済まない。」
ヴァルがシュンと顔を伏せた。
それからも、逃げたコボルトがいるかもしれないから警戒しろとも言ったが、洞窟に入って早5、6時間で疲労も蓄積し集中力も欠いたのだろう。インゴ達がぼそぼそとおしゃべりをしながら進んで行く。まあ、周りに敵もいないしあまりうるさく言う必要も無いか。
それにしてもダンジョンの中はキツイ。魔物の遭遇はゲーム程じゃない。まあ、ゲームの様に頻繁に魔物と遭遇して戦っていたら、1時間もしないで体力を使い切るだろうが。
だが、暗闇と言うのが思ったよりネックになる。灯りの為に片手が塞がるし、もし道を見失うとランドマーク的な物も少なく見え辛いので、二度と復帰出来なくなる可能性もある。何より長時間暗闇の中にいるのは精神的な疲弊も大きい。
恐らく洞窟内でGPSの様に位置を確認する根本的な対策は無いだろうから、明かりを絶やさずよくよく地図を確認しながら行くしかないのだろう。
そんな事を考えながら『迷宮門』に向かって大洞穴を通り抜けている時だった。
上か。どこかから近づいて来た訳ではなく、急に天井付近に現れた危険な何かが落下して来る。落ちる先は。俺は天井を見る前に落下地点を予測して前を見る。エラか。
「危ない。」
「あうっ。」
俺は咄嗟にエラの横まで跳び、腕を引いて横へと引き倒す。エラが変な声を上げた。足場が悪く、俺もエラも横倒しになってしまった。
べシャリという僅かな音が横から聞こえる。何が落ちて来た。俺は半身を起こすと手に持ったランタンで足元を照らす。
エラがいた場所には緑色のヘドロの様な物が広がり、一部がエラの膝下に掛かっていた。




